宮島利奈の章_6-3
で、サンドイッチを平らげた後、廃屋を出て、利奈と一緒に図書館に戻ってきた。
そして、エントランスの自動扉が開いたところで、
グィ。ゴン!
何が起きたのか、しばらく、わからなかった。
「……っっ?」
俺は、腕を捻り上げられ、倒され、図書館の床に頬をつくことになった。
さらに、誰かが俺の体の上に乗って動きを奪ってくる。
何だ?
何が起きた?
「戸部達矢、確保」
風紀委員、上井草まつりの声だった。頭上から響いてくる。
痛い。
ていうか、俺捕まった?
何で!
「じ、事情を説明してくれ。何が何だかさっぱり」
「キミには、婦女暴行の容疑がある」
婦女暴行だと?
「な、え、お、俺が、そんなことをするとでも?」
「とぼけたフリをしても無駄。状況証拠は揃ってる」
「証拠?」
「まず、図書館内に脱ぎ捨てられた利奈の着衣。書架の裏にあったキミの服。昨日から利奈は家に帰っておらず、キミも寮に帰っていなかった。無理矢理利奈を誘拐したことは明白」
「その確たる証拠に、利奈の涙!」
それが証拠になっちまうのかよ。
「うえーん。オバケこわかったー」
見ると、利奈が両親にしがみついて泣いていた。
「利奈、心配したんだからね」
美人のママと、
「無事でよかったぁ、利奈ぁ!」
ムキムキのパパ。
「そして、迷彩服なんて無理矢理着せて、キミも着て、何のプレイなの!」
まつりは叫んだ。
「無理矢理着せられたのは俺の方だ!」
「責任転嫁とはね……」
「いやマジで!」
「利奈、この男に何かされた?」
俺を組み伏せながらも利奈に訊いたまつり。
「動けなくされて暗闇に放置された」
「放置プレイとは外道なセクハラね」
「待て。誤解だ。俺にだって色々と言い分がある」
「詳しい話は取り調べ室で聞くわ」
まつりは言って、カシャンっ……と俺に手錠をかけた。
「って、手錠っ?」
「容疑者、戸部達矢を現行犯逮捕」
「現行犯って……俺が何をしたぁ!」
「何がどうあれ、利奈を連れ回したのは、あたし的に犯罪!」
「お前が勝手に決めることなのか!」
「そうよ。だってあたしは風紀委員」
「おかしい。狂ってる……この町、変だよ!」
「うるさい! 来いっ!」
「うぇーん。パパー、ママー」って泣き続ける利奈。その頭上には本子さんが微笑ましそうにフワフワしてた。
「よしよし。もう大丈夫だからな」利奈パパ。
「悪い人は、まつりちゃんが捕まえてくれたから」利奈ママ。
「俺が悪い人かよ……」
「どう考えても悪人でしょ。ほら、立て。そしてキリキリ歩け」
「はい……」
ああ、捕らえられてしまった……。
何してんだろ、俺。
もうさっぱりだよ……。