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宮島利奈の章_5-4

  ☆


 ……夢を見た。


 その世界は、暗くて、その暗さが、かえって彼女の白い肌を眩しく見せた。


 揺れる視界。走っている。何度も振り返りながら。俺の吐く息の音だけが、妙に大きな音で、他の音を全てかき消していた。


 彼女が何か叫んでいる。叫んでいる彼女を見たわけではないし、何も聴こえないけれど、そういう振動が、わけのわからないリアルな感覚を持って伝わってくる。


 彼女は――誰?


 誰だ。


 どこかで、会ったことがある気がする。いや、どこかで会ったという確信がある。何度も。何度も。


 でも、思い出せない。


 彼女は――誰?


 誰、誰だろう……。





 ……もう一つ夢を見た。


 妙にリアルな夢。匂いや音も鮮明に届く、現実みたいな夢。


 なんか、未来でも見ている気分になるような。


 教室に利奈が居た。服を着ていた。制服を着ていた。迷彩服では無かった。


 利奈は、思い切り、俺に顔を近づけてきて、キスでもされんのかと思ったら、すぐに離れて、


「よかった、達矢だ。変なオバケとかだったら、どうしようかと思った」


 とか言っていた。そして、制服のポケットから取り出したのはメガネ。


 それをかけた。


 ううむ、メガネをかけた姿も悪くはないな。しかし、悪くはないけどもあんまり似合わねぇな。


 世の中には二種類の人間が居る。メガネが似合う人間と、メガネが似合わない人間だ。残念ながら利奈っちは後者だった。


 俺は、「メガネなんて、どうしたんだ」と訊いてみる。すると利奈は、


「利奈っち七変化ってやつっしょ!」


「七種類全部教えてくれ」


 すると利奈は、パーの形に開いた指を一つずつ折って数え始める。


「メガネっしょ、服っしょ、髪型……あとは……」


 指三本で止まった。


「あとは、うーん。服!」


「服はさっき言っただろ」


「まぁ、なんか七個くらいある気がするし!」


「テキトーだな、おい」


「細かいんだよ、達矢は」


「いや、そんな細かくないし、利奈が細かいこと無視しすぎだと思うけどな。いやでも、変なとこに細かいからわけわかんないよな」


「まぁ、大事にしていることが少し違うのかも」


「なるほど」


「でもそれは、誰にだってあることっしょ。他人と同じ人間にはなれないんだから。それは血が繋がってる親とさえ、ね」


「親と何かあんのか。仲悪いとか?」


「んー、わかんない。まぁ、そんなことはどうでもいいっしょ」


 そして俺は笑いながら、


「だが、図書館に篭もってて誰にも会わないんだから、格好なんてどうでも良さそうなもんだがな」


「うわっ、ひどっ! フツーそういうこと言う? さすがにひどすぎっしょ! いまの!」


「ん、ああ、気にさわること言ったのか? すまん」


「はぁ?」


 すごい顔をされたぞ。変顔の部類に入れてもいいような。折角なかなか整った顔してるのに、くしゃくしゃにしちゃって勿体無い。変なシワができたらどうする気だ。なんて、俺が気にすることでもないか。


 そんなところで、視界が真っ黒になって、夢が終了した。


 どうしてこんな夢を見たんだろうか不思議だったけれど、時々、意味を求めても仕方ない夢ってのもある。


 そんなことを思う頃には、この前に見た夢のことなんて忘れていた。


  ☆



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