表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/9

page5︰基地内部

「まず、今居るのが魔導陸士専用の棟だ。陸士には50人規模の大隊と30人規模の中隊、10人規模の小隊、それから6人規模の分隊や4人規模の班が複数ある。この執務室は第4まで存在していて、内務の処理を務めることも多い小隊から大隊の隊長が利用している。私は隊は率いては居らんが、作戦次第で組まれる師団の1つを率いる師団長としてこの部屋を使っている。一般兵士は基本的に入室することは無い」

「あれ?アルター少将、殿は師団長なんですよね。隊長ではなくても使うんですか?」

「ああ、私はこの執務室の責任者として居るんだ。大隊長クラスの者の階級は高くても中佐であるので、将官への目通りや本部への出入りがし難い面がある。魔導陸士に関する事項は全て私から司令部や参謀本部へと伝える事になっている。各部屋に私と同様に将官の責任者が居るぞ」



説明を聞きながら廊下を歩く。

魔導陸士は全部で約5000人程で、軍総員が約35万人であるのに対して同じ規模である空士と合わせても1割にも満たないのだそうだ。その選抜試験や訓練の厳しさ、戦果の大きさをあって魔導部隊は兵士全員の羨望を浴びる精鋭部隊なのだと言う。

一般の歩兵や遊撃部隊等と一隊の規模も異なっており、一般の大隊は800人、中隊は250人、小隊は60人、分隊は12人、班は6人であるそうだ。

比べると、本当に少数精鋭なのだと分かる。



談話室や会議室、医務室に武器庫、中には入れなかったが資料室や情報管制室等に案内してもらい、棟内部の様子を見回った。魔導空士の棟も大体同じ感じらしい。

本部、つまり本棟の内部はより位の高い軍人や軍政府の要人が出入りするだけあって、もっと豪奢で整った造りをしているそうだ。


棟を出て、棟の外にある訓練場に到着した。

一見小屋のように見える建物だが、大きな観音開きの扉が設置されている。


「ここが訓練場……?」

「ああ。見た目は小さいが、内部に魔法陣が組まれていて広い空間が創られている。端は結界になっていて傷付きもしなければ防音にもなっているので何の心配も要らない。基地の外にある本来の演習場と比べると狭くはなるがな。さあ、入れ」


中に入ると、そこには広大な敷地が広がっていた。人が1000人入っても余裕そうな広さで、まるで外にいるかのように草木が生えている。

そしてその中で凄まじい動きをする人達の、激しい攻撃が飛び交っている。今は2つの中隊で対魔導部隊の戦闘訓練をしているらしい。

薄く水色に色付いた壁が結界だから、中に入ると攻撃が当たるので入らないようにと言われて結界の外から観戦した。


「うわ、すげぇー……」

「アクション映画でも観てるみたいだ」

「人間ができる動きじゃないって…」


銃や剣、その他様々な武器を使い、様々な色の光や爆撃で本当の意味で火花を散らして戦っているその様子は、まるで現実感がなくて呆然とする。


「僕達ここに入って戦うの?ホントに?」

「……まるで着いていける気がしませんね」

「訓練を積み、魔力を扱えるようになったらこれぐらいは可能だ。だが、今訓練をしている彼らは魔導陸士の中でもかなり実力のある隊だ。その内の一つがノーマリッジ中隊。あの大剣を使っている金髪の男が、君達の最初の実戦を共にする事になるブレイブ・ノーマリッジ大尉だ」

「あ、相手の方よく見るとさっきのディール大尉、殿じゃね?」

「んん?遠くてよく見えないな」

「俺目ェ良いんだよ、昔から」

「そうなのか、君?それは軍人として強みになるぞ」

「え、そうなんですか?役に立つなら良かったです!」

「ああ。腕が良ければ射撃の方を磨いても良いだろう」


アルター少将が指を差した先を見ると、今まさに相手と一体一で戦っている金髪の男が見えた。

尾瀬が言うように相手の方もよく見て見たが、赤い髪が見えただけでディール大尉かどうかは分からなかった。


少し眺めているとすぐに分かったが、その2人は他と比べると明らかに別格だった。

部隊自体かなり実力があるとは先程聞いたが、2人の戦いは他の兵士が入る隙もないほどに激しく、速く、苛烈だった。

結界の外に居るにも関わらず、ディール太尉が撃つ銃とノーマリッジ大尉が振るう剣が交差する音が聞こえてくるようである。

彼等よりも高い地位にいるアルター少将は一体どれだけ強いのだろうと考えながら、その2人が着いてくれている初陣は安全だろうと安堵する気持ちとこんな人間達の中で戦わなければならない事に対する不安と恐怖で胸が揺れた。




暫く見た後並立している他の訓練場や外で基礎体力を付ける訓練をしている兵士達を見て周り、あっという間に昼となった。

最後に、これから自分達が住まうことになる兵舎に案内され、そこで昼食を摂ることとなった。

元々初代のエスポワールが住む為だけに建てられたらしく、個室が6つと客室が2つ、入ってすぐにある談話スペースにリビングに近い食堂、キッチン、大浴場、それから作業用に使われていたのであろう部屋が複数あった。

兵舎と言うよりは大富豪の家に見える。

食堂には60代程の女性と20代程の女性が居て、彼女達がこの兵舎の食事や清掃を担っているらしい。

名をフレイアさんとローシャさんと言うそうだ。


食事は神殿で食べたものとは異なり、日本食が出てきて驚いた。何でも、故郷を恋しがっていた初代エスポワールと共にこの兵舎の食堂に務めていた方々が協力してレシピを開発したらしい。西洋のような食事が一般的なこの国で唯一、この兵舎でのみ日本食が作られているのだそうだ。

ゆっくりと美味しい食事を摂りながら雑談をしたり、アルター少将に質問をしたりしながら1時間程休憩し、フレイアさんに手渡された訓練服に着替えると、とうとう魔力を扱う訓練に臨むことになった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ