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幕間_05_アイドルと「ずんどうねこ」

 坂の途中。


達矢「なぁ、みどり」


みどり「ん、何よ達矢」


達矢「このぬいぐるみは、妙に可愛いが、何だ」


みどり「ずんどうねこってのよ」


達矢「なんか、そのまんまなネーミングだな。たしかに丸太に耳と目と尻尾つけただけって感じに寸胴だが」


みどり「RUNちゃんって知ってるでしょ?」


達矢「誰だそれは」


みどり「え……」


達矢「いや、そんな後ずさるのは過剰な反応すぎるんじゃないか?」


みどり「だって、え? 国民的……アイドルで、歌手で……。この非国民!」


達矢「おいおいちょっと待て。説明してくれ」


みどり「RUNちゃんは国民的アイドルでしょ、テレビにすっごい出てたじゃん。今はちょっと活動休止しちゃってるけど、この世界じゃ腐ったひきこもりだって知ってるような有名人だよ?」


達矢「テレビ見ない俺はひきこもり以下か」


みどり「未満よ」


達矢「ひでぇな」


みどり「ずんどうねこにはね、ドラマがあるのよ」


達矢「ほほう、どんなだ」


みどり「実はこれはね、その国民的アイドルが昔飼っていた猫をモチーフにしたものなの。天に召されてしまった猫とね、いつも一緒に歌ってるってことね」


達矢「あの世からの声なんて呪いの音声ファイルみてーで嫌だな」


みどり「そういう意味じゃないんですけど」


達矢「だから、結局のところ、その猫のぬいぐるみは一体何なのかと」


みどり「話きいてなかったの?」


達矢「きいてたってわからん。みどりはランちゃんとかいう(やから)の説明を国民的アイドルとかいう一言だけで済ませて全然してくれなかったし」


みどり「輩とか言ってんじゃないわよ」


達矢「うるせー嫉妬してるだけだ」


みどり「ば、ばかっ」


達矢「ま、みどりが好きなら、俺もランちゃんとやらの曲に興味は持つけどな」


みどり「貸そうか? テープあるよ?」


達矢「テープ(笑)」


みどり「達矢、今、ちょっとバカにしなかった? 田舎だなって感じに」


達矢「な、何言ってんだよ。気のせいだろ」


みどり「そう。まぁいいか。あぁ、でもなぁ、あいつに貸したまんまだったかも」


達矢「あいつ? あいつって誰だ」


みどり「ひきこもりの友達」


達矢「男か?」


みどり「余裕ないのね、達矢」


達矢「いやほら、みどりのな、というか恋人の交友関係くらい知っておきたいと思うのが、人間として当然の感情なんじゃないかって」


みどり「最近は男同士とか女同士とかもあるけどね」


達矢「それお前、どっちでもいいとかそういう意味か? 性的に」


みどり「違うわよ。まぁそいつはね、女とか何だとか言う前に、今んところ、人間未満でクズの部類に入るやつだから、達矢が気にしなくてもいいよ」


達矢「無理を言うな。気になるっての」


みどり「んー、まぁでも、あたしも最近、ていうか実は何年もあいつには会ってないからなぁ。人に会うのがこわいみたいで、逃げるし、足はやいし」


達矢「ひきこもりっていうか、精神的な病っぽいな」


みどり「まぁねぇ」


達矢「で、このぬいぐるみの話なんだけどな」


みどり「ああ、うん。これはRUNちゃんが歌う時に、こうやって、肩に乗せて……歌うの」


達矢「おお、似合うぞみどり。素晴らしい」


みどり「え? そう? へへへ」


まつり「どけどけぇー!」


 ドドドドドドドド。バコン!


達矢「はぶぉ!」


まつり「ソーリー!」


 ドサッ。


みどり「ちょ、ちょっと、大丈夫、達矢? あっ、まつりちゃん……行っちゃった」


達矢「くっ、轢き逃げとは最悪だ。つーか、今あいつわざとぶつかって来たよな」


みどり「あたしたちが世界で一番仲良くしてるから、嫉妬したのかも」


達矢「なるほどな、しょうがねぇヤツだな、まつりは」


みどり「ふふふ」


達矢「ははは」




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