柳瀬那美音の章_4-6
「ただいま」
「おかえりー」
さて、早速プラスチックゴキ○リを試そうか。問題はタイミングだが。
「……何か、企んでるね?」
「ぎくぅ!」
「プラスチックのゴキ○リを、どうするの?」
バレバレだった。
くっ。那美音は心を読めるんだった。これではプラスチックゴキ○リを試す価値がないぞ。プラスチックゴキ○リの悪戯は、またの機会にしよう。那美音が忘れた頃までに無心で仕掛けることのできるスキルを身につけなくては。
まぁそれはともかくとして、俺は誤魔化すように、
「そそそ、そんなことより、買って来たぞ、言われたとおりに、メロンパンと、お茶」
袋から買って来た品物を取り出して並べた。
「ふむ……メロンパン十個と、二リットルのお茶が五本か。とりあえず三日はもつね」
「いや待て、さすがにメロンパンだけでは栄養バランス偏り過ぎだぞ」
「錠剤的なもので何とか補充」
「よろしくないぞ。そういうのは。ちゃんとゴハン食べないとだな」
「母親みたいなこと言うのね」
「いやしかしだな……」
「はいはい」
生返事しながら、俺が買って来たメロンパンの封を開けて、もそもそと食べ出した。なんか困った人である。俺の真摯な忠告に従おうとしない。
「達矢くんも食べる? メロンパン」
「おう」
ガサガサと袋を開けた。
「甘い菓子パンとかすきなのか? 那美音は」
「うん、メロンってさ、なんか高級感あるし」
「しかしまぁ、那美音の手のソレはメロンクリームでも何でもない砂糖まぶしてあるクッキー生地かぶせたパンであり、メロン要素ほぼ無いけど何でメロンパンなんだろうな」
「うっわ、普通そういうこと言う? 達矢って最低。メロンっぽければ良いって思ってる人も世の中に大勢居るのに」
「すみません」
一緒に、メロンパンを食べた。
さて、夜になった。
暗闇の中に、俺は居た。
眠ろうとしていた。そりゃ夜には寝るもんだ。当り前のこと。
だが、俺は寝れない。
どうしてだか、わかるだろうか。
「…………くそぅ……」
「すー、すー……」
静かに寝息を立ておって! 眠れないじゃないか!
オトナな女性が、近くで無防備に寝てるんだぞ!
しかも素晴らしい巨乳を上下させて!
興奮してしまって眠れないんだよぅ!
「ん……んんん…………うるたぁい……」
うるたぁいだと?
その長身と鋭い目つきっていうおねえさまタイプの容姿に似合わない言葉を色っぽいヴォイスで!
ドキドキするだろうがぁ!
「…………くー、くー」
「ああっもうっ……眠れねぇ……」
そうして夜は更けていった。




