浜中紗夜子の章_7-1
朝、天気は晴れ。絶好のキャッチボール日和。
起きると紗夜子がいて、パソコンでネットサーフィンしているようだった。
「紗夜子ぉ、おはよー」
「ああ、たっちー。朝ごはんあるよ。今日はペンネ・アラビアータ。少し辛いけど平気?」
「ん、大丈夫だ」
「じゃあ、ちょっと待っててね、五分くらい」
「おう」
きっかり五分後。
「はい、どうぞ」
朝ごはんが出てきた。
「いただきます」
食べる。
「どう?」
「うまぁああ!」
「辛くない?」
「からぁああ!」
「ふふっ」
珍しく、紗夜子が微笑んだ。
ほんの僅かだが。
「ほんと、ありがとうって感じだぜ」
美味しいごはん食べさせてくれて、しかも行き場を失った俺を泊めてくれて。
「うん。わたしも、感謝してる」
「何でだ」
「だって、寂しかったもん。たっちーがいてくれて、うれしい」
「そうか」
紗夜子はこくりと大きく頷いた。
俺は、再びフォークでパスタを食べる。
「うまぁああああ!」
で、昼になったので、昼ごはんを食べて、今食べ終わったところだ。
この間のミートソースが残っていたらしいので、そのスパゲッティを食べた。叫ぶほどに美味しかった。
ちなみに、今日も授業があったのだが、サボった。
俺は、いつものように食後の皿洗い。
洗い終えて戻った頃には紗夜子はもう制服のままベッドに仰向けで寝ていた。
だが、今日はそのまま眠らせるわけにはいかん。
なぜなら、絶好のキャッチボール日和だから!
俺は一度ソファに座り、自分で買ったグローブと、みどりから借りたグローブとボールが入ったナイロン袋を左肩に掛けて立ち上がった。
「紗夜子、起きろー」
揺すってみる。
「すー、すー……」
寝てる。綺麗な顔で。
ちょっと腹の辺りを人差し指でプスリと刺してみる。起きない。
鼻をつまんでみた。起きない。
「絶対起きないな……こりゃ……」
「……すー、すー」
こうなれば、こうするしかないっ!
俺は、右手を紗夜子の背中に手を滑り込ませ、左手で紗夜子の膝の裏を持って、眠る紗夜子を持ち上げた。
いわゆる、お姫様抱っこ!
どきどきするっ!
念願のお姫様抱っこだ!
紗夜子は確かに姫と言っても良いくらいに綺麗だからな。この抱き方以外に選択肢はないのだ。
ていうか、とんでもなく軽いんだが。
体は温かいからちゃんと生きてるんだろうけど、ちゃんと飯食ってる割に、軽すぎだろ。
「……すー、すー」
幸せそうに寝てる。
「よし、いざ校庭へっ!」