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柳瀬那美音の章_4-3
バスルームおよびトイレへと続く扉がガチャリと音を立てて開き、女は顔だけ出してこう言った。
「あのさ、少年、服とか、無い?」
「え? あ、俺ので良いですか?」
「うんうん」
頷いたので、俺は服を用意する。
下着とか、どうすんだろ。
「それは、洗ってドライヤーで乾かしたから平気」
そうか。制服とか着せるのはどうだろう。男子用だが、美人だし巨乳だからきっと似合うはず――
「コスプレさせようとしないで」
心を読まれておこられたぞ。
「普通の服で」
「はい」
フゥ、がっかりだぜ。せっかくのおっぱいなのに。
その時、鋭い目でキッとにらまれた。
何だろうか。その鋭い視線に、どこかで見覚えがある気がした。いやまぁ、どうだっていいか。今求められているのは、その視線の分析よりも謝罪と行動であろう。
「すみません……」
俺は黒い長袖シャツと、ブルーのジーンズをタンスから取り出して胸から下をバスタオル巻いただけの那美音に手渡す。
谷間が……谷間が……いや、何でもないけどな。
何だかドキドキした。
「ありがとう」