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page7︰魔力訓練2

「あ、みっけた」


30分程した頃に、本郷が緩い声をあげた。

アルター少将がアドミッターを彼に渡すと、それは紫一色に染まり、同様に紫の光がほわと光った。

皆じっとその様子を見つめていたが、光り始めるとおおと感嘆の声を挙げた。

自身は全くできる気がしなかったのに本当に出来てしまった人を見て、若干驚く。


「成功したか、早かったな。君は闇属性か」

「え!?ねぇねぇどうやって見つけたの!?」

「いや、何となく。集中したらさっき書類にあった空気が流れてるーみたいなの感じて、それ追ってったら1番でっかい塊見つけた。これかーって分かったから」

「ホントに見つけられんだな…」

「君は先に執務室に戻っても良いが、どうする?」

「んー……どうせやる事ないし、ここにいよっかな。あ、います」

「分かった」



訓練に戻り15分程度経った頃、次は春琉が立った。


「お願いします」


春琉がアドミッターを握ると、それは金色に染まり金色に光った。


「光属性だな。君も訓練終了だ」

「どうやったんです?」

「うーん…説明が難しいのだけれどね、私の場合は感じるのではなく動かそうとしてみたんだ。勘だけど、そっちの方が合っている気がしたからね」

「成程、そういうやり方もあるんだね」




更にその20分後、柏御が立った。


「俺も見つけた。お願いします」


柏御のアドミッターは黄と青に染まり、黄に光った。


「これは…光属性に似ているが、雷だな。もう1つは水だ。半々に染まるとは珍しい」

「雷か…これはどの属性からの派生何ですか?」

「地の派生だ」

「でで、どうやって感知したの?」

「ああ、でも俺の場合は多分参考にならないぞ。俺は元々耳が良いから、体内の音を聞き取って普通じゃない音を探ったんだ」

「なるほどね、確かに真似は出来なさそう。けど自分の得意なもので探すってのは良いかもね」




その10分後に尾瀬が立った。


「俺もお願いしまっす!」


尾瀬のアドミッターは淡い赤と水色に染まり、淡赤の光が発された。


「これは、炎と氷だな」

「炎って、火とは違うんですか?」

「ああ。また座学で説明するが、威力の強さだとか熱を操れる点だとか、火にはない利点がある」

「へえ、結構良さそうだな」

「で、どうやって感知したんだ?」

「ああ、お前のを参考にした。俺、さっきまで目ェ瞑って体内を探ろうとしてたけど、自分の得意な点って聞いて視力が思いついてさ。目に集中して右胸を見てたら流れる魔力が見えたんだ」

「見えたの!?」

「君、魔力の流れが見える人は滅多に居ないぞ。隠れている敵を見つけたりとその目はかなり役に立つ、大切にしろ」

「あざます!大切にします!」




その後は訓練に戻り、1時間、2時間と時が流れた。日が沈みかける頃になっても俺と立花は魔力を感知することができない。

休憩も兼ねて、先に夕食を摂ることになった。



「あ、わかった!」


夕食を食べている最中、突然立花が笑顔になってそう言った。


「わかったって何が?」

「魔力!アルター少将、殿、分かりました!」

「それは良かった。食事が終わり次第直ぐにやろう」


ニコニコと口角が上がりきっている立花はかなりの勢いで食べ進め、そわそわとみんなが食べ終わるのを待っている。何となく急かされる気分で何時もより早いペースで食べ、食事が終わった。

訓練場に戻ると早速立花がアドミッターを握る。

アドミッターは黄緑と桃色に染まり、黄緑に光った。


「わ、可愛い色だ!これ、何属性ですか?」

「植物と、毒だな。やり方によっては治療にも役立てられる、君は医学にも力を入れるといい」

「僕、元の世界でも医者を目指してたから、すぐく自分に合ってる気がする!」

「因みにどの属性の派生なんですか?」

「植物は地で、毒は風だな」


立花は嬉しそうな様子でぼんやりとしている本郷に絡みにいった。

これで残りは俺だけとなった。


時間は過ぎ、俺は何も感じられないまま星が見え始めた。


「何か進展はあったかい?」

「いえ、一向に何も感じられません…」

「そうかい…君は嗅覚が鋭いのだから、それを使って何か出来たりしないかな」

「先程から考えてはいるんですが、活かし方が分からなくて」


他の5人も色々やり方を考えてくれてはいるが、やはり感覚的なものなので自分で見つけられなければどうしようもない。

行き詰まっていると、アルター少将が立ち上がった。


「これは身体に大きく負荷がかかるのでできればやりたくなかったが……無理矢理だが私の魔力を君に流そう」

「そ、そんな事ができるんですか?」

「ああ、君の魔力と反発を起こして身体が痛むだろうが、確実に魔力を感じられる手ではある」

「痛むって、どれくらい?」

「かなり、だ。それと暫くは筋肉痛のような症状に苛まれることとなる」

「うわあ……絶対やりたくな…」

「君、それでもいいか?」

「……はい、お願いします。どうにもできる気がしませんので」



立つように促されて立ち上がると、アルター少将が俺の右胸に手を当てた。

一瞬空気が揺れるような衝撃がきて、それから直ぐに全身が燃えるように痛んだ。


「ぇ、あ"、うぐぅ……ぁああアア!!」

「うおあ…痛そ…」

「アイツが叫んでるとこ初めて見たな…」

「これぐらいで良いだろう。何か感じとれるか?」


数秒経って少将が手を離すと、途端に痛みが収まって俺は膝を着いた。

彼に言われて体内に意識をやると、明らかに先程とは異なって熱いものが身体を流れているのが分かった。

肩で息をしながらそれを追っていくと、一際大きな塊が右胸にあることに気が付いた。


「あ、ありました、見つけました」

「見つけたの!?良かったあ!」

「見つかったのか、おめでとう」

「では早速登録をしよう」


長いこと一緒に模索してくれた5人が、自分事のように喜んでくれる。特に中々見つからない同士だった立花は跳ねて喜んでいる。

少将に手渡され、重い腕を持ち上げてアドミッターを握る。

もう熱さは治まっていたが、先程得た感覚はそのままで魔力を手のひらに送るイメージをして動かしていく。

するとアドミッターが半分だけ緑に染まり、残りは漆黒とも言えるより暗い黒に染まった。そして黒い光がアドミッターから発される。


「緑ってことは風と……黒は何ですか?」

「黒は、初代エスポワールの1人が持っていたとされる属性だ。だが何属性だかはわからん」

「ええ!?何でですか!?」

「初代エスポワールについては殆ど記録が残っていないからだ。だが取り敢えず、皆登録は済んだ。上に提出せねばならない書類があるから、それに記入をしたら今日はもう上がりたまえ」



魔力が扱えるようになったのに釈然としない点が残り、黒に戻った自身のアドミッターを時折見ながら執務室へと足を進めたのだった。

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