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高校2年の松坂郁人は放課後、校舎の屋上から夕日を見つめていた。
1年前に事故で亡くなった同級生でもあった恋人の井上美音と、この時間、よくここに来た。
赤い夕日の光を浴びていると、今でも彼女がすぐ傍に居るような錯覚がする。
涙が自然と溢れてきた。
その時。
背後の気配に、郁人は振り返った。
「美音!」
そこに美音が居た。
体操着の上着と、両太ももが剥き出しの奇妙な短パンを穿いている。
その紺色のパンツに、郁人は強烈な違和感を覚えた。
「君は…君は美音じゃないのか?」
「なぜ、私が別の世界線から来たことが分かったのですか?」
彼女は不思議そうに、そう言った…。
「それだよ」
郁人が美音の穿いているものを差す。
「そんなの…初めて見た」
「この世界にはブルマが無いのですか!?」
彼女が驚く。
「ブブ、ブルマ!?」
郁人も眼を丸くした。
「それ、ブルマっていうの?」
じっと見つめる。
何故だか、とてもドキドキした。
「はい。私の世界では、ブルマを穿くのは当たり前です」
美音が頷く。
「君は別の世界から来たんだね。どうして?」
「実は…」
彼女は理由を話し始めた。
ブルマ美音も1年前に、恋人を亡くしていた。
名前は郁人。
(そうか…僕たちは、お互い…)
違う世界の自分が亡くなっているのは、妙な気持ちだ。




