アルファの章_4-7
曇り空の下。風の強い道を歩き、笠原商店に着いた。
みどりが引き戸を開けて三人、中に入る。
「ただいまー」みどり。
「お邪魔します」俺。
「アイスクリーム♪」アルファ。
「……お、おう……」笠原父。
そして、みどりは、一度家の中に入り、手を洗って戻って来ると、お店にあるソフトクリーム製造機械の前に立った。
コーンを手に取り、機械の前に持って行く。
「いきますっ」
緊張した様子で、レバーを引き下げると、白いものが蛇のようにニュルニュルと出てきた。
みどりはコーンを持った手元をくるくると動かし、そして完成したのは、
「ソフトクリーム!」
みどりは言いながら、ちょっと傾いた斜塔状態のソレをアルファに手渡した。
「……ソフトクリーム?」
と俺が訊けば、
「イエース、ソフトクリーム!」
みどりが答え、
「ソフトクリーム♪」
アルファがごきげん。
何だ、この八割が「ソフトクリーム」で構成された会話は。
アルファは受け取って、食べようとした瞬間。
「あっ」
ぼとっ。
お約束のように傾いていたソフトクリーム落下。
「あ、ソフトクリーム……」俺。
「オー! ソフトクリーム!」みどり。
「ソフトクリィイイイム!!」アルファ。
クセの強い銀色の髪を振り乱しながら絶叫していた。
「ソフトクリーム!」
みどりは言いながら、アルファの手から空になったコーンを取り上げて、もう一度機械の前に行き、ソフトクリームを巻いた。
「ソフトクリーム……」俺。
「ソフトクリーム♪」アルファ。
で、みどりの手からソフトクリームを受け取る。
今度は、斜塔になることなく、綺麗に巻けていた。
「ソフトクリーム♪」
みどりが親指を突き立てていた。
そして、アルファは、それに笑顔で応えた後、ソフトクリームに口を付ける。
「ソフトクリ~ム」
「何なんだ一体」
と笠原父が発言した。
何なんでしょうね。
で、みどりはその時、ソフトクリームをもう一個巻いていた。
「戸部くん。ソフトクリーム三つ分のお金払って。お父ちゃんに。600円」
「え、あ、はい」
俺は、笠原父に代金を支払う。
「はぁ……まいど……」
「ソフトクリーム♪」
言いながら、みどりがソフトクリームを巻いた。
そして、それを俺にくれるのかと思いきや自分で食べた。
「ソフトクリーム」
「ソフトクリーム」
楽しそうに目を合わせながら二人で首を傾げる。
「みどり、俺の分は?」
「……あるわけないでしょ」
冷たかった。そして、
「ねー」
みどりはまた首を傾げながらアルファに話しかける。
「ねー」
アルファも同じ方向に首を傾げて返す。
どうやら、俺が何かみどりの気に障ることをしてしまったらしい。
「あの、みどりサン。俺、何かしたかな……」
「とりあえず、ソフトクリーム食べ終わったら奥に行きましょうか。詳しい話はそこでする」
「お、おう……」