浜中紗夜子の章_5-2
連れて来られたのは体育館裏。
体育館裏 + 不良 = 暴力的イジメ
俺の頭の中で式が組みあがってしまったぞ。
何で俺、まつりみたいな不良番長に目ぇ付けられちまったんだ……。
「オイ」
まつりは言って、振り返った。
「な、何でございましょう」
思わず変な口調になる俺。しかしまつりはそれを気にすることもなく、
「忠告だ」
とか言った。俺としてはわけがわからない。
「なん……ですか」
「浜中紗夜子に近付くな」
紗夜子に近付くなだと。そういうわけにもいかないな。ごはん食べさせてもらったお礼と、泊めてもらったお礼に紗夜子を太陽の下に引っ張り出してやるんだ。だからこれは譲れない。
「不服そうだな」
「ああ、不服だよ」
「キミのような不良が、浜中紗夜子に近付くのは許さない」
「お前の方が不良だろうが」
「何ィ?」
にらまれた。だが、ここで引くわけにはいかない。推測するに、この目の前に居る女は、紗夜子を自分のものにしたがっているんだろう。得意の暴力で。
体が細っこい紗夜子のことだ。まつりに比べれば力もないだろう。こんな暴力女に力任せに無理矢理あんなことやこんなことをされて……。
なんということだ、この変態女め。
そんなイケナイ展開にするわけにはいかない!
「おい不良、お前がどんな陰謀を抱いてるか知らないが、とにかく、お前に紗夜子は渡さない!」
俺は勇気を振り絞り、ビシッと言ってやった。すると、まつりはフッと笑い、
「忠告はしたからな。二度目はないと思え」
脅すように言うと、俺に背を向け、早歩きで颯爽と去っていった。
何だってんだ、一体……。