浜中紗夜子の章_3-7
『間もなく、下校の時間です。全校生徒は、すみやかに帰りましょう』
そんな校内放送が、静かな世界に響いた。
「ふぅ……。やれやれ、調べた調べたー」
外はもう真っ暗で、理科室を改造して作られた紗夜子の部屋はノートパソコンの画面が発する光で薄暗かった。
今日一日で俺がやったことはと言えば、飯食って漫画読んで飯食ってネットサーフィン。そしてゲーム。で、終わり。
紗夜子を何とかする前に、俺がどうにかなりそうだと思うのは気のせいか?
このままでは、ミイラ取りがミイラ。紗夜子を更生させるどころか、俺が紗夜子のように昼夜逆転生活に引きずられてしまうのではないか。
危惧すべきことである。
紗夜子は、聴こえないくらいに静かな寝息で眠っている。
ノンレム睡眠真っ只中であろう。
「ていうか……ひきこもり脱却について調べていたはずが、いつの間にかゲームしてたってどういうことだ俺……」
コンピュータ相手に延々とチェスしてた。
妙に居心地が良い部屋にドップリ捕まってる気がしてならない。
この部屋には不思議な魔力がある気がする。
人を堕落させる力が……。
「一刻も早く、何とかしなければな……」
俺はパソコンの電源を落とし、暗い部屋の中を歩いて出入り口まで来ると、扉を開けて閉めた。
寮の部屋に向かって歩き出す。
また明日、様子を見に来よう。
そんなこんなで、寮での夕食を終えた俺はずっとパソコンの画面を見続けていたせいで疲れた目を押さえたりした後、さっさと布団に入って眠った。