最終章_2-6
「やれやれ、疲れたな、利奈」
「うん。何かね……」
特に何の成果も得られなかったという事実が更にその疲れを増幅させるものだ。
今日の夜に学校に居る幽霊っぽい子を訪ねて成果が得られなかった場合、またこの疲れが増幅したりするのだろう。
「でも、ほら、疲れを取る肉まんも買ったことだし、お昼ご飯を食べれば疲れも取れるわよ」
「だと良いがな……」
そう、帰る前にショッピングセンターに寄って、中華料理店で肉まんを六個ほどテイクアウトしてきたのだ。
と、洞窟を下っていると、
「あら」
紅野明日香にバッタリ会った。
「よう」
とりあえず挨拶すると、明日香は、「ちょうど良かった。暇だったから、外に遊びに行こうと思ったんだけど」とか言った。
「へぇ、そうなんだ」
とか言う利奈。
「いや、待て明日香……外に出てはいけないって話だろ。少なくとも明日の朝までは」
「だって、その理由がわかんないから納得できないもん。だから、そんなよくわからない言葉を信じる必要なんてないでしょ」
昨日は志夏の二日間は洞窟から出てはいけないって話を信じようなんて言っていたが、我慢できなくなったようだ。なんと言うべきか、とことん自分勝手な論理を展開させている気もするが、理由がわからないものは納得できないという考えは、まぁ多少は理解できる。
「でも、ダメなものはダメだ」
「てか、あ、それ昼ごはん?」
しかし明日香は俺の言葉を無視。利奈の抱えている紙袋を指差した。
「うん」頷く利奈。
「だが、洞窟の外に出ようとした明日香は、昼メシ抜きだな」
「はぁ? あんたは私に絶対服従でしょ? 何で生意気なこと言ってんの?」
「絶対服従だぁ? 何だそれは!」
「あの……二人とも、仲良く、仲良く。ケンカしないケンカしない」と利奈。
「おいおい、ダメなものはダメだとわからせなくちゃならんだろ」
「そんな、明日香は子供じゃないんだから」
「ええい、昨日一晩でどんな脅しを受けたんだ。利奈まで明日香擁護派になりおって!」
「いや、別に、脅されてなんて……」
目を逸らして呟くように言った。嘘っぽかった。
「とにかく、下の部屋に戻るぞ。三人で」
「本子もいますよー」と本子ちゃん。
「三人とプラス幽霊で」
言い直した。