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笠原みどりの章_6-3

 自習の教室内を喧騒が包んでいる。


 二日ぶりの教室には、まぁ見慣れた顔。


 廊下側に風間史紘、上井草まつり。中央寄りには笠原みどり、伊勢崎志夏。そして、窓際にアンニュイに佇む俺。


 風車は時計回りにキィキィとメンテナンスされてない感じの声で鳴いてる。風車可愛い。まぁ、それ以上に可愛い子も居るけどな!


 ――笠原みどりっていう、な。


 ああ、結構やばいかもしれない。


 これは、恋。ラブ。


 いつか……近い未来も遠い未来も一緒に居たいと思わせてくれる彼女が好きだ。しかし、一緒に居るとなると、俺がプチ不良のままでいるわけにはいかない。俺が不良であることで、みどりに迷惑が掛かるなんてことはあってはならないからな。


 で、そんな笠原みどりを眺めてみる。


 みどりは級長の伊勢崎志夏と話していた。


 ああぁ……素敵だなあ……彼女の体の周りだけほんのり光っているようにすら見えるなぁ……。


 と、眺めていると、みどりと目が合って、手招きされた。


 何だろうか。


 とりあえず、飼い主に駆け寄りながら尻尾振る犬のように二人の居る教室中央まで行ってみる。


「何か妖怪?」


「古いです」


 いきなりツッコミが入った。


「すまん」


 とりあえず謝る。


「?」


 志夏は首を傾げている。


 そう、他人が入り込めないほど、俺たちは通じ合っているのだ。


 そしてみどりは「それで、えっと……」と何かを言いかけて、俺は「何だ」と訊いてみる。したらみどりは「何だっけ」とかって首を傾げた。


 ああ可愛いなと思ったさ。でもな、そこで志夏が空気を読まずに、こんなことを言ったのだ。


「別に達矢くんを呼ぶ必要は無いんじゃない」


 失礼なヤツだと思った。みどりは俺を呼びたくて呼んだのに、その行為を否定するとは。


 そしてみどりは少し、うーんと唸りながら考え込んだ後、


「……いや……ああ! そうだ!」


 思いついた顔で拳で平手をポムンと叩いて、


「呼ぶ必要あるある」


 と言った。


 何のことだかさっぱりわからんが、まさか俺をネタにして遊んでるんじゃないだろうな。まぁ、みどりにならネタにして遊ばれるのも嫌ではないが。


「どうして達矢くんを呼ぶ必要が?」


「達矢が考えたの。町を密閉するって」


 何の話だろうか。よくわからんが、町を密閉って言うと、昨日少しだけ話した風を止めるにはどうすればいいかって話に関係あるのかな。


 志夏は納得したように頷きながら、


「ああ……そうなの。確かに、笠原さんが考えたにしては非常識過ぎる計画だものね」


「おい、志夏。今無意識に暴言吐いたろ」


「無意識でもないけど……」


「なお悪いぞ」


「いえ、褒めてるのよ」


 うそつけー。「非常識」が褒め言葉になるもんか。


「それで、級長。本当に、実現可能なのよね」


 みどりの問いに志夏が答える前に、


「何がだ」


 俺は訊いた。


「あのね、達矢が考えてくれた街を密閉するっていうの、何とか出来そうなんだって」


「そうっすか」


 いや、待て。


「……無理だろ。街一つ分密閉なんて」


 いくら狭い街だからと言っても、山岳地帯を除いた面積はかなりある。南北に十二キロ、東西に五キロはあるぞ。それを街に風が吹かないように密閉なんて、方法がわからねえよ。


「そりゃあ、個人でやるのは無理だけどね、街の住人は三千人以上いるのよ。学校の生徒を含めればもっと多いわ。その住人を総動員できれば、可能」


 それこそ非現実的だろうが。


 三千人を総動員するのがまず難しい。


 そもそも、三千人で何ができるんだ。計算できないのか、この女。


「なんか達矢、失礼なこと考えてる顔ね」とみどり。


「そうね。むかつくわ」と志夏。


 何だか、顔色から心を読まれて勝手にむかつかれたぞ。


「とにかく……実現させる方向でいこうよ」


 とみどりが言って、志夏がそれに答えて、


「ええ、わかったわ。詳しくは、また後で」


 頷いていた。


「うん」


 そして、二人は俺を置いて、それぞれ教室を出て行った。みどりは教室後部の扉から、志夏は教室前部の扉から。


 一人残された俺は、まつりが風間史紘を攻撃している光景をただボンヤリと眺めていた。


 ていうか、自習とはいえ、今授業中じゃないっけ?




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