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EP03 Fun lunch & Mysterious patient(楽しいお昼と不思議な患者)

行きつけのお店でお昼する二人です。

二人はバギー(型トライク)を走らせ駅前の通りへ向かう。以前ドラマにも使用されたと言うギリシャをイメージした街並みにする事により復興した通り…商店街である。

その中に昔(ホムラ)の祖母が務めていた店が復刻・再開され、彼らの行きつけとなっている。

数年前の物価高騰以来、この辺りで千円切るランチは珍しい。

しかも当時のメニュー同様お替り自由なのである。


「このねだんでこの味でライスもお替りできちゃうなんて…ホント他にないよね~♡」


看板メニューの一つのオムライスを頬張りながら寛世(ヒロセ)は言う。


「ああ確かにな。味もばーちゃんのお墨付き、当時のまんまらしいからな♪」


焔はしょうが焼き定食を頼んで二杯目のライスを食べている。


「元々母体が本格レストランだったからかどのメニューもそのクオリティなんだよな…♪」


「ほむらにそれ聴いて食べてほ~んと納得♪」


(…おまけにばーちゃんの事未だに覚えてくれてるスタッフさんがいて、いつもなんのかんのオマケしてくれるんだよな…皆イイヒトだし…これで姿形がフツーだったらな…)


この時代それは()む無しかと焔は考えるのをやめた。


「…処理が追っつかないのかもな…」


「うん? なぁんの?」


「ん? あ、口に出てたか…。いや、あちらの世界の、さ」


「…イキナリいっぱいのヒト、亡くなっちゃったから?」


「…かな~? まぁオレはそっち専門じゃないからわからないけどな」


「せんもんじゃないのに…ほぉっておけないのがほむらだもんね♪」


「…オヤジに知れたらこっぴどく怒られそうだけどな…」


「助かったヒトがいるんだからまずほめるべきよね! 大変なヲモヒしてがんばってるんだし!」


苦笑して髪をかき上げながら焔は言う。


「…大変なのは…オレがきちんと術を修めていないからさ。ホントは…北海道へオヤジの転勤についていった先でどーやら修行で来たらしいんだけどさ…あの(トキ)はどうしてもそっちの道には進めなかったからな…」


「そーだったよね…!ほむら元々デザイナーさんだったもんね♪ なんだったけ? ガッコ卒業後出張で久々コッチ来たトキに…」


「ああ。…ずっと画面とニラメッコのせいで…頭痛や目の奥の痛みに悩まされていて…ふとした拍子に入った治療院で施術を受けて…オヤジの仕事の良さがわかったんだよなあの刻に…」


「それでそのまんま働きながらガッコ行こうと決めたら…オヤジが学校の後毎日の様にオレに治療術仕込みに来てくれて…」


「そのお話もいつ聞いてもフシギよね…おとーさま北海道でお仕事されていたんでしょ?」


「ああ。最初の二週間は本当にこっちに滞在していたらしい。初めの14日がとても重要だと言っていた…。そして…その後も確かほぼ毎日…? あの刻無我夢中でピンとこなかったが確かにオヤジどーやってたんだ…? あんな毎日ヒコーキ使ってるわけも無いだろうし…?」


寛世は半分冗談半分本気で良い事をひらめいたかの様な表情で言った。


「なぁんかあの名作のロボットの有名な扉型アイテムみたいなモノ持っていたのかしら♪」


そうこう話している内にデザートのアイスとこの店謹製(きんせい)のアイスオレ焔Ver.が出てきた。

店内で落としたコーヒーを特製の牛乳で割り、パフェ用のボウルグラスに並々と入っている。

これに添えられるようにきれいに盛り付けられたアイスがトリプルででてきた。


「いつもありがとうございます!」


「いいんだよ~いつものチーズとミルクとヨーグルトフレーバーにしておいたよ♪ ひろちゃんはチョコミントとメープルね♪」


「わぁ♡ いっつもありがとうございますっ♡ おいひ~♡」


(…しっかしばーちゃん…どんだけすごい働きっぷりだったんだろ? 孫ってだけでこのサービスって…)


「ほ~むらっ♪ はい、あ~ん♡」


見るとメープルをスプーンにすくって差し出している。


「あ、あぁ、ありがとう。じゃぁかわりにチーズを…」


「これもおいひ~♪ いつかぜ~んぶいっぺんにせ~はしたぁ~い♡」


(…そのオコサマ体格でそれは不可能だろうに…)


自称150㎝の寛世である。頑張ってもたかが知れているだろう。


「…まぁ…夢を持つのは良い事だよな、うん。」


「なぁによぉっホンキ出したらきっと食べれるもん!」


「はいはい。じゃぁいつか…な♪」


アイスオレを飲みながら頭を軽く撫でる。


「もぅ~いっつもコドモ扱いよね~ちょっとせぇたかいと思って~」


(…まぁこの国で185なら…フツーに生活できるぎりぎりの所だよな確かに…)


「アイジョー表現さ、気にするな♪」


笑いながら焔はそう言った。


「そっかぁ…アイジョーならいいわ♪ もっと…シテ♪」


やれやれと言った面持(おもも)ちで(しばら)く撫で続けた。

寛世は満足げに目を瞑って堪能している。


(…あれか…これでも出るんだなきっと…幸福と安らぎのホルモン…オキシトシン…)


焔は自分なりに理由と結論が出て納得して続けた…。


「さぁって…すっかり長居しちゃったけど…そろそろ帰るか!」


「そーね♪ ごちそ~さまでしたぁ♪」


「はーい! いつでもまた来てね二人とも♪」


皆から“カメさん”と呼ばれる店長は厨房から顔を出しにこやかに応えて手を振った。


「…しっかりつかまってろよ、ほいメット。」


「はーい。ほむらはヘルメット良いのぉ?」


「法的に問題ないし、一応受け身は得意だからな」


「そーか、ガッコでもあったよね、柔道♪」


「そーゆー事。身体動かすのあんまり好きでも得意でもないけど、受け身は褒められたんだよな」


話ながらセルを回す。今回も良い吹け上がりだ。


「…よし…いくか…!」


「ね~ね~、せっかくだから記念館~梅林通っていこーよー?」


「ああいいよ。じゃ…いくぜ…!」


目の前の通りに出て左手の坂を上っていく。しばらく登ると先の通りの元祖とも言うべき…世界的にも希少な古代ギリシャ以前のプレヘレニック様式をベースに東洋的意匠をも取り入れたと言われている建造物が(あらわ)れた。


(…昔は…“精神文化研究所”? だっけか? ネーミング的に子供の頃は…様々な憶測を妄想交じりに皆でしていたっけ…。アタマワルイやつはあそこに送られて改造手術されるとか…ははっ。大きくなって精神文化の名の通り…哲学、宗教、歴史について学び、古き良き日本の心を市民が持てるように貢献したと言う至極真っ当な施設だった事を知って…安心したような…がっかりしたような気持ちになったっけか…)


入り口前の広場になっている所の、皆の邪魔にならない端の方にバギーを停めてベンチに腰掛けた。

途中坂へ曲がる手前のカヌレが有名な菓子店で買ってきたスイーツを紙袋から取り出す。


「ほむら~女子みたいにスイーツ好きね♪」


「…確かにスキだけど…治療の後は特に欲しくなるんだよな…カロリー消費大きいからかな…?」


クッキーの詰め合わせから一枚取り出して頬張りながら焔はそう言った。


「脳って確か消費大きいもんね! 集中するからきっとすっごくエネルギー使うんだね♪」


ほうじ茶のカヌレを取り出して頬張りながら寛世も応える。


(…なんか日に日に消費が大きく、疲れの抜けが遅くなっている気がするけど…気のせい…だよな…)


三枚目のクッキーを頬張りながら焔は思った。


(…“心”と“医”のみ…“医”を超えるな…って言われても…目の前にそーゆー方が来て…どーにかできちゃったら…治療やっちゃうだろフツー…)


実は焔はここ三か月で15キロ程体重が落ちていた。

食欲は見ての通り十分にあり、食べているにもかかわらず、である。


(…アルコールとは縁ないからⅠ型(糖尿病)はありえないしな…念の為した検査もトーゼン正常だったしな…)


「あ~んおいひ~♡ これはまた気をつけないと太っちゃう~♡」


寛世が困るどころか幸せそうにそう言う。


「…そーいや…ヒロ…オマエも縦にも横にも大きくならないよな…ケッコー食べてるのにな♪」


「お手伝いもすっごくオナカ減るからきっと使ってるのよ♪」


その言葉を聞いて成程と焔は納得してしまった。


(…確かに…。寛世がくれるチカラなしにアレをやったら…。もう倒れているかもしれないよな…。)


「…いつもありがとうな…!」


そう言って焔は寛世の頭を撫でた。

 

「えへへ♪ もっともっと♪」 


(…子犬かコイツは…まぁ嬉しそうだし…良いか…)


リクエストに応え暫く撫でた後帰宅する事にした。


「よぉっし…そろそろ帰るか…!」


「はぁい♪ 今日も良い日だったねほむら♪」


「…あ、あぁ…そうだ…な!」


機嫌良く一発でキレイにエンジンがかかる。250ccのシングルハンマーでマフラーのヌケも良くしてある為、結構な音が響き渡る。バイクや車好きに言わせれば“イイ音”を出しているらしい。タイヤもオフロード仕様に変更してあり、砂利や段差もスムースにいなしてくれる。元々その様に完成され販売されている車種もあるが…焔は色々と修理したり改善する行為も含めて趣味な様である。


「うしろに乗っててもね~たのし~よ~このバギー♪」


寛世に言わせるとそうらしい。


(…バイクでもクルマでもなく…シバられていないカンジが気に入ってるんだよな…♪)


反対の坂を下り梅林の周りを走り隣の地元の町へ帰っていく。

このような日常を続けていたとある日…そのモノは来院してきた。


「…次の方どうぞ…こんにちは…いかがされま…!」


気配からてっきり例の()()()いている患者と思ったが…()え方は普通であった。ただし全身が黒ずんで観える。それ以外は身体のどこからか手足が生えていたㇼ本来は存在しない所に頭部が存在したりもしていない。が、この(くら)さは…不安と恐怖に駆られるモノがあった。


(…ここは…あえてフツーの治療をしておいた方が良さそうだな…こんな気配…はじめてだ…!)


焔は…見えざるモノを観る…“観の眼(カンノメ)”を意図的に閉じて一通りの治療を施した。


「…肩の重さは取れた気がします…まだ辛さを感じますので次の予約を取らせてください…」


「…では一週間後にまた来院して下さい…」


「はい。あ、あと…折り入ってご相談が…。お仕事の後お二人でここへ来てもらえないでしょうか…?」


「私達二人に…ですか…?」


「ええ…。それでは後程…」


そう言の葉を遺し女性は去っていった。


「…何だ? オレ達のしている事…知っていたㇼ…観じ取れたりしたのか…?」


「でも今はあえてしなかったよね? 誰かに聞いてきたのかな?」


「それとさ…ヒロも観た? アノヒトも…フツーの姿、していたよな?」


「そ~だったね♪ なのになぁんか少しだけ…コワいカンジしたね!」


やはり同様に観じていたらしい。


「…だよな。なんか色がさ…フツーと違って深く沈んだ黒だったよな?」


「え? そ~だった? ぜんぜん気にならなかったケド?」


(寛世は…色は…観えないのか…)


「あ、そうか、気のせいだったかな? まぁ、仕事の後…話だけでも聞きに行ってみるか…」


「そ~だね♪」


(まぁ、他のヒトと違いフツーの姿しているから…悪いモノや危険な事は…ないよな…)


仕事の後二人は教えられた店に行ってみることにした。

女性に教えられたところはさて…?

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