穂高緒里絵の章_6-1
朝食の後、すぐに寮を出た。
今日は、学校の授業があるが、それどころではない。サボる。そして華江さんに、結婚の報告をしなくては。
というわけで、病院に来た。
受付で、名前を書いて、面会証的なものを受け取り、エレベーターに乗って五階へ。
華江さんの病室前。戸が閉まっていたので、ノックする。コンコン、と音がした。
「華江さーん」
しかし返事が無い。
「いないのかな。あ、寝てるのかも」
俺は、躊躇いながらも扉を開けた。
ベッドの上にマットはなく、華江さんの姿もなかった。
「え……」
それは、検査や散歩に出ているという雰囲気じゃなく、まるで、最初から居なかったみたいに。
「まさか、そんな……」
廊下の表札を確認してみる。
白かった。
そこに、『穂高華江』の文字は無かった。
「う、嘘だろ……」
死んでしまった?
そんな、まさか。馬鹿な。
こんなに早く?
と、その時、廊下を通りがかったナースさんが言った。
「あ、穂高さんなら、今朝退院しましたよー」
「え?」
退院だと……。
「家で安静にしているそうですー」
「はぁ。そ、そうですか。ありがとうございます」
「いいえー」
ナースさんは言って、歩き去った。
退院……?
快復したとは思えないが……。
とにかく、家に居るならそこに行ってみよう。