宮島利奈の章_4-1
もう、四日目になったんだな。そう思いながら、俺は窓の外を眺めていた。
相変わらず、風車が回って風の音がする。
悪くない町だ。
探検しに行くことになったので、多分、もっとこの町のことを知るようになるんじゃないかなと思う。
それにしても、一昨日出会った、宮島利奈という女は、変なヤツである。
突然哲学的なことを言い出したかと思ったら、信じられない軽率ぶりや過ぎるくらいのアホぶりを発揮してみたり。そんな安定感の無い感じが、クセになる気もする。
「たった四日って、気がしねえなぁ」
もう、随分長くこの町に居るイメージがある。
強烈に。
「さて、今日は……どうしようかな……」
図書館に行くことは決定済みだ。
だが、今日は学校が休みの日。
利奈もまだ図書館にいないかもしれないし、そんなに急いで行くこともないだろう。
「散歩でも行くか」
実はまだ、この町のことをそれほど知っているわけでもないしな。探検の前に探検する必要の無い場所も見ておくか。
俺は、黒い無地の長袖シャツに袖を通した。
というわけで、朝食の後に散歩に出た。
空を見ると風に整形された雲たちがいくつも浮いていて、それも綺麗だ、とか思った。
目的地を決めずにブラブラしていると、風の強い開けた場所に辿り着いた。
湖だ。
裂け目の手前にして、学校から続く下り坂の終点。
円形と三角形の二つの浮島のある湖。
で、そんな湖に何か用事があるわけではなかったのだが、何故か俺はこの場所に来なければならないような気がしていた。
だがそこに誰か知り合いが居るわけでもなく、視界にあるのは知らないオッサンが一人で釣りをしているという光景だけだった。
釣り、か。
「あの、何か釣れますか?」
俺は釣りの人に話しかけた。この話しかけたのがいけなかった。
「……ん? ようニィちゃん。暇そうだな。こんな何も無え所に来るなんてな」
俺の方に顔を向けてそう言った後、延々と一方的に話を続けられた。
休日の書き入れ時にサボってるのにエリート店長を自称していて、俺をアブラハムとか呼んできて、しかも男のくせに愚痴ってきたり。折角の休みの日に、男の愚痴を聞かされ続ける苦痛を考えて欲しい。それはそれは、つらいものだ。可愛い女の子の愚痴ならまだしも。
そんでもって町の脱出方法だのウチでバイトしないかだの何だのと言ってきた。
言いたいこと言った後は、雨が降りそうだから、とか言って、ショッピングセンターのある南の方角へと歩き去って行った。
空を見上げると、確かに空を暗雲が覆い、今にも雨が降り出しそうだった。