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EP08 Delight&Training(喜悦と修練)

温泉にきました…♪

三人はそれぞれ旅の疲れを流しに中へと向かった。

洗い終えて開口一番寛世(ヒロセ)が喜びを(あらわ)した。


「わ~♪ やっぱりお湯がおハダに気持ちいい~♪ ねぇヒメちゃん♪」


「左様でございますわ…。疲れしケゥエ(身体)トゥサレ(癒す)されて行く様でございますわ…♪」


「ねぇ~♡ ん~しっかしいいなァ~! ヒメちゃんのおハダ…もぉのすごぉく柔らかくってすべすべで真っ白で透き通るみた…あ、あれれ~! ホ、ホントに透き通って…る?」


「…ワラワのこのケゥエは…実は寛世さまと違い…造られしモノなのでございます…」


「えぇ? つ、造りモノ…? でもでもさわってもあったかいし…ホラ♪ ここだぁってこぉんなに柔らかいよ~?」


「あっ…そ、そこはそのあたりでおやめを…♪ エ、エカンナイ(いにしえ)の業で造られしモノ故…熱もあり…もちろんトゥム(氣力)も通わす事叶うのでございます…」


「え~? すっごぉく手触り良かったよ~♪ ほ~んと、そ~なんだね…。 あ! でもでもこのおかげで…ずぅっとながぁい間…生きてこれたんだね♪ あのあの…ヒメちゃんって…今何歳なの~?」


「…あの(トキ)…あの時代より数えまして…千と九百程は季節廻りしかと…」


「どっひゃぁ~! ものすっごぉいオネ~さんだったんだね!」


「アノ刻を超え…ワラワをはじめ幾名かのみ…今も生を紡いでおります…」


「えぇ! ほかにも…! それとアノ刻って…?」


「…このモシリとワラワ達が今住まうリクン=カント(天地の狭間)より上のモシリ(世界)が別たれし…ドゥルアンキ=エウコホ(天地ノムスヒ別レシ日)ピの事でございます…」


「あの世界…それでもってその上の世界…! それでその日から…そこと今のひろせちゃんたちのココ、この世界って…離れちゃっているの…?」


「…左様でございます…故に…特殊な業用いねばチカラ揮う事叶いませぬ…」


「なぁるほどね~♪ あ、じゃぁその別れちゃったセカイたち…元にくっつけちゃえばいいのかな?」


「叶うならばまさにそれが理想的かと…ですがこの別れし刻の間に二つのモシリ間におきた乖離(かいり)は激しく…果たして試みてもうまくつながるかは…正直解りませぬ…」


「う~ん…! そぉっかぁ…。…! じゃぁまず出来るコトしよっと♪ ヒメちゃんお背中流しまぁす♪」


どうやら寛世は瞬時に相当な思考を(めぐ)らせた様である。

そして結論は出しかねるとのヲモヒに至りヒメの背中を流し始めた様である。


「ど、どうか…、背中だけでご容赦くださいませ…♪ 」


身悶えしながら満更でも無さそうであるがヒメはそう言って困った風にしていた。


「ちょぉっとイキオイ余って全部しちゃうとこでしたぁ~♪」


少しだけいたずらっぽく舌を出しながら寛世はそう応えた。


「…決して嫌な訳ではございませぬが…その、斯様(かよう)な刺激に不慣れなモノで…」


「…そっかぁ…そ~なんだね…♪ じゃぁ上がったら安心して気持ち良くなるコトしてあげるね♪」


(…なんか微かに女子のたのしそーな声が聞こえるけど…ウチの面々…か…?)


(ホムラ)は男湯の方でのんびり浸かりながらそうヲモヒ廻らせていた…。

上がってみると二人はまだ出てこない。


「ま、それなら仕方ないよな…先に牛乳ソフト食べておくか…♪」


そう言いながら嬉しそうにいそいそとカウンターに買い求めに行く。


「…バニラの他にきちんと牛乳ソフトがあるのか…!」


案の定その味は格別なモノであった。


「くぁ~♪ 最高♪ しっかし北海道の牛乳使っているからか、コクがすごいのに後味はホントすっきりだよな♪」


この焔の言は正しく、実は乳牛は寒い程高脂肪で甘みの強い乳を出すのである。

加えて北海道の冷涼で清涼な空気と水が、すべての食物の味に透明感を醸し出していると思われる。

バニラとの違いも堪能した後、ゆっくりとアイスオレ飲んでいると(ようや)く二人が出てきた。


「ごっめぇ~ん! 待ったぁほむらぁ?」


「ん? あぁ、でもその間にバッチリ堪能させてもらったから全くもって問題ないぜ♪」


「やっぱやっぱおいし~のね♡ じゃぁひろせちゃんも~♪」


「…ワラワも何やらのどが渇きましたゆえ一つ願いとうございます…」


「あ、それはきっと施術によるモノだからフツ~の水分もしっかりとってね~♪」


「…あぁ、それで遅かったのか♪ で、どうだいヒメさん? ひろの施術?」


「…斯様に手の込みしイテㇺンパテンパ(手技療法)は初めてでございました…♪ このケゥエであっても何らかのトゥサレが為された様でございます…!」


「そうだろうな♪ 何せオヤジ直伝の業を俺が仕込んだからな♪」


「まぁだまだほむらやおと~さんにはかなわないけどね♪」


「…でもコイツの…“掌”良かったでしょヒメさん?」


「…えぇとても…本人無自覚ながらヌプル(霊力)()められておりました故…♪」


「あら♪ そ~だったのね♪ 知らなかったわ♪ ひろせちゃんもナカナカやるもんだね~♪」


(…確かにそうだよな…ヒメさんの話だとこっちじゃ…八卦? が出来ないとチカラ引き出せないって言ってたよな…? そこも…狙われる原因か…?)


「…だな! オレなんかせいぜい観るしか出来ないのに…な!」


「…ヌプル=インカラ(観の眼)は基本でありとても重要な技でございます。これにおいてはどうやら焔さまの方が寛世さまより一枚上手と見受けられます…」


「そうだったな…治療でもそこは特に重要だもんな…アレが()いているモノに対してはなおさらな…!」


実際の臨床においても、視診は触診や問診と共にとても重要である。

古来より東洋医学でも望診(ぼうしん)(視診)、聞診(ぶんしん)(聴覚と嗅覚による診断)、問診(もんしん)(事情聴取)、切診(せっしん)(脈と腹部の触診)により総合的に判断が為されていたが、現在の様に画像診断が発達した今もなお…いや発達してしまったからこそ、画像のみに診断が偏重(へんちょう)してしまい見落とす事を()念して本来のあり方へ立ち返るべきである。

焔の場合は画像は参考程度にとどめ、問診中に霊力(ヌプル)を使用し観の眼(ヌプル=インカラ)を発動させる事によって通常()えざる(ところ)まで見抜き、その上で触診する刻にも同様に観て得た情報を解剖学等の医学と照合させる事より症状の原因を見抜いた上で治療している。これだけでも十分に達人と言える治療家だが、その上で父よりすべての症状を治す整体術を伝授され臨床に望む為、実際の臨床経験年数を大きく超えた結果を出す施術が可能となっている。


(…良くも悪くも…“観える”おかげで経験浅くっても治せちゃうもんな…!)


「…そこも含めて今のオレの仕事は天職なのかも…な!」


そう言いながらアイスオレを飲み干す。


「さぁ、二人のデザートが終わったら帰ろうか…?」


焔は喜びと驚きと感動の表情を見せながらソフトを頬張る二人を観て微笑ましヲモヒ抱きながらそう言った。

還ってきて本堂横の部屋の中にて…。


(…寛世はまぁわかるが…ヒメさんまで…コッチに転がって来るなんて…! これは素直に両手に華を喜ぶべきか…それとも生殺しなのを恨むべきか悩み処…っていうか苦しすぎる! コイツはもう寝るに限るぜ…!)


両腕の重みに複雑なヲモヒで少々苦しむモノもいたが平和な夜が過ぎていく…。

観念していつもの様に独りのつもりで夢路へと旅立った。

両脇の存在により眠りにくくはあったが…不思議と例のあの夢を観る事無く朝を迎える事が出来た。目覚め方はなかなかに激しいモノではあったが…。


(…! な、なんだこの爆音! …た、太鼓か! ハッ!)


さして力を籠めている様子でも無いのに身体の奥底まで揺さぶられる大音量…いや、何らかの強さを秘めた音であった。


(オヤジが言ってたっけ…行積みしモノ叩きし太鼓は魔を(はら)うモノなり…これはまさにってヤツだな!)


肝要とされる経が太鼓と共に朗々とあげられていく。

しどろもどろながらも焔達も必死でついていこうと経文を目で追いかける。


(…こ、こんな(はや)さとチカラ強さであげりゃ…そりゃ()も吹き飛ぶよな!)


実際、観るモノが観ると…浄化された上で天へと(かえ)っていく様々なモノ達や、世に蔓延(はびこ)悪想念(ウェンイレンカ)の塊が吹き飛ぶ様に霧散するさまを観じられるであろう。


「…スゴイな! 結界の周りに寄ってきているモノ達や、気づかずオレ等についていたゴミの様な想念が、祓われるだけじゃなくきっちり浄化されて還っていってしまったぜ!」


「その通りでございます。シンノ=キロル(真なるチカラ)は悪しきモノをただ祓うに(あら)ず、どうやら経力(きょうりき)を以て浄化させ天へと還すモノと思われます…」


「…アレか、ヒメさんと一緒にアノ刻にやった…」


「同様のモノと観じます。しかも経を唱えるのみでその場で即座に成されていると観えます…!」


「チカラ(ふる)い難いこのセカイでか…! コイツは…きちんと身に着ければあのセカイでのチカラを発揮できるってワケだな!」


その後下へ降り、玄関、手洗い、流しと祓い行堂と呼ばれし処にて経を上げ、最後に納骨堂にての供養を終えるとはじめてお上人が挨拶を口にする。


「皆さまおはようございます」


幾日かこの様な生活を繰り返したある日、いつもと違い裏庭に集まるように言われた。


「…今日はカラダの稽古をいたしましょう。私はもうそちらは隠居しておりますので…別の方にご指導していただきます。ここで少しお待ちください」


住職はそう言うと本堂へ戻っていった。


「…今日はいわゆる修業的なアレ…か? 望む処だぜ…!」


「ひろせちゃんもがんばるゾ~! お~!」


「ヒメさんはこっちでもあのチカラ出せるんなら必要ないんじゃないか?」


「ワラワも此方にてチカラ揮えるのはごく僅かな刻のみ故、自在とならんと欲し行を望みます…」


全く使えない自分よりもはるかに良いんじゃないのかとのヲモヒ(いだ)きながら待っていた。


「…! おいでなすった様だぜ…! 凄まじい氣力(トゥム)…!」


今の彼らにも明確に観じる程の尋常ならざる氣力(トゥム)を前に冷たい汗を流しながら焔は身構える。

緩やかな足音と共に顕われたのは…


(な! このガタイはちょっと反則だろ…? 通常の人類のキカクを思いっきり超えてやがる…!)


一般的に長身の部類の焔が真上近くに見上げる程の長身…いや巨躯であった。


(…下垂体成長ホルモン分泌亢進症でコノ位の高身長のヒトならいたが…こんな均整がとれて彫刻の様な筋肉の持ち主は初めて観るな…)


「すっごいねぇ♪ シュメール神話のアヌンナキみたい♪」


寛世も感心して彫像でも眺めるかの様に周囲を歩き回りながら応えた。


「寛世さま流石でございます…。ウェンルイ=モシリ=(苛烈なる世)ヤㇲケ=シルトゥ(界の裂動)以前のモノは須らく…まさにこのお方の様なケゥエであったと伝え聞いております…」


「そ~なのね、スッゴイ♪ あれれそ~言えばお上人さんは~?」


「…住職殿は錬の無事を祈願成されておる…。此度…武とケゥエ=エイキ(身体操作)、そしてトゥム(氣力)の扱いについて住職殿より指導を承りし上伽耶(ウガヤ)と申す。まずは今出来し事観せて頂くとしよう…!」


そう言って上伽耶は自然体に構え立つ。


「…では上伽耶さん…初めまして焔です。お言葉に甘えて全力で行きます…!はぁ!」


焔は軸足を大きく振り出して跳びこむ様に踏み込んで発生した重心力を、体幹の回旋で加速させ反対側の拳に伝え直線的に打ち出して上伽耶の腹部めがけ打撃を放った!


「うむ、体が入っているである。次打を、続けられよ…!」


言われた直後そのまま反対の足で踏み込み拳を開き掌底に構え密着させた状態から全力で放った!


ケゥエ=チ=コトゥイ(通氣発勁)エであるな…中々に良き! 粗方解り申した。ストゥ(大元)となるケゥエ=エイキは出来ている故、技の打ち出し方に重きを置いて錬致そう。まずは我がケゥエ=エイキ…観られよ」


上伽耶はそう言うとゆっくりと手を挙げてから両拳を手背を前方に向けて合わせ…勢い良く打ち出す。そのまま上体を捻りながら後方に絞り激しく前方に踏み込んで肘撃を放つ…!流れる様でいて重量物が落下するかの如き踏み込み、その重さが存分に伝わりきり破竹の勢いで飛び出す様に打ち出される拳…驚くべきはそれらの所作に全く力みを観じない事である。


「…コ、コイツはオヤジと同じ…! しかもこの体格でこの滑らかさ…凄まじいな…!」


「本日は折り返す手前まで、明日は今日の続きを致そう」


寛世も治療術をある程度修めているせいか、それなりに重心力を用いた動きが出来、ヒメに至っては…。


「…ちょっと…ヒメさん…めちゃめちゃ腰入った動き出来ているじゃん! 下手したらオレより威力あるんじゃ…?」


「…トゥム(まと)いしならば左様かと。しかし現状は…焔さまに比べケゥエの重さ足りぬ分が打に顕われしかと観じます…」


「まさしく。重さ足りぬとはいえケゥエ=エイキ(身体操作)にはヒメ殿に一日の長ありと観える。焔殿、寛世殿はまず出来得る限りケゥエを大きく伸ばして動かれよ。先に開展を求め後に緊湊に至る…である!」


「そ、それってオヤジも言ってた…! 確かまず威力をキチンと出せる様になって…そのあと実戦で当てやすいように強さを落とさず動きを小さくしていく…であってますかね?」


上伽耶はおそらく微笑みながら頷いて応えた。


「左様である…! そこまで理解が至っているならば己がモノとなるのも早かろう。励まれよ…!」


何度か繰り返した後…当然であろうが寛世がまず音を上げた。


「ふにゃ~ひろせちゃん…も、もうダメ~!」


そう言いながらその場に崩れる様に座り込んでしまった…。


「…はじめてにしては十分錬出来たと言える。休まれるが良い」


そう言われて寛世は木陰の大きめな石に腰を下ろした。


「あ~♪ ちょっとひんやりしてて気持ちイイ~♪」


朝用意した麦茶を飲みながら寛世はそう言った。


「…な、なんか…少しつかめてきた…かも…!」


そう言いながら打ち出した焔の拳は…まさに破竹の勢いでうなりをあげて突き出されていた…!


「うむ、素晴らしき! 本日はここまでと致そう…皆よく頑張られしと我は観じたである…! 然らば我はこれにて…!」


そこまで言うと上伽耶は建物の中へと入っていった…。

暫くして住職が出てきた。


「無事に錬を終わられた様ですね…。本日は私の方も通常のお勤めのみに致しましょう」


そう言って住職は本堂へと向かっていった。


「…アノ上伽耶さんも…このナカのドコかにいたの…か?」


「ど~なんだろ~ね~? ゼンッゼン気配無かったよね…?」


「…その辺りは左程気になさらなくても良いかと思います…。本日は慣れぬ事された故、(しか)と休まれた方が良いかと思われます…」


「そ~なんだね♪ あ、じゃ~また温泉行こ♪ ねぇほむら♪」


「ん? あ、ああ…そうだな…! コッチはホント良い温泉多いからな~♪ どれどれ…っと…お! ここは夜までやってるな~♪ で、地ビールと…ソフトもある…か♪ っと、それから行く手前に質の良い鮭の加工品が売りの工場兼店もあるな…よし♪ お勤めの後行ってみるか♪」


三人は夕方の勤行の後石狩方面へと天之鳥船(カンナ=テックプチプ)を走らせた。

終わったらまた温泉…いいですね♪


用語説明

・トゥサレ(癒す):(病気やケガを)治す より。

・ドゥルアンキ=エウコホピ(天地ノムスヒ別レシ日):天と地の結び目+両側に別れる より。

・イテㇺンパテンパ(手技療法):もみ療治する より。

・ヌプル=インカラ(観の眼):霊力+見る 見える より。

・ウェンイレンカ(悪想念):悪い+ヲモヒ より。

・シンノ=キロル(真なるチカラ):真実の+チカラ(トゥムよりも大きなものを指す)より。

・下垂体成長ホルモン分泌亢進症:一般的に「巨人症」と言われてる病態この場合は指している。

この場合、上伽耶の様に均整の取れた筋肉質な体型は稀である。

・ケゥエ=エイキ(身体操作):身体+使う (ある最中に)振る舞いをする より。

・ケゥエ=チ=コトゥイエ(通氣発勁):身体+私の+自分の意思を通す より。

・カンナ=テックプチプ(天之鳥船):天の+鳥の翼+舟 丸木舟 船 より。


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