宮島利奈の章_5-5
パチパチという音の中で目を覚ました。
そばに利奈がいた。
目の前に炎があって、焚き火をしていたようだった。
「大丈夫?」
と利奈っち。迷彩服だった。やはり、さっきのは夢だったようだ。
「まぁ、何ともないみたいだ」
「丈夫なんだ」
「ああ、まぁな。ところで……ここはどこだ。そして、今、何時だ」
「場所は不明。時刻は夜」
「アバウトだな。いや、っていうかさ……これって、遭難と違いますか?」
「たぶん、そうなんじゃないかな」
ダジャレで返してきやがった。
スルーしよう。
「…………」
「…………」
「腹減ったな」
「うん。減ったけど、食べ物持って来てないよ」
「まじかよ……」
探検したがってた割には準備が悪いぞ。
悪いなんてもんじゃない。悪すぎる。
軽率すぎるんじゃないか。
いや、軽率ガールなのは、今まで一緒に居た時間で十分にわかっていたはずだ。だったら悪いのは、それを見越して俺がちゃんと探検準備を整えなかったことじゃないか。
くっ、俺も軽率だったぜ。
利奈に任せていると、安心できない。俺が主導権を握るべきだった。
「あー、利奈も、気を失ってたりしたのか?」
「いや、ずっと起きてた」
「じゃあ、その時間に人を呼びに行ってくれれば良かったじゃないか」
「それが、君を背負って、森を出ようと思ったんだけど、同じところをグルグル回ってしまって、抜け出せなかった」
俺を背負って、だと。根性あるな。
「木にキズをつけながら進んだんだけど、どうしてか同じ所をグルグル……」
典型的な遭難パターンじゃないか。
「グルグルしていることに気付いても、グルグルから抜け出す方法が思いつかなくて、仕方なく、焚き火してみた」
「それは、なかなか良い判断だったんじゃないか」
この森に動物が居るのを見たことはないが、動物は火を怖がるし、森から煙が上がれば町の人に気付いてもらえるに違いない。
「ところで……ねぇ、わたしさ、昨日寝ずにこの服作ってたじゃない?」
「ああ、そんなこと言ってたな」
徹夜で迷彩服を作ってたとか何とか。
「だから眠いんだけど」
なるほど。眠い中、火の番をしていてくれたのか。ありがたいことだ。
でも、でもな、一言だけ言いたいんだが……探検したがってるってのに前日徹夜するのは、おかしいだろ。危険だぞ。
だがまぁ……いいか。今はそんなことを言わなくても良い。過ぎたことをいくら言っても、詮無い。
「寝ていいぞ。火の番は俺がしとく」
「わかった。おやすみ……」
言うと、パタリと倒れ、すぐに眠り出した。
「なんか、某国民的ネコ型ロボットが出てくるマンガの、めがねの男の子みたいだな。昼寝の天才と称された」
まぁ、今は夜だが。
そしてめがねも掛けていないが。
それにしても、今度は遭難かぁ……。
「何してんだろうなぁ、俺……」