浜中紗夜子の章_6-3
理科室。
チャイムが鳴った。
この部屋には時計が無いのでわからないが、校内の雰囲気から察するに放課後だろう。赤色カーテンをめくって、中庭の様子を見てみると、ダッシュで下校する生徒がチラホラしている。
「あいつら、寮に帰るんだろな」
俺には帰る寮が無いからな。
「はぁ……」
溜息。
その時、引き戸をノックする音。
「……マ、マナカー。いるー?」
どうやら紗夜子に来客のようだ。珍しい。
「はーい」
俺は少し歩き、戸を開ける。
驚いた顔の女子が立っていた。可愛い系で、髪のキレイな女子だった。
「…………え」
「おう、みどりじゃないか」
「な、な、な、何で、戸部くんが、マナカの家に……?」
すっごいびっくりしてた。
「居候してんだ、今」
「そう、なんだ……」
「紗夜子に何か用なのか?」
「いや、その、失礼なこと言っても、いいかな?」
「どうぞ」
「戸部くんが、マナカのこと聞いてきたから、心配になって、様子を見に来たんだけど……まさかマナカの家に住んでるとは思わなかった……」
「とりあえず、少し遠くで話さないか。あまり話し声がうるさいと、紗夜子が起きちまう」
「あ……うん。そうだね……」
俺は廊下に出て、引き戸をピシャリと閉じた。