アルファの章_6-1
「ん……うん……」
朝の光に目を覚ました。
廊下で。
俺は自室のドアにもたれかかる形で眠っていた。
「さむっ」
夏が近づいているとはいえ、まだ、そこまで暖かい季節ではないからな。
朝はそれなりに冷える。
何故、俺がこんな所に居るのかと言えば、昨晩のことである。
★
寮に戻った俺と、アルファは、何故か不良に囲まれた賑やかな夕食の時間を過ごした。
「アルファたん、ほら、お肉あげるね」
暴走野郎のてっぽうだま、不良Dはそう言った。
「てめぇ、俺が先に肉あげようと思ってたんだだろうがぁ!」
ムキムキ番長不良Aが怒ってた。
と、こんな風に何故だか不良どもにチヤホヤされるアルファだったが、当のアルファは、何か考え事をしつつ、一人でブツブツ言っていた。
「尾翼角度……エンジン出力……法則的に……違う…………アイスクリーム……」
結局アイスクリームに思考が収束されていくらしい。
で、俺が廊下で寝ることになった原因となった出来事はその後のことだ。
不良との夕食を終え、一緒に部屋に戻ったのだが、しばらくして、
「出て行って!」
とか突然言われた。あの可愛いアルファに。
「何故っ」
俺の部屋なのに出て行けと言われる理由がわからなかったのだが、
「集中力が鈍る!」
「そ、そうっすか……」
俺は邪魔らしい。
「あと、コーラ買ってきて! 一五〇〇ミリリットルの!」
「コーラで良いのか? ペッパー先生じゃなくて良いのか?」
「どっちでも良い。とにかく、炭酸のペットボトルが欲しい。角ばってないタイプのやつ」
「そうか……」
「あとハサミ」
「な、何に使うんだ? 刃物なんて持たせたくないんだが」
「誰に向かって口きいてるの」
いや、アルファが何様のつもりになってんだよ。やっぱり頭の打ち所が悪かったのだろうか。
でもまぁ、言われたとおりのアイテムを手に入れることにしよう。
アルファは可愛いから。
そんでもって、言われた道具を笠原商店で購入し、戻り、ドアをノックして、言う。
「アルファ、言われた通りのもの買って来たぞ」
「入って良いよ」
「お、おう……」
いや、許可されなくても入れる部屋のはずなんだけどな。なんて思いつつ入ると、何やら白い紙に線を描き込んでるアルファが居た。
ロケットの設計図のようだった。
「言い忘れたけど、アイスクリーム食べたい」
「またそれか」
「ハイって言いなよ」
えええ。こんな子だったっけ!
これじゃあまるでわがままなタイプの上司とか上官みたいな。
「ハイ……」
そして今度は笠原商店に行って、ソフトクリームを買ってダッシュで戻って来た。
「ありがとう。ばいばい」
そして、またしても締め出されて、
「アイスクリーム♪」
扉の向こうからの弾んだ声を最後に、アルファの声が聴こえてくることはなく、何もやることのなくなった俺は、廊下でさっさと眠ってしまったというけだ。
★
そして、今に至る。
とりあえずアルファが心配なので扉を開けてみると……。
銀髪少女は少女らしく眠っていた。
体を丸めて。
「やれやれ……」
見ると、ロケットらしきものが完成していた。
それは、どうやらペットボトルロケットのようで、陽光を反射して眩しかった。
とりあえず、寝かせといてやるか。