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浜中紗夜子の章_4-2

 青空の下、歩いて、歩いて、また歩いて、学校に着いた。


 さて、どこに行くか。


 と……まぁ、理科室しかないな。


 俺は律儀に下駄箱で靴を履き替え、ビニル傘を傘立てに置いて、校内へと入った。


 で、理科室の前に来た。


 コンコン、とドアをノックすると、


「はーい」


 声がして、ガラッと戸が開いた。


「いらっしゃい」


「おう、おはよう」


 いつもの制服姿の紗夜子。


「どうぞどうぞ」


 俺を招き入れた。


「今日も可愛いなっ」


「あっそう」


 くっ……割と恥ずかしいことを言ったのに手ごたえが無い。


 普通の子なら「え? そ、そんな、恥ずかしいな。……ぽっ」とか言って頬を赤らめたりするものだろうに!


 いや、しかし余程のことがなくては動じない紗夜子は、それはそれで美しいというものだ。


 元々美しいものを愛でるのが好きな俺は、完成された芸術たる紗夜子に干渉し感傷に浸りつつ、完成されてはいるものの完璧ではない美しい紗夜子を鑑賞するのだ。ついでに、紗夜子を傷つけるものからの痛みを少しでも和らげる緩衝材みたいなものになりたいというのもある。


 紗夜子がずっとこの理科室にひきこもっているのなら、確かに傷つかずに済むかもしれない。でも、紗夜子は外に出なければならない。理科室に、こもり続けてはいけない。なぜならそれは、異常だから。


 ずっと誰にも心を開いていない子が外に出て行く以上は、大きな痛みを伴うものだろう。


 その時に、そばに俺がいてやりたい。それが緩衝材になりたいってことだ。


 俺がそんな思考を展開させていると、紗夜子がテーブルに手をつき、俺の目をじっと見据えて、


「……どうしたの。何か深刻そうな顔して。お腹すいたの? ご飯食べる?」


「食べるっ!」


 俺は即答した。


 食欲によって思考が支配されて、ゴチャゴチャ考えてたことが全部吹っ飛んだ。


 まぁ、全てはお腹いっぱいになってからだ。


 腹が減っては更生もできないからな!




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