浜中紗夜子の章_6-5
学校から坂を下って、湖に突き当たったところで右折し、さらに進むとショッピングセンターがある。
俺は、そのショッピングセンターに着いた。
広大な敷地に建つ二階建てのショッピングセンターは、比較的最近完成したとのことで綺麗だった。
一階に食品や生活雑貨が集中して陳列されていて、スポーツ用品、本、機械製品等の娯楽用品のコーナーは二階にあった。
俺は、他のものには目もくれず、まっすぐにスポーツ用品コーナーへ行き、グローブの値段を確かめた。
「二万ッ!?」
思わず大声が出た。
二万円とかっ!
そんなするの、グローブって!
「俺が所持しているのは、僅か三千円とちょっとの小銭。一万七千円も足りないじゃないか。どうすりゃいいんだ。参ったな、参ったぞぉ……」
思わずブツブツ呟くほどにショック。
通りかかった女性店員に訊いてみる。
「このグローブ……二万っすか?」
「はい。お安いのをお探しでしたら、こちらはいかがでしょう」
「どれですか?」
「これです」
店員は、陳列されたグローブのうちの一つを手に取り、差し出してきた。受け取って値段を確認する。
「五千円超っ?」
買えるわけがないっ。
「も、もう少し安いのはありませんか?」
「えーと……こちらが二九八〇円ですが」
お。にーきゅっぱなら、ギリギリ何とかなる。
「それ、下さい」
「かしこまりました。では、こちらへどうぞ」
そして、会計所で店員に代金を手渡し、袋に入った安物のグローブとお釣りを受け取った。
だが、それを持ってショッピングセンターの外に出て、すぐに気付く。
「ってオイ……グローブ一つじゃあ、キャッチボールできねえじゃん……」
ボールも無いし、グローブもう一つ必要だし。
どうすりゃいいんだ。
いやもう、ホントに、どうすりゃいいんだ!