生存確認
『死を自覚したとき。人は、何かを残したいと考える』
『何か言い残すことはあるか』
『……俺は、生きるのに向いてなかった』
パンッ
乾いた破裂音が響いた。
『終わった』
スマホで連絡を入れる。
『ご苦労。また連絡を送る、それまで待機だ』
それだけ言って、電話は切られた。
いつも通り。
『……もういいぞ』
『…なんで。なんで俺を生かした』
困惑と恐怖。あと怒り。
そんな感情が読み取れた。
『俺が任されたのは、お前を殺すこと』
なるべく無感情に答える。
『じゃあ…!』
『…お前、すでに死んでるようなもんだろ』
『はぁ?なに言ってんだ』
『誰の恨みを買ったのか知らないが。
…いや、自分で自分に依頼でもしたのかな』
『…!』
『ワクワクがなくなったら。人は死ぬ。
勝手に勘違いして、自分が特別だと思わないようになると。人は死ぬ。
お前は今、死んでいる』
『なに言って…!』
ソイツの頭を鷲掴みにした。
『い゛』
『開き直れ。拗らせろ。悪化させろ。お前は特別だ。理屈はいらない。未知を探せ。暴走しろ。笑え。自らの可能性に震えろ。全力になれる自分を肯定しろ。安定は長期的な自殺だ。心から自分を信じろ。言い訳しまくれ。出来ると言いきれ。
やり続けろ。ただ、自分だけを見ろ』
『お前はまだ殺される資格がない』
『次があるなら、そのときは殺してやる』
手を離した。
『…なんだよそれっ。俺はもうっ、疲れたんだよ』
床に向かって、泣き出した。
拳を強く握って、床に押し付けている。
…少なくとも、お前を思ってくれてるやつがいるってのに。
『何をやっても失敗ばっ…』
その言葉を遮るように、ソイツの口を手で覆った。
『おい。話聞いてねぇのか』
『理屈は要らねぇんだ。…失敗?勝手に自分の中で正当化して、言い訳して、成功に変えりゃいい。
言ったろ?自分だけを見ろ』
口を覆った、手を外す。
『そんな簡単に行きゃ、こんなことしてねぇよ!』
『簡単?お前には少なくとも、クソ怪しいところに電話して、自らを殺すように依頼する行動力と度胸があるじゃねぇか。おい、これのどこが簡単なんだ?』
『……』
沈黙。
『はぁ…もういいか?俺は帰るぞ』
背を向けて、歩き出そうとした。
『待てよ!』
『んだよ』
『俺……じゃあ、どうすりゃいいんだよ』
『知らねぇよ。俺はお前じゃねぇ』
『んだよそれ!無責任だろ!』
『ははっ。それでいいんじゃないか?』
歩き出した。
『おい!』
言葉がいくつか投げられたが、立ち止まることはなかった。
『シャチョー』
『…なにか問題か?』
『あー、もう終わったんでいいっすよ』
『そうなの?』
『はい。…今回、難しい注文でしたね』
『依頼人の意向なの。意図はしーらない』
『ところで。今回の人はどうだった?依頼した人は、かなり心配してたみたいなんだけど』
『どう…ですか。そうですね』
『頑張ってるな、と思いました』
信じたいものを信じること。悪いことじゃないよね。
じゃなきゃ、理想は語れない。
すっごい関係ないけど、相手の言っていることを勝手に極大化して、その勝手に太らせた極論に反論するおバカさんが最近増えてますね、ほんと。
こんな物語を最後まで読んだ人は、やんないと思うけどね。




