楽に稼ぐ、はずだった
高千穂大学商学部、ゼミ室。
蒼の研究テーマは「楽にお金を稼ぐ方」。
ゼミ生10人中、蒼だけが「ダメ野郎」ポジションを確定していた。
教授・田中が黒板に書く。
「今日の課題。皆さんの『一発逆転アイデア』を発表せよ。」
順番が回ってくる。
隣の優等生が「NFT投資」とか言い、周りが感心する中、蒼の番。
ワカメを頭に貼り、七三を整え、立ち上がる。
「ぼくのアイデアは…ゲーセンのコインRMTです。」
ゼミ室が静まる。
教授が目を細める。
「ほう、具体的には?」
「コインを大量に貯めて、現金化。リスク低めで、毎日コツコツ。」
蒼は得意げに説明した。秘密の副業を、ゼミで堂々と語る日が来るとは。
「なるほど。」
教授が頷く。
「鈴木君の『実践経験』は参考になるな。…ところで、その頭のワカメは?」
蒼の指が反射的に生え際へ。
「これは…投資の象徴です。三陸産で、将来価値ありそうで。」
ゼミ生が吹き出す。
教授は笑いつつ、続ける。
「君には別の意味で期待してるよ。のぞき趣味の『市場分析』とか、聞かせてくれ。」
噂が本当だった。
蒼は顔を赤らめ、慌てて座る。
その拍子に、ワカメがぺろんと剥がれた。
床に落ちる海藻。
ゼミ室が爆笑に包まれる。
「…すみません。」
蒼は拾おうと屈む。
教授がため息混じりに言う。
「これが君のリスクとリターンだな。発表おつかれ。」
ゼミ後、蒼はトイレでワカメを貼り直す。
鏡のM字を見て、思う。
「楽に稼ぐ方…まだ、研究途中ってことか。」
帰り道、銀行アプリを確認。
残高見て、募金サイトを開く指が止まらない。
今日も、いい人になるか、金を失うか。
いつもの選択だ。




