アルファの章_4-6
さて、ロケットの模型が置いてあり、かき氷の屋台があったりする休憩広場に着いた。キョロキョロとアルファの姿を探してみたところ、
「大丈夫だから、ね。今、戸部くんがアイス持って来てくれるからね」
みどりが居た。
「ほら、にゃーにゃーもそう言ってるでしょ?」
みどりが、アルファが抱える猫のぬいぐるみを撫でながらそう言うと、
「……うぇ、ひっく……本当?」
「本当本当。だから、ほら、もう泣かないの」
「うん」
泣き止んだ。
「よし、偉い」
なでなで。
何だか、すげぇ出て行きにくいんだが。
「アイスクリーム♪ アイスクリーム♪」
「可愛い歌ね」
「うん」
空手で戻ったら、どんな顔をするだろうか。
落胆して、泣き出して。
いや、しかし、どうすればアイスクリームを手に入れられるかわからない以上、このまま正直に出て行くしかない……。
「アイスクリーム♪ アイスクリーム♪」
「ごめん、二人とも。ダメだった」
「アイスク――」
「…………」
やべぇ。空気が凍りついた。
「アイス…………」
涙目で呟いたアルファ。
「戸部くん。あのね。言いたいことはたくさんあるんだけど、とりあえず言わせて」
「何でございましょう……」
「最低」
「うぐ」
返す言葉が無い。
「ごめんなさい」
謝った。思い切り頭を垂れた。最敬礼だった。
「アイスクリームなら、うちの店にあるから、そこに行きましょう」
みどりの店、というと、笠原商店か。
「はい、すみません……」
アルファは「アイスクリーム?」と首を傾げる。
「後でね」とみどり。
「オー、アイスクリーム!」
アイスがもらえるとわかって、アルファは嬉しそうだった。
「俺の分もあるのか?」
「あるわけないでしょ」
氷よりも冷たい目で射抜かれた。
「あ、はい……」
「さ、じゃあ、行こっか、アルファちゃん。アイスを食べに」
「アイスクリーム♪ アイスクリーム♪」
「ふふっ」
笑いながら手を繋いで、歩き出した。
「……くっ……不甲斐ないぜ……」
俺は二人の後を歩いた。