最終章_2-8
夜になった頃、
「おなかすいたー」
明日香が言った。ベッドでじたばたしながら。
「少し我慢していろ。帰りに何か買ってきてやる」
「今たべたい。ゴハンくれないと外に出て行ってやるんだから」
何だこのワガママ娘は。
「ダメだっつーの」
神を自称する志夏の指示だからな。破ったらバチが当たったり祟られたりするかもしれん。
「達矢。明日香にかまってると、明日になっちゃうわよ?」
「あ……ああ。そうだな利奈」
「何? 二人とも妙に反抗的じゃん」
「どっちがだ……」
どう考えても反抗してんのは明日香だろうに。
「こうなれば、達矢。アレを明日香に」
「ああ、アレだな……」
俺と利奈は頷き合った。
そして志夏から預かっていたバナナを取り出した。
「あっ、バッナーナ!」
飛びついてきた。
「うぉぁ」
そして、もぎ取られる。
明日香は嬉しそうに皮をむいて、バナナを食べる。
何だか、野生の霊長類みたいだな……。
「おいしー」
と言った次の瞬間!
コテン。
と、紅野は床に寝転がり、
「くかー。くかー……」
寝息を立てて、眠った……。
「おい……これはまさか、睡眠薬入りバナナ?」
「会長さん、何て強引なアイテムを……」
まさか、睡眠薬入りとはな。
志夏の極悪ぶりが俺には測り知れないレベルだぜ。
これがマンガだったら戦闘力計測メガネがヒビ割れるほどだ。
「と、とにかく、明日香が眠ってるうちに、学校行くか」
「う、うん」
明日香をベッドに残し、部屋の外に出た。




