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EP01:Run away & Ride on !

登場人物紹介

物部モノノベ ホムラ

・身長:185㎝ 28歳 好きなモノ:スイーツ全般、インドア、トライク

神多=悠禅=寛世(カンダ=ユーゼン=ヒロセ)

・身長:148㎝ 26歳 好きなモノ:食べ物全般、お手伝い、焔


 …誰もいない何もない空間に独り逃げ惑う少年の姿が浮かび上がる。程無くその背後に巨大な異形のモノが顕れる。


「はぁっはぁっ! だ、だれかたすけてー!」


 子供の足で逃げ切れるような存在ではない。そして…どうやらこの空間には少年とその異形のモノしかいない故…叫びもむなしく少年は囚われた。


「あっあっ! い、いや~!」


 衣服を裂かれそのまま背後から襲われる寸前…突如空間がホワイトアウトして裂け目より別空間が()えてきた…。


「…! はぁっ…はぁっ…畜生…また…アノ(トキ)の夢か…!」


 夢にまで出てきて悩まされている事への苛立ちのヲモヒと夢であった安堵感のブリード(混合)なヲモヒで焔は目覚めた。


(…オレもう30近いのにこんな夢に…情けなくてイヤになる…)


 夢に苛まされている自分を軽く嫌悪しながら朝の準備をする。

 朝食はいつもパン。菓子パンなども好む。肉類も好んで食べるが嗜好品の類は一切無い。


(…このご時世に態々(ワザワザ)自分でカラダ悪くする人の気が知れないね…)


 彼の思うのはもっともであった。世は政府のでっち上げたウソの伝染病…“COVID-xx”とそれにまつわる偽のワクチンにより大変な事になっていた。この伝染病にかかわる製薬会社の利潤追求と、洗脳可能な国民の選別の為大々的に配布されたワクチン何て呼ぶのも烏滸(おこ)がましい“毒薬”によって人口は激減していた。

 それは絶対に当たりたくない“重篤な副作用”という名のくじ付きであった…。

 一等は“脳静脈血栓症”、24時間以内に死亡する病気である。前後賞は免疫の過剰反応によるアナフィラキシーショック死であり、参加賞が…ADE(抗体依存性感染増強)そして28日間この接種により自身の体内で生成されたキメラDNAを内包する細胞外小胞の一種“エクソソーム”をウィルス本体同様に周囲へシェディング(shedding)するモノであった…。

 これにより化学物質過敏症をはじめ、ワクチンに反対し摂取しなかった正しきモノ達が無意識・無自覚的に弾圧を強いられた。


(…ウチの人口を減らせってメイレイが彼の大国から出ているっていうのは…結果だけ見ると都市伝説じゃなかったな…)


 COVID-xxの恐怖のメッキが剥げ日常を取り戻しつつある頃…これが続発症の如く巻き起こり、同様に有名人まで未だ巻き込むワクチン後遺症と共に猛威を振るい、ここ数年で人口は七割になっていた…。


(…でも…あんまり…暮らしは変わっていない…。結局亡くなった三千万って…そう言う事なんだろうな…)


 政府のやり口ははっきり言って汚い。マスコミも“報道しない自由”を最大限使っていた。しかし…この情報化社会、その気になれば、そして“正しきは何か見極める”事さえ出来れば凡そ大抵の事の真実に手が届く。今回のCOVID-xxもまさにそうであり、勇気ある有識者が正しい情報を公開していたり、海外サイトに英語であるがきちんと論文形式で用品やワクチンについての客観的事実がエビデンスと共に論じられていた。


(…調べたらすぐわかるよなコレ。今は翻訳もすぐだし。…ようは…)


「ほ~む~ら~♪ おっしごっといっきまっしょ~♪」


 真剣な思考の全てを台無しにして置き去りにして行く様な…陽気で間延びした“常時心は快晴です♪”と言わんばかりの声の持ち主が…二階にいる(ホムラ)へ家の門前から話しかけてきていた…。


「…寛世(ヒロセ)か…やれやれ…。」


(…しかし…このセカイで…オヤジたち以外だと今んとこアイツだけなんだよな…オレがフツーに観えるヤツって…)


 彼…No.11220828…物部焔(モノノベ ホムラ)は…その様に思いながら窓から外を見やった。小柄だが小鹿のような均整の取れた身体つき、ゆるくウェーブのかかったショートボブ位の赤みがかった髪を中央やや右で分けてある。瞳は明るい茶色で中性的な幼さを観じる外見の…少女の様な女性がそこにいた。


「じゅんびまだぁ?それなら中で待ってるね♪」


 寛世は門を開け玄関から入ってきた。


(…準備…するか…な! しかしアイツはいつもながらヒトんちにずかずかと我が家の如く入ってくるな…)


 自室を出てバスルームでシャワーを浴びる。キッチンから何やら音が聞こえて来る。


(…これはいつもありがたいと思っているよ…)


 その音が何か解っている様に焔はそう思った。


(…30近くになってヒゲ剃る必要ないのも朝のんびりできる理由の一つだよな…)


 焔はこのクニのモノとしてはかなり高身長である。しかし体毛はとても薄く、今は肉付きもあまり良くない。良く言えば細身…ハッキリ言って華奢である。骨格は割としっかりしているので鍛えれば均整の取れた身体つきとなるであろうが…


(…わざわざ鍛える趣味はないからね…)


 元々ゲームのグラフィックデザイナーだった焔の趣味は当然インドア中心であった。電子機器と画材を扱う事には長けていたが…。


(唯一例外が…コレなんだよな…)


 二階から降りてきて廊下に隣接するガレージを見ながら焔はそう思った。そこには今となっては年代モノのATVベースのリバーストライクが格納されていた。


(…オークションで落札したジャンク扱いの車体を地道に修理して乗れるようにしたんだよな…オレの唯一のアウトドア的趣味だよな…)


 ATV…オール・テレイ(全地形)ン・ヴィークル(対応車)…ベースと言う通り、前方から見ると所謂四輪バギーの風体である。違うのは駆動する後輪がバイクのそれであり三輪自動車だと言う事。現在も我々と変わらず法的には軽自動車扱いらしい。


(車の免許で乗れるのと、メットいらないのが良いんだよな~♪ 後はまぁ手を離しても三輪のおかげで倒れないしな…道の狭いこの辺には一番いいマシンだと思うぜホント…)


 手間暇かけて修理したこともあり、焔にとってどうやらとても大切な存在の様である。


(コンコルド効果…ってほどお金はかけてないよな…あれか…手のかかる子ほどってヤツだよなきっと…♪)


「でっきったっよ~♪ さぁどうぞ♪ うふふっ♪」


 ダイニングテーブルにはスクランブルエッグとクロックムッシュが並べられていた。


「いつもサンキュ。持つべきモノは世話好きの幼馴染に限るよな♪」


「ありがとっ♪ でもぉ私の分もこの材料でつくっちゃってるからお互いさまよ♪ いっただきまぁ~す♪」


 そう言いながら寛世は一足先に食べ始めた。


「まぁそう言ってくれるとオレも気楽で助かる…いただきます」


「…いつもながらウマいな…♪」


「ほむらにそう言われるとうれしいから明日もつくるわ~うふふ♪」


 嬉しそうに笑みを浮かべながら寛世はそう言った。


(…しかしさっきのCOVID-xx…ワクチン禍…そして…今の所実害は無いが間違いなく今後メンドーの元となるナンバリングシステム…クニってのは…イヤ…クニの上に立つヤツってのは…皆にこーやってプレッシャーや制限かけないと…手の内を知らないと…安心できないのかね…? そうだとしたら…実はかわいそうなのかもなぁ…)


 数年前より施行されているこのシステムにより、国民のプライベートは主に経済面において筒抜けである。反対の声も多数上がったが、先の伝染病をばらまいた後、保険証もこのシステムに強引に統合を進め強行させた。


(…しかし想定内なのか予想に反してか…薬害テロというべき数の死者が出てクニの信用はさすがにガタ落ち、いくら従順な羊たるこのクニの国民もさすがにあからさまに不信感と不満を(あらわ)したんだよな…国営放送やクニに謝罪させたり…賠償金払わせたりで皆は留飲下げて落ち着いたけど…こんなの…掛け算と引き算出来りゃ解る数字のトリック…でも8割がたの国民がそれを鵜呑みにして騙されてしまう…敗戦後に敵国の将軍に国家の象徴がアドバイスするワケだよな…“このクニのモノは強く言えばいいなりだ”とな…)


「…むら…ほぉっむぅっらぁ~♪ そろそろ…いっきましょ~♪」


 つい考えこんでしまったが…今日は平日、出勤日であった。その声に我に返り焔はガレージに降りて愛車に火を入れた。


「今日もご機嫌だな…♪ よぉしっ…行くか…ヒロ、後ろ!」


「はぁ~い♪」


 寛世は焔の後方の座席部分にまたがりしっかり焔をつかむ。


「じゃ、行くぞ…!」


 力強い音を響かせながら焔はトライクを走らせた。

用語説明

・ADE:抗体依存性感染増強。免疫細胞の食作用のプロセスを「誑かし」、宿主の抗体を「トロイアの木馬」として使用する。免疫細胞内で増殖し、さらに強化改造されたウイルスの散布も行う。

・シェディング:mRNAワクチンの接種後に接種者の呼気や汗腺から何らかの毒素が放出され、それを吸い込むことで非接種者にも影響が及ぶとされる非科学的主張である。

※実際はADEによる強化改造されたウイルス本体がばらまかれている様である…。

・毒薬:半数致死量が体重1㎏あたり50mg以下のモノを言う。簡単に言えば…致死量と有効量が近く死亡を含む重篤な副作用が出やすいモノと言っても良いでしょう。

・ナンバリングシステム:国民全員に番号を割り振り、それに全ての情報を紐づけさせて行う管理システム。先の国民の反抗によりある程度周辺諸国よりは緩和化されている。

・トライク:法律上軽自動車扱いの三輪自動車。排気量50cc以上、上限制限なし。実は乗車定員も制限がない。(座席とみなされる場所は必要)登録時の届け出書類記載人数準拠。自動車の為ヘルメット着用義務はないが、安全の為推奨はされている。

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