表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
190/579

穂高緒里絵の章_4-4

 夜になった。


 寮の部屋。窓の外はしとしとと雨が降り続いている。


 そんな中、俺は夕飯も食わずに布団の中で、悩んでいた。


「うにゅぅ、何だこの展開は、うにゅぅ」


 思わずおりえっぽい声も出る。


 華江さんが深刻な病気で……おりえをよろしくって頼まれて……。


 そもそもプチ不良で、この町に来てしまった俺が、誰かと結婚するなんて想像できないんだ。


 今、おりえと結婚することになったとして、おりえの気持ちはどうなる。


 昼間チョロっと「結婚してもいい」みたいなことを口走ってた気もしたが、それはおりえらしい、考えなしのフワフワした発言だろう。


 考えることを放棄して、選択権を他人に委ねて。そういう、他人への依存度の高いヤツなんだと思う。それは、何回か会ってみてわかった。だから、結婚しても良いなんて、本心で言っているわけじゃないと思う。心の底から言っていたのだとしても「結婚してもいい」じゃダメなんだ。おりえが「結婚したい」と思う相手じゃないとダメだ。そうじゃないと、おりえがダメになってしまうんじゃないかって、こわい。


 すぐに思考を放棄して、他人に自分の運命を委ねてしまって、それを「愛」とか言い張って。自己主張が強いようでいて、自分が無くて。何でも他人のせいにして……。そして時々「仕方ない」で済ませようとする。何が何でも責任からは逃避する。


 簡単に言えば、おりえは子供なんだと思う。


 だったら俺が守ってやれば良い……とか思っている部分も俺の中にあるけれど、現実問題、考えれば考えるほどにそれは困難なことだ。


 俺だって、こんな町に送られて来てしまうくらいに自分のことで精一杯だし、体験も経験も足りなくて、働いているわけでもない。誰かの運命を背負うには、あまりにも幼い。


 大人になって、現実的な選択ができるようになった時、おりえは俺を選ぶだろうか。今、結婚して、その選択を後々になって悔やんだりしないだろうか。そして、別れて再出発した時には、バツイチになっていて、再婚相手の選択が狭まっている、なんてことになって……。


 これから先、どうなるかなんてわからない。


 でも、少しでも恵まれた場所に立っていて欲しい。


 俺がおりえに対して求めるのは、笑顔で、いつも笑顔で、朗らかに笑っていられる場所にいつも居て欲しいということ。穂高緒里絵が、ずっと好きな人と一緒にいられるように。


「そしてその相手は……きっと、俺じゃない」


 自信が無い。


 俺は目を閉じ、眠りに就いた。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ