浜中紗夜子の章_4-4
昼になった。
その頃には、もう外は大雨だった。
廊下にバチンバチンと雨が窓を叩く音が響く。
腹減ったな……。
そろそろ紗夜子の機嫌も直っただろうか。
紗夜子が見えなくなってからすぐに正座を解いて校内をうろついていたが、戻ってもいい頃だと思う。あまり根に持たないタイプだろうからな。
で、理科室前に着いた。
ガラッと扉を開けてみる。
「紗夜子ー」
「すー……すー……」
ベッドで寝ていらっしゃる。
そして、テーブルの上には書置きが。
『昼ごはん抜き!』
「えええええええ!」
ショック。そしてぐるぐると鳴る俺のお腹。
「紗夜子のいじわるっ!」
「すー……すー……」
寝ていた。
美しい寝顔が憎い!
ちくしょう。
どうしようか。今日は休日だから、学生食堂なんてやってない。寮に戻れば昼食にありつけるが。それしかないか。
俺は一度、寮に戻ることにした。
で、雨の中を傘差して、寮まで戻ったのだが、その寮の門のところで、俺はとんでもないものを目にした。
「あっれ……俺の荷物が……」
俺が持って来た荷物が大きなリュックにまとめられ、雨ざらしになっていた。
ど、どどど、どういうことだ。
一体何が?
俺は寮の玄関へと走る。
「ちょっと、あの、俺の荷物、何で外に出てるんですかっ!」
大声で言うと、男子寮の寮長のおっちゃんが出てきた。
「あぁ、戸部くんね。君ねぇ、言ったでしょう」
「何をですか!」
「この寮には、朝食は必ず食べなくてはならないという絶対のルールがある……と」
「あ……」
「ルールを守れない者は退寮。わかるね? 出て行くんだ」
「あ、俺すっかり――」
「『忘れていた』では済まないこともあるのだよ。それが、『絶対のルール』というものだ」
なんということだ。これは、やっちまったってやつじゃないか。
「さぁ、わかったら出て行きたまえ。友達の家にでも泊めてもらえばいい」
友達とか、いないっす。理科室登校っす。
「返事は?」
「はい……」
諦めるしかないか。不本意だが。絶対のルールと言われたら……。
くぅぅ、『食』に気を取られるあまり、『住』を失った!
俺はとぼとぼと門まで歩き、雨に濡れたリュックを背負った。
こうして、俺は住む場所を失い、ホームレスとなった。
何だろうな……自分で自分を、責めたかった。