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最終章_2-3

 チャーハンセットを手に、利奈の部屋に入ると、


「おはよう! 達矢!」


 元気な挨拶だった。


「おう、明日香。よく眠れたか?」


「うん、寝心地の良いベッドだった」


「それはよかったな」


 だが、とすると、利奈は床に寝たのだろうか……。


 無言の利奈の、あの複雑な顔色からすると、そうなんだろうな。


「あ、何それ。朝ごはん? 食べて良いの?」


「うん」


 利奈は頷き、明日香にチャーハンとスープとウーロン茶が載ったチャーハンセットを手渡した。


「わーい、ありがとー」


「先に言っておくがな、俺が代金を払ったんだからな」


「ありがとう、達矢。おごってくれて」


「おご――」


 まだ奢るとは言ってないんだけど!


「ありがとう、達矢」


 利奈まで!


 クッ、こうなると、もう「おごるなんて誰が言ったんだよ」とか言い出せない。プライドの問題で。そう、俺は男らしくプライドが高いのだ。少なくとも、自分ではそう思っている。


「それでは、いただきます」


「「いただきまーす」」


 利奈っちの号令で、俺たちはチャーハンにレンゲをつけた。


 食べる。


「あら、おいし」と明日香。

「うんうん。わたしのおすすめの中華屋さんなの」

「うまうま」と俺。


「見てよこれ、けっこうボリュームあるでしょ。これで480円だよ。安いと思わない?」


「ああ、素晴らしいな」俺は答えた。


「この町にも、なかなかのシェフが居るのね」と明日香が言う。


「そうなの。わたしの友達にも、料理の上手な子が居るんだよ。超下手な子も居るけど」


「あぁ、下手な子の方は知ってる。みどりちゃんでしょ」


「え? 知ってるの? みどりのこと。会った事あるの?」


「うんにゃ。日記に書いてあった」


「どんだけ読んだの……わたしの日記……」


 まぁ、たぶん全部読んだだろうな。この感じだと。


「たしか、料理が下手すぎて、彼女の料理を食べるくらいなら断食するとか言ってたわね」


「ひどい味よ……。明日香も達矢も、この町に来たからには、一度は味わっておいた方がいいわ。この町を出た後の話のネタにもなるし」


 利奈は少し震えて青い顔をしながら言った。


 もはやトラウマらしい。


「「いえ、遠慮しときます」」


 俺たちは声を揃えて答えた。


 不味いと聞かされたものを敢えて食べるほど、俺たちは勇者でも美食家でもないのだ。


 と、その時だった。


「くすくすくす……」


 謎の笑い声が聴こえた。


 女の声だった。


「ん? 何だ、今の笑い声……」


 明日香の声でもなく……利奈の声でもない……二人の声よりも高い声。


「へ? 何も聴こえなかったけど……?」


 明日香は言って、キョロキョロと辺りを見回した。


「笑い声……?」


 利奈っちはちょっと青ざめた。


 三人、一旦食事を止め、耳を澄ませてみる……。


「…………」「…………」「…………」


 無音だった。


「何にも聴こえないじゃないの」

 言って、チャーハンを再び食べ始める明日香。


「げ、幻聴とか、カンベンしてよ。そういう話してると、オバケとか来るんだからね」

 焦ったようにして利奈は言った。オバケがこわいらしい。


「いや、でも……」

 本当に、聴こえた気がしたんだがな。


 くすくすくすって笑い声が。


「くすりくすくす……」


 また、声がした。


 その瞬間、


「――っ!」


 利奈は体をビクっと震わせて、レンゲを口にくわえたまま固まった。そして真っ青になる。


 どうやら、今度は不思議な笑い声が利奈の耳にも届いたようだ。


「な? 聴こえたろ。利奈」


「き、気のせいよ、気のせい」


 すると、その声は答えた。


「気のせいじゃ、ないですよ」


 可愛い声で。


「え……」


「――ちょっとまて……整理するぞ。この空間には、俺と明日香と利奈しかいないはずだよな」


「そ、そうよね」


「でも今、それ以外の何かの声がしたよな、確かに」


「した、確かに」


 こくこくと頷いている。


「……?」

 紅野明日香だけは黙ったまま首をかしげている。


 あんなにもはっきりとした、謎の声が、こいつには聴こえていないというのか!


「ええい、どこに居るんだ、声の主は! 正体を現せ!」


 俺はキョロキョロ周囲を見渡しながら叫んだ。


 チャーハンが冷めてしまうことなど、この際関係ないのだ。


 謎の声の正体を突き止めねば、安心して食事もできない!


「出て来い! 誰だこの野郎!」


 すると……利奈の背中のカゲから、白っぽい何かがふわりと頭の上に飛び出す形で出てきた。


 そして、


「どもー。本子ですー」


 名乗った。


 いや、そんな、さも当り前のように出てこられても……。


 利奈は、おそるおそる振り返って……その謎の幽霊を視認すると……


「誰……?」


 当然の反応である。


「待て、落ち着け、利奈。お前には何が見えている? 俺の目には、白い服を着てフワフワ浮いた三頭身の幽霊っぽいものが見えてるんだが」


「それは奇遇だね。わたしも」


「いや……だとしたら奇遇でも何でもないんじゃないか……」


 本当にそこに幽霊のようなものが存在することを裏付けるようなものだ。


 今まで気付かなかったが、ずっと利奈の背後に居たのだろうか……。


「その幽霊、利奈の背中から出てきたよな」


「え……マジ?」


「ああ、マジだ」


「うっそぉ……」


「ってことは、利奈に取り憑いてるってことになるんじゃないのか?」


 すると、幽霊が、


「ご名答です。本子は、利奈っちに取り憑いてます!」


 元気に答えてくれた。


「うぇええ? わたしに憑いても良いことないってぇ!」


「いいえ、利奈っちの魂は居心地が良いです」


「既に魂に同化されてるっ?」


「何と……」


 かわいそうに……。


「つまり、本子と利奈っちは一心同体というわけです」


「ちょっとぉ! 何がどうなってそういうことになってるわけぇ!?」

 声を荒げる利奈っち。


「利奈も初対面ってことか?」


「当り前っしょ!」


「そういえば、本子はどうしてこんな所に居るんでしょうか。利奈っちが利奈っちであることは解るのですが、他の記憶がどうも……」


「おい利奈、しかもこの幽霊、記憶喪失だぞ」


「いえ、喪失しているわけではないです。ただ、言葉でうまく説明できないくらいに曖昧なのです」


「そ、そうですか……」


 よくわからんが、記憶喪失というわけではないらしい。


「ていうか、何なの本子ちゃん。何者? 幽霊? プラズマ?」


「本子は、本子ですよ」


「答えになってないっしょ!」


「じゃあ幽霊です」


「じゃあって何よ」


「ご飯を炊く時に使う――」


「それは確かにジャーだけど、何か違うジャーでしょ。ていうか幽霊のくせにボケてんじゃないわよ」


「あ、幽霊はボケちゃいけないなんて、差別です! 幽霊にだって、ボケる権利はあるはずです」


 利奈っちは、本子と名乗った白い物体を指差しながら、


「……ねぇ達矢。何言ってんの、この幽霊」


「さぁ……俺に訊かれても……」


「ていうか、わたしは何で幽霊と普通に会話してるの?」


「異常だな」


「でも、達矢にも見えてるんでしょ?」


「あぁ……はっきりと見えるぜ……」


「何でわたし取り憑かれたんだろ……何も悪いことしてないのに……」


「大丈夫か? 利奈っち」


 俺は心配したのだが、


「でも何となく、悪いオバケじゃない気がするから、平気かも」


 案外平気らしい。確かに無害そうな雰囲気がプンプンしてるからな、この本子さんという幽霊からは。


 と、そこで、今まで静かだった明日香が言った。


「あの……全く話が見えないんだけど……。二人はさっきから何と話してるの?」


「幽霊」「幽霊」

 声を揃えて即答した。


「…………え」


 しかめ面された。


「もしや……本当に明日香にはこの幽霊が見えていないのか?」


 俺は本子さんを指差し言った。


「何、言ってるの? 幽霊? は?」


「いるじゃん、ほら、ここに」

 利奈も本子さんを指差した。


「…………」「…………」「…………」「…………」

 四者の間に、無言の時が流れる。


 沈黙を破ったのは、明日香だった。


「わかった。さっき洞窟の外で二人、私をまんまと()()()ための話し合いでもしてきたんでしょう?」


 疑ってきた。


「そんなことをして何になる」


「……本気で言ってるの? 幽霊なんて」と明日香。


「本気だ。な、利奈」と俺。


「うん」力強く頷く利奈。


「ええ!」と、きいてもいないのに本子さんも頷いた。


「……どこ? 幽霊なんて、全然見えないけど」


「ここだよ、ここ」


 俺はまた指差す。


「んん……?」


 明日香は本子さん方面を目を細めて見たものの、


「いないわよ」


 発見できなかったようだ。


「はっ、そうか」


「何だ、どうしたんだ、利奈っち」


「明日香には、霊感が無いんじゃない?」


「そりゃ、霊感なんて無いけど……達矢にも利奈っちにも、霊感ある感じしないよ?」


「人は見かけによらないものなのよ!」


「そうだな。可愛い女子が性格良いとは限らないのと同じだ」


 ここにも一名、そういう女子が居る。


「ねぇ達矢。それ、誰のこと? 可愛いけど性格良くない女子って」


「い、いや……決してお前のことを言ったわけじゃない。ただの喩えだ」


「でも今、私の顔を見ながら言ったよね」


 くっ……ばれたか……。


 この紅野明日香も見かけは可愛いのに『おまえのものはおれのもの系女子』だったぜ、やれやれだ……とか考えていることが何故っ……。


「い、今話し合うべきは、幽霊のことで……この幽霊の本子さんが何を目的としてこの世に留まっているのかを考えることであろう!」


「ふーん、幽霊ねぇ。そんなに成仏したいんだ、達矢は」


 おこってる。拳をパキパキ鳴らしてる……。


「待て、落ち着け」


 俺が焦りつつ言ったその時、


「成仏……」


 成仏という言葉をキーワードにして、本子さんが何かに気付いたように呟いた。


「どうしたの? 本子ちゃん」


「そうでした。たしか、本子が利奈っちに取り憑いたのは、成仏したいから、とかそういう感じだったと思います」


「何となくアバウトね」


 利奈と本子さんで会話してて助けてくれそうもない。


 そして、今、俺の目の前には紅野明日香が一人の怒れる女たち。


 ああ、(プチ)パニックになって言葉の選択がフラフラになってる。


「待ってくれ、話せばわかる」


 俺は手の平を向けて説得にかかるも、


「話してわかるなら戦争なんて起きないのよ」


 わけのわからん論理で叩き潰そうとしてきた。


「無闇に敵対することは、無意味で虚しいものだというのが何故わからない?」


「達矢こそ、私のことをからかって遊ぼうとしてるという理由で私が怒ってるのが何でわからないの!」


「いや、違うぞそれは! からかってない! 本当に幽霊が居るんだって!」


「でも私には見えないもの!」


「目に見えないものしか信じないとか言う気か!」


「そうよ!」


「でも居るんだよ! 本子と名乗る幽霊が!」


「ホンコォ? 何そのふざけた名前。今考えた感丸出しじゃないの」


「ふざけてないんだよ! 本当に幽霊の本子さんがフワフワしてんだ!」


「往生際がわるいわよ!」


 くっ、聞く耳を持ってくれない……。


 俺は現実から逃避するように、利奈と本子さんの方を見た。


「他に何か情報は無いの? 本子ちゃん」


「あ、そういえば本子は、いわゆる幽霊です」


「はい? そんなん見ればわかるんだけど」


「そ、そうですかぁ……」


 本子さんはがっかりした。


「ちょっと、何よそ見してんの?」


 俺はといえば、明日香によってにらまれていた。


 何だってこの町はいっそこんな女ばかりなんだ。


 攻撃的で、横暴で、過ぎるくらいに活発で。


 もっと淑女(レディ)はいないのか。


 俺という名の、この紳士(ジェントルマン)に見合うだけの女子はいないというのか!


「明日香よ。よく考えてみてくれ。俺がお前をからかって、何を得することがある」


「仕返ししてるんでしょ。昨日イジメたから」


「俺はそんなに心の狭い男ではない」


「信用できない」


「疑り深くて人間不信で、自分が他人をイジメるから、仕返しをこわがっているのか」


「何? ケンカ売ってるの?」


「違う。ただの分析だ」


「分析ぃ? その行為がケンカ売ってるでしょうが」


「待て、論点がズレている。今はそんなことよりも幽霊の存在がだな……」


「いないでしょ、そんなの!」


「いるんだって!」


「達矢のことは、イジメたし、利奈っちのことも、イジメた。だから、これはその仕返しなんでしょ? 私を騙そうって二人して策謀(さくぼう)してるんだ! バレバレよ。カメラはどこ? 私にドッキリを仕掛けようなんて百年早いわ」


「ドッキリじゃねぇっての」


「そもそも幽霊? そんな非科学的なもの、いるわけないじゃないの」


 しかしその時、本子さんが言った。


「いますよー」


「ほら、居るって言ってるぞ」


「また演技して。まったく……」


 どういうわけか紅野明日香には、本子さんの姿も見えず、声すらも聴こえないらしい。


「はっ、そういうことか。この幽霊、もしやバカには見えないんじゃ――」


 言いかけた時、目の前から紅野明日香の姿が消えた。


 直後、「たーつーやー」背後から声。


 なにぃ、背後をとられただとぅ?


 そして次の瞬間だった!


 ぐりぐりぐりぐり。


「ぐあぁああああああああああああああ!」


 両こめかみのあたりをそれぞれの拳で挟み込まれ、ぐりぐりされた。


「ふぐぁああああああああああああああ!」


 超痛い! やばい! 助けて!


「おりゃああああああ」


「うあああああああああああああ!」


 暴力反対!


 古風なお仕置き体罰は現代では容認されない!


 そんな常識も通用しないのか、この町では!


「ふっ、このへんにしといてあげる!」


 明日香は言って、ようやく俺の両側頭部を解放した。


「暴力……反対……」


「これは暴力ではなく教育。生意気な子は(しつけ)けないと」


 何なんだ、この女は……。


「本子さんは、本当に存在するというのに……」


「まだ言うか」


 すると、ようやくここで利奈が助け舟を出そうと、


「ね、ねぇ明日香、達矢の言ってることは本当なんだけど」

 と言ったのだが、


「はぁ……そうまでして私を(おとしい)れたいわけ?」


 全く信じようとしない。全力で顔をしかめている。


「そうじゃないって。本当に居るんだってば」と利奈。


「何か、催眠に掛かったとか、やばい宗教に入信したとか、してない?」


「「ないない」」

 声をそろえて俺たちは答えた。


「『幾重にも塗り重ねられた嘘』という名の悪質な洗脳を受けてたりしない?」


「「ないない」」


「返事が揃ってるところが怪しい」


「「どうしろっての」」


「本当に居るんだったら、私だって幽霊見たいわよ」


「そうなのか。じゃあ、本子さんに訊いてみようぜ」


 俺がそう言うと、利奈は頷いて訊いた。


「本子ちゃん。どうすれば明日香にも本子ちゃんの姿が見えるようになると思う?」


「本子の姿を見るための条件……ですか……」呟くように言った本子。


「うん」頷く利奈。


「輝く本に触れると、見えるようになりますですよ」


「ほほう、そうか……明日香。輝く本に触れると見えるようになるそうだ」


「インチキくさい」


 一蹴された……。


 とはいえ確かにインチキくさい。何だ輝く本って……。


「だが、明日香。確かに幽霊さんはそう言っている」


「じゃあその輝く本ってのはどこにあるのよ」


 本子さんは、「忘れました」と言ってニコニコした。


「明日香。本子さんは『忘れてしまった』と言っている」


 本子さんは、「ごめんね」と言ってヘラヘラした。


「そして『ごめんね』と言っている」


「…………本当に本っ当に、幽霊が居るわけ?」


 ようやく、少し信じる気になったようだ。


「そう、居るの」と利奈。「何でか知らないけど、わたしに取り憑いてるのよ」


「変なの」


 俺も明日香と同意見だが、変だろうが何だろうが、利奈が取り憑かれていて、本子さんが成仏したがってることは事実なのだ。


「その輝く本っていうのは何処にあるの? それがあれば本子ちゃんって子が見えるんでしょ?」


 本子さんは顎に短い手を当てて、「どこでしょう……」と呟いて(うな)った。


「明日香。本子さんは、本がどこにあるかは、わからないそうだ」


 しかし本子さんは思いついた顔で、「あ、でも、この町のどこかにはあると思います」と言った。


「だがこの町にあるそうだ」


「じゃあ探して来てよ」


「…………誰に言ってる?」


「達矢と、利奈っち」


 それぞれ指を差しながら名前を呼んだ。


「わ、わたしとしては、それよりも除霊してしまいたいんだけど……」


「あ、じゃあさ、除霊できる人やアイテムを探しつつ、輝く本も探すっていうのはどう?」


 欲張りだな。あれもこれもと。明日香らしいが……。


「だってさ、私は、明日の朝まで外に出ちゃいけないんでしょ? じゃあ、二人で探して来てよ」


「……何か、楽しそうだな、お前」


「だって、本当に居るんでしょ? 優しい幽霊。見たいもん」


「そうっすか……」


 明日香の好奇心が刺激されてしまったらしい。


「本子ちゃん、質問なんだけど……」


「何ですか? 利奈っち」


「このまま本子ちゃんが取り憑いた状態が続くと、どうなるのかな……」


「その気になれば、本子が利奈っちの体を乗っ取れます」


「なっ!」


「でも、本子は成仏したいのです」


「そ、そっか。頑張って成仏してね」


「頑張ります」


 本子さんは握力なさそうな拳を握り締めた。


「で? 結局何をすれば良いんだ?」


 俺は三人……いや、二人と幽霊に努力目標を訊いた。


「輝く本を探して、除霊師も探す」

 と明日香。


「そしてとにかく本子ちゃんを成仏させる」

 と利奈。


「成仏できるよう努力する」

 と本子さん。


「なるほど……」

 何か、謎の展開になってきたな。何だ、幽霊って……。


「さ、それじゃ達矢、利奈。行ってらっしゃい」


「あ、でも……今日は学校があるんじゃ……」


 利奈が言ったが……、


「そんなものはサボりなさい」


「不良だな……」


「何としても輝く本を手に入れるのよ!」


「そういうこと洞窟の深いところであるこの場所で言うってのは、何だか悪の親玉みたいだな」


「悪ですって? この私が? 怒るよ?」


 既に怒ってるじゃねぇか。すぐ怒るんだもんな。


「そ、それじゃ、行くか、利奈」


 俺は、利奈の手を引っ張った。


「えっ? う、うん。そうだね」


 本子さんは短い腕を持ち上げ、拳を突き上げ、「ゴーゴー!」と楽しそうに声を出した。


「いってきます」「いってきまーす」


 俺たちは逃げるように、部屋を出た。




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