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幕間_11_それぞれの夢

 坂の途中。


まつり「この間さ、利奈があたしに訊いたんだよ。『まつりの夢って何よ』って唐突に」


みどり「そうなんだ。なんでまた急に」


まつり「そんなこと訊くってことは、つまりさ、利奈には夢があるってことだと思ったんだけど」


みどり「わかった。まつりちゃんがマリナに逆に訊き返したんでしょう?」


まつり「まぁね。そしたら、利奈のやつ口ごもっちゃって」


みどり「へぇ、そうなんだ。他人に言えないような夢なのかな」


まつり「みどりは、夢ってあんのか?」


みどり「あたし? あたしは、ほら、看護婦さん」


緒里絵「いま看護婦さんて言わないにゃん。看護師って呼ぶにゃん」


みどり「あ、そっか。じゃあ看護師さん」


まつり「ふぅん。まぁ確かに看病とか手当てとか好きだよな、みどりは。でも大丈夫なのか? お前、結構いいかげんな性格じゃん」


みどり「まつりちゃんに言われたくないし。仕事ならちゃんとやるし」


まつり「ま、何でもいいけど」


みどり「そう言うまつりちゃんはどうなの? 夢とかあるの?」


まつり「寝るときにたまに見るぞ」


みどり「そういう夢じゃないわよ」


まつり「カオリはどうなんだ?」


緒里絵「Dくんのお嫁さんだにゃん」


まつり「それ以外は?」


緒里絵「多くは求めないにゃん」


まつり「あっそ。あ、それとフミーンの夢はな、『アイドルRUNちゃんと握手すること』なんだそうだ。それができれば死んでもいいとか言ってた」


みどり「ちょっと、まつりちゃん。質問に答えてよ。まつりちゃんの夢は?」


まつり「そんなことよりもさ、利奈の夢が何なのか皆で考えようぜ」


緒里絵「マリナは、髪長いから、あの髪の毛を世界一周させるのが夢なんだにゃん」


みどり「いきなり変なこと言わないでよ」


まつり「あいつの親父がロケットマニアだろ? 親父特製のロケットに乗って宇宙移民第一号とか夢見てるのかも知れんぞ」


みどり「まつりちゃんも粗いボケやめて」


緒里絵「あっ、わかったにゃん」


みどり「何よ。言ってみて」


緒里絵「まつり姐さんと結婚す――」


みどり「ないでしょ」


まつり「まさか悪巧みとかじゃないだろうなぁ、あたしを倒して武装蜂起して町を征服しようとか」


みどり「マリナに限って、そんな不良な……」


緒里絵「誰か悪い子にそそのかされたのかもしれないにゃん」


みどり「どこの悪い子よ」


緒里絵「んと、わかんにゃいけど。よそから来た人とか」


不良A「ちなみに、浜中紗夜子の夢はパスタ屋開業である」


まつり「どっから出て来たぁ!」


 どごーん。


不良A「ぐふぁああああ!」

 きらーん。


不良達「「「「Aさぁあああん」」」」

 ダダダダッ(不良Aを追って駆けて行く音)


みどり「ああもう、ツッコミが追いつかないよ……」


緒里絵「あっ、噂をすれば、マリナだにゃん!」


まつり「お、ほんとだ、おーい、利奈ぁ!」


利奈「あ、まつり。サハラ。カオリも。何してんの? こんな道端で」


緒里絵「実は、マリナのことを話し合ってたんだにゃん」


利奈「え……わたしのこと? 何で?」


まつり「ほら、お前こないださ、夢が何なのかって訊いてきただろ? それが何なのかなあって皆でアレコレ想像してた」


利奈「……えっと、それで、どういう夢だってことになったの?」


まつり「利奈があたしを亡き者にしようとしてるってのが、今のところ最有力だ」


利奈「なっ! そんなわけないっしょ!」


まつり「妙に必死に否定するなぁ」


緒里絵「あやしいにゃん!」


みどり「うん、あやしい」


利奈「ま、待ってよ。待って。違うって。そんなこと本気で考えるわけないっしょ!」


まつり「じゃあ、お前の夢って何なんだよ。あたしに訊いておいて自分が言わないってのはどうかと思うぞ」


利奈「まつりだって、あたしの質問についに答えなかったじゃん!」


まつり「なんだとモイストするかこの野郎」


利奈「なっ、や、やだよ」


まつり「じゃあ、夢が何なのか言えよ」


利奈「夜ねるときに――」


みどり「それさっきまつりちゃんが言った」


利奈「そ、そんなに気になる?」


まつり「気になるなぁ」


利奈「何で?」


まつり「そりゃ、お前が訊いて来たからだろ」


利奈「…………」

まつり「…………」

みどり「…………」

緒里絵「…………」


利奈「そ、そんなに聞きたいなら教えてあげるわよ」


まつり「何だ」


利奈「……笑ったりしない?」


まつり「しないしない」


利奈「………………小説家」


みどり「なんだ、普通じゃないの」


まつり「期待させやがって、つまらん」


緒里絵「マリナ、見損なったにゃん」


利奈「見損なったって……なんでよ……」


みどり「それで、まつりちゃんの夢って何なの? マリナが言ったんだから、まつりちゃんも言うべきよね」


まつり「そ、それは。うーん……」


みどり「無いってわけじゃないよね。無いなら口ごもったり悩んだりはぐらかしたりする必要ないもんね」


緒里絵「マナちゃんのことにゃん?」


まつり「ちっ、ちげーよ!」


みどり「必死に否定してるところ見ると……」


まつり「…………」


みどり「黙ってれば誤魔化せるとでも?」


まつり「モイスト! モイスト!」


みどり「きゃああああ! なによぅ!」


まつり「うるせー! おまえなんかモイストだぁ!」


利奈「カオリ! 逃げよう!」


緒里絵「うむにゅん!」


 ダダッ。


みどり「ちょと、待ってよ二人とも助けっ――痛ぁっ!」


まつり「モイスト! モイスト!」


みどり「やだぁ、やめてよぉ!」


まつり「あたしの夢は、世界征服だぁ!」


みどり「ばっ! バカじゃないの?」


志夏「ちなみに、私の夢は、この町の永久の平和」


みどり「級長! そんなとこで空見上げてないで助けてよ!」


まつり「モイスト! モイスト!」


志夏「今日も平和で何よりだわ」


みどり「どこがよぉ!」





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