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婚約破棄からの獄中死からの巻き戻し

「君には失望したよ…婚約は破棄させてもらう」

「王太子殿下!私は何もしておりません!どうか…どうかお考え直しください!」


煌びやかなダンスホールでは貴族の子女の通う学園の卒業パーティが催されていた。

華やかな会場には場違いな、追い詰められた令嬢の叫びが着飾った参加者たちの注目を集める。


「証拠はすでに集まっている。貴女が聖女を害そうとしたということは誰もが知るところだ」

「アデライド様…残念です…」

「聖女ジゼル、このような者を哀れまなくても良いのです。我が妹ながら心根から卑しく救い難い」


金髪碧眼の王子に聖女と呼ばれた美しい少女が寄り添い、側近の公爵令息が守るように半歩後ろに控えている。

その3人と対峙したヴォルテール公爵家長女のアデライド・ド・ヴォルテールは、尚も必死に王子に自身の潔白を訴えようとするが、突然力が抜けたようにガクリと膝をついた。


「魔力を封じさせてもらった。ここでは君の力は発動しない。聖女には傷ひとつ付けられない」


頭が揺さぶられて身体中の力が抜けていくような感覚にアデライドは立ち上がれなくなっていた。まるで跪くような姿勢になった彼女の視界で左手に着けたブレスレットが怪しく光っていた。青く輝きを放つこのブレスレットが、パーティのために王子からドレスともに贈られたものだったことを思い出す。それを喜んで身につけたこと、自分の趣味とは合わないが王子からの久しぶりの贈り物に心を躍らせていたこと、それらのことが今は手のひらに感じる床の冷たさと共に心を凍させる。


「殿下、これは卑劣な女です。自発的な反省など期待できません。牢に入れて頭を冷やさせましょう。衛兵!連れて行け!」


2人の衛兵がアデライドの両脇から腕を掴んで立たせる。


「何をするのっ…!うっ!」


およそ令嬢に対する扱いとは言い難い乱暴さにあげようとした声は、ブレスレットから更に魔力が奪われる感覚によって途切れさせられた。更に力が抜けていく体を両脇の衛兵が引きずるように歩かせる。この国の誰よりも豊富にあったはずの魔力が底をつき、頭がぐらぐらと揺れて気持ちが悪い。


その時、頭の中にあるはずのない記憶が流れ込んできた。まるで失った魔力の代わりとでもいうように押し寄せてきたそれは彼女の前世の記憶だった。

記憶の中の彼女は普通の会社員で、女性向け恋愛シミュレーションゲームをプレイしていた。そのいわゆる乙女ゲームと呼ばれるゲームの舞台は今アデライドのいるこの近世欧州風のファンタジー世界であり、ヒロインは王子の隣でいかにも傷付きましたという顔をしていた聖女と呼ばれる彼女であり、自分は憎まれ追いやられるだけの悪役令嬢に生まれ変わってしまったことを悟った。


そして程なく、連れて行かれた獄中で命を落とした。





「なぜ?!そこは前世の記憶でチートしてざまぁではなくって?!?!」


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