笠原みどりの章_7-3
チャイム。
「達矢ー」
休み時間になるなり、窓際の席にみどりがやって来た。
「おう、みどり。どうした」
今朝までの態度が嘘のように機嫌の良いみどりは、俺の隣の空席に座った。そして、頬杖をつきながら、流し目で俺をみた。
「ねぇ、今日の放課後さ、少し付き合って欲しいんだけど」
「ああ、もちろんオーケーだ」
「うん。放課後すぐだよ? チャイムが鳴ったらすぐだよ?」
「もちろんさ!」
「本当に?」
「俺はいつだって、お前に独占されたいんだぜ」
「じゃあ、約束ね」
「ああ」
俺は微妙にカッコつけた笑顔で親指をグッと突き立てて見せた。
「うんっ!」
同じように突き立ててくる。
笑顔がまぶしい。
いやぁ、しかし……出会った時と、随分印象が変わったなと思う。
元々、多少人見知りする性質だったってことで、猫かぶっていたのだろうが。
「何? 見つめて。顔に何かついてる?」とみどり。
「目と鼻と口がついてるな」
「眉毛はどこへ?」
「眉毛には旅に出てもらった」
単純に言うの忘れただけだが。
「……あるじゃん」
眉毛に触って確かめていた。
「いや、しかし不毛な会話だぜ」
「いや、毛あるってば」
ずずいと眉毛を指差して迫って来た。
そうきたか。ああ、可愛い。ちょう可愛い。