page4︰少将との面会
「遠路はるばる御苦労。貴殿らが新たなエスポワールで間違いないな?」
魔導陸士執務室と書かれた部屋に入るや否やフェイス神官長は一つ敬礼をしてディール大尉と共に退室し、俺達6人と目の前の大佐のみが残された。
室内には彼の座る最も大きな机の他に彼のものより少し小さな机が50程並んでいたが、利用者は誰もおらず恐らくだが俺達の面会の為に出払って居るのだろうと分かった。
青みがかった黒髪に深い青の双眸を鋭く細め、彼は名乗る。
「私は魔導陸士所属、デルト・アルター少将である。貴殿らは随分と若く見えるが、幾つだ?」
「あ、はい!全員17歳で、高校2年生です!」
「ほう?17ならば、私とさほど変わらんな。高校と言うものは知らんが、つまり学生という認識で良いか?」
「はい、元の世界では学生でした」
低く威圧感のある声だが、緊張をほぐそうとしてくれているのか笑顔は無いが堅物そうな第一印象からは意外にも雑談から入ってくれている。自然と伸びていた体が少し緩んだ。
自分達とさほど変わらない年齢と言われて驚愕しつつも、彼に促されて少し移動し、端の方にあったソファに彼と向かい合って座った。
「では、本題に入ろう。あの神官長殿に聞いたかもしれんが、貴殿らが我が帝国軍魔導部隊に入隊する事は確定事項となる」
「はい、そう聞いています」
「入軍後の地位は特例として、少尉の士官階級に叙する。それから私と、魔導陸士第3中隊中隊長、ブレイブ・ノーマリッジ大尉と共に一時的な小隊を組み、実戦にあたってもらう」
「っ、実戦か……」
「つまり、本当に戦線に出るってことですよね…」
「ああ。だが暫くは訓練や座学を行うので、早々にとはならないので安心するように。内容については追々話そう」
「分かりました、よろしくお願い致します」
「ああ」
軍に入る事になった時点で分かっていたが、やはり実戦に出る未来を想像するとドキリと心臓が跳ねる。
強ばって詰めた息をどうにか吐き出して、先の話を聞いた。
「そこでだが、まずは軍隊に貴殿らを登録する必要がある。そしてこれが登録用の魔石だ、これをアドミッターと言う」
アルター少将はテーブルに6つの黒い魔石を転がした。それは、先程フェイスさん達が持っていた魔石と同じようなものだった。
「これに魔力を流すと軍への登録が完了する。これが無いと基本的に軍本部に入る事ができない。またアドミッター内部には様々な魔法陣が組み込まれており、魔力を流せば本人確認の他伝令にも使用できる。登録されたアドミッター同士を重ねると、相手の所属や階級等の情報も脳に入ってくる。まあ軍服を見ても分かる事でもあるが、アドミッターは登録者本人にしか使えないので確実性を求めるなら良いだろう」
「成程。ですが私達はこれまで魔法等空想上のものだと思っていたので、魔力を流すだとかそういった扱い方は分かりません。どうすれば良いのでしょう?」
「ああ、それは想定済みだ。今日これからは軍本部を見学する時間として、昼食後からは魔力を扱う訓練を行う。今日中に登録できたら理想だ」
アドミッターを触ったり握ったりしても石のような手触りがするだけで特に何も起こらない。やはり魔力の扱いを教わらなければ登録できないんだなと理解して、これからの予定についての言葉に頷いた。
「では早速だが、貴殿らが主に利用することになる箇所を回っていこう」
立ち上がったアルター少将に続いて席を立ち、歳が近いようにはどうしても見えないその威厳のある後ろ姿に着いて部屋を出た。