おれと、ばかと、おたくと、さんだいびじょ。
まさか相席の人の中に八神先輩が居るとは……。
俺はそう心中で呟いた。
「お、八神先輩、昨日ぶりじゃん」
「……こんにちは。久遠君」
「相席オーケーって聞いたけど、本当に良いの?俺ら、結構うるさいよ?」
「……構わないわ。じゃないと久遠君、食べれないんでしょう?」
「まぁ、そうなるけど……」
「なら食べましょう。それとも久遠君、私と食べるのは……嫌?」
「嫌な訳ないじゃん。じゃあお言葉に甘えようか。おい、蓮司、柊、あんま騒がしくすんなよ、特に蓮司。」
そう声をかけて二人を見やると、唖然としている蓮司が。
八神先輩の隣に居る二人も、何故か驚いた表情をしている。
「奏がアタシたち以外とこんなに喋るなんて……」
「ビックリです……」
何か言っているような気がするが、聞き取れなかった。
すると、ようやく蓮司が口を開く。
「おい……真司てめぇ……いつの間に八神さんとお近づきになりやがった……?」
「ん?蓮司知ってるのか?」
知り合いかと思い、八神先輩を見ると、無表情のまま首を振っている。
「当然知ってるに決まってんだろぉぉぉ!!!!!我が静蘭高校の三大美女!!!
ボーイッシュな外見と姉御肌、気の強い性格から、男、女の両方から絶大な人気がある、冴島 涼風!!!!」
急にテンション上がりすぎだろ、蓮司……。
蓮司の叫びはまだまだ続く。
「そして小学生と見間違えんばかりのロリータフェイスとロリータボディ!!
一部のロリでコンな男子からの評判はもはや神!!!!静蘭高校、《妹にしたいランキング》ぶっちぎりのNo.1!!!!
水無月 瑠奈!!!!!!」
……いい加減このテンションうざくなってきたんだが。
「そしてそしてそしてぇぇええ!!!完璧な美貌を持ち、頭脳も冴え渡る正に完璧超人!!!
更にピアノの腕はプロ顔負けの代物!!!基本無口で無表情!だがそこがイイ!!!!
八神 奏様だぁぁあああぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!」
なんで様付け?
「振られた男は数知れず!襲おうとして冴島先輩によって星になった男は数知れず!ちなみに俺も振られました!!」
お前もか。てか手が早いな。まだ学校始まって三日目だからな?
「盗撮した顔写真は裏では高値で取引されるほど!大変儲けさせていただいてます!!!」
売ってるのお前かよ。
「冴島先輩に踏まれたい!や、瑠奈ちゃんに罵倒されたい!、奏様に蔑んだ視線を向けられたい!!など、
コアなファンもついてます!!気持ちは良く分かる!!」
分かっちゃうのかよ。コアなファンってドМばっかじゃねぇか。
「そんな三大美女の一人と知り合いなんだぞ!!三大美女とお近づきになれるなら、
静蘭の十割の生徒が魂売るわ!!あと九割の教師も!残りの一割はゲイだ!」
つまり全校生徒なのな。教師まで腐ってるのか。あと一割の教師は学校辞めようか。
「まぁ、凄さは分かったんだが……蓮司?
その……お前の後ろに修羅が見えるんだが?」
大体、蓮司が冴島先輩の紹介を終えた辺りからだろうか。
座っていた冴島先輩が立ち上がり、ゆっくりと蓮司の背後に移動した。
普通なら気付くが、熱弁している蓮司は気付かない。
そして今、溜め込んでいた怒りが解放される……蓮司に合掌。
「あん?俺の後ろに何がぁ……………………さ、さ、冴島先輩ぃぃいぃい!!??!!??」
「……(にこっ」
わぁ、綺麗な微笑みー。
でも恐怖しか感じれないのは何故だろう?
……ドガッ!!バキッ!!メキメキッ!!!!ボグメリボギュッ!!!……ポキ。
あ、折れた。
蓮司は過去の男たちと同様、星になった。
「……さ、飯食おうか」
「……うん、そうしようか」
俺が無かったことにしようとすると、
流石柊、上手く合わせてくれた。
アイツのことだ、どうせすぐ復活するだろうが、
せめて今だけは忘れさせてもらおう。
俺と柊は自分たちの飯を持ってきて席に着いた。
蓮司?ダレソレ?
「久遠 真司といいます。先輩方、よろしくどーぞー」
「九条 柊です。三次元に興味はないので先輩方に害は与えません」
柊、その自己紹介はどーよ……?
「アタシは冴島 涼風。あの変態男のツレってことは、あんたらも……?」
「「アイツとだけは一緒にしないでくださいお願いします」」
「あ、あぁ……ごめんよ」
アイツと同類扱いされるのだけは耐えられん。
「ボクは水無月 瑠奈です。よろしくです、クソムシ野郎共」
……え?
気のせいだろうか、今華やかな笑顔と共に随分と汚い言葉が……。
……気のせいだな、うん。
「よ、よろしく、冴島先輩、水無月先輩」
「よろしく頼むよ」
「喋らないで良いですよ、酸素が勿体ないですから」
……気のせいであって欲しかった!
今思いっきり遠回しに死ねって言われたよ……。
「あはは、ごめんよ、この子はちょっと男に毒舌でね、悪気はないんだよ」
悪気がなかったら余計にタチ悪いわ……
「まぁ良いか……。さて、そろそろ復活する頃か?」
「そうだね。手酷くやられてたけど、もうそろそろでしょ」
アイツの生命力が俺は怖いよ……
「え、あんたら何を言ってるんだい!?結構力入れてボコッたんだよ!?
そんな早く復活するはずが……」
「分かってませんねぇ、冴島先輩。アイツという人間を分かっちゃいない。」
俺は言う。アイツの唯一無二の長所を。
「アイツの生命力は……ゴキブリを軽く超えます」
言った瞬間、俺の後方で叫び声が。
眠れる獅子が、目を覚ました。