6話 本音
「まず一つ言わせてくれ」
そう言ってさっきまで優しく微笑みかけていた空原は真剣な面持ちで突然正座し、両手を地面に着け頭を地面に叩きつける。
「助けるのが遅れて、すまない!」
「・・・!?」
私は空原の顔を見て驚く、今まで見たことがないほど、濁りが全くない透き通ったまっすぐな目だった。
「か、顔を上げて、それと謝らないで、こっちは助けられたんだから、むしろ謝るのはこっちの方だよ、迷惑をかけてごめん助けてくれてありがとう」
私は空原に向けて覇気のない声で答えた。
「・・・・・・そうか」
空原はそう言うと、立ち上がり安心した表情を浮かべ私を見つめる。
「それより聞きたいことがあるんだけど?」
「おぉ! 何でも聞け」
私がまた覇気のない声でお願いをすると、空原はいつもの調子でOKしてくれた。
「三つあって・・・一つ目はなんでいじめられていることがわかったのか、二つ目は何でこの場所がわかったのか、三つ目は・・・あの強さは一体どこで教わったの?」
私は空原に自分が思った疑問をぶつける。
「・・・・・わかった。話そう」
少し間を置くと、またさっき見せた真剣な表情で話す。
「まずいじめに気づいたのは・・・お前急に様子が変わったからな」
「様子?・・どのへんが?」
「明らかに表情を作ってる所とか、何かに怯えている目をしているとかな・・・七ヶ月前くらいから」
「・・・・・・きも」
「うぅ」
空原は膝から崩れ落ちた。正直『きも』は流石に言い過ぎたと思う。だけど、あまりにも的を射ていた発言をしていたのでつい。時期まであたっているし。
「ごめんごめん」
私は少し笑いながら謝った。空原はそんな私を見ると安心したようにまた優しくて微笑み立ち上がった。
「で・・・場所がわかったわけは・・・教えくれた人がいてな」
「教えてくれた人?」
「あぁ・・・正確には場所のヒントを持っている人がいてな・・・・一から説明するよ」
そう言うと空原は少し間を開け、覚悟を決めたように語り出す。
「まず、いじめたやつが斬島達だってのはすぐにわかった。お前・・斬島達と話している時目がさらに怯えているからな、だからお前らが下校の時とかに尾行してみたんだけど、志透のスキルのせいなのか、いじめをしている現場を見ることができなくてな」
「・・・」
志透のスキルは生物を10体まで透明にすることができ、透明になった生物を見るには自分も透明になるしかない。
正直いじめをしている現場を見るのは無理だ。
「どうするか悩んでいる時・・依頼がきてな」
「依頼?」
「あぁ・・・うちの義兄さんが便利屋をやっててな、便利屋有事て知ってるか?」
「うん」
便利屋有事・・・・1年くらい前にこの辺にできた便利屋。経営している人がおかしな人ということで近所では有名だ。
「そこで一応アルバイトとして働いているんだ。で、さっきの依頼のことなんだけど・・・・・」
空原は口をつぐむと少し息を吸って一息吐くと躊躇しながらも言葉を発する。
「依頼人はお前の叔父さんと叔母さんだ」
「!!!!!!!?」
私は・・・・・驚いた。まさか叔父さんと叔母さんが気付いていたなんて。
「依頼内容は『姪をいじめから助けてほしい』だ」
「誰が・・・・誰が教えたの?」
私は少し怒気を込めた声で質問する。
私はいじめられてから二人には会ってない。私の少しの変化にも気づく可能性があるから。
・・・・・まさか空原が少しの変化で気づくとは思ってなかったけど。
だから二人に気づかれてない絶対の自信がある
となると誰かが教えたとしか思えない。
「石田、後藤、山田の三人だよ」
空原はまっすぐ私を見てそう答えた。
「・・・・・・はぁ〜、だよね」
私はため息を吐きながら自身の右手を額に当てる。斬島達のいじめを知っているのは元々いじめられていた石田、山田、後藤しかいない、だから三人なら場所もわかるし、誰かに教えることだってできる。
「お前の叔父さんと叔母さん、石田、後藤、山田が事務所が来た時は驚いたよ」
空原はすこし俯きながら語ってくれた。
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一ヶ月前
「姪をいじめから助けて欲しい」
幸田の叔父さんが頭を下げてそう告げた。真剣な表情。だけど憔悴しきった顔だ。
叔母さんの方も俯き、誰が見ても元気がなかった。
その後幸田の叔父さんは事の顛末を話してくれた。
叔父さんと叔母さんがいじめを知ったのは三人が直接家に来て、自分達が斬島達にいじめられている所を見られ、斬島が自分達をいじめない代わりに幸田をいじめるという提案され幸田がその提案にのり、自分達の代わりに幸田がいじめられることになったことを叔父さん叔母さんに三ヶ月前に伝えたらしい。
そのことを聞いた叔父さんは激怒して、学校や警察に問いかけた。・・・・・だが
「全く取り合ってくれないです!!!!!!彼女らの証言があっても全く!!!!!」
叔父さんは悔しさと怒りが入り混じった声で話す。
「探偵にも頼ろうとました。・・・・けど、連絡しても全く取り合ってもらえないし、事務所に直接会いに行っても門前払いで・・・・」
叔父さんは下を向き、膝に置いていた拳を力強く握っていた。
「途方に暮れている時・・・・・便利屋のチラシを見て・・・もしかたらと思いここに尋ねてきました。」
そう言うと、叔父さんは持ってきていたカバンのチャックを開き手を突っ込む。
「便利屋の皆さん」
そしてすぐ近くにある机に何かを置く。そこには札束があった。厚さから見て大体200万円はある。
それを置くと叔父さんは床に膝をつけて頭を机に叩きつけ鬼気迫る声で叫ぶ。
「どうか!!! どうか、どうか!!!! 新渚を救って下さい!! あの子は私の姉の子で、姉夫婦が事故で亡くなって、私達2人で育ててきました。6歳のあの子は私たちの前でも・・・・前でも!!!」
そう言うと叔父さんは涙を流す、しかし引き続き鬼気迫る声で叫ぶ。
「あの子は心配かけまいと、明るく振る舞い、規唯で学年1位をとるほど勉強を頑張ってきました!!それなのに、あいつらはくだらないことで新渚をいじめました!!! 私は許せない!!!
例え神が許しても!!!! 私達は許せない!!!どうか・・・どうかどうか!!! 私達の新渚を救って下さい!!! そしてあいつらに相応の罰をお願いします!!! お金ならいくらでも払いますから・・・どうか、どうか!!!!」
叔父さんがそう叫ぶと、叔母さんも膝をつけて頭を机に叩きつける言う。
「お願いします!!!あの子をどうか・・・救ってください!!!!」
さらに悔しそうな顔をしていた後ろにいた石田、山田、後藤も頭を下げ、石田は言う。
「私達からもお願いします!!! 幸田さんは親しくもない自分達のために庇ってくれました!!!!お願いします!!!!」
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「そう依頼されて、俺たちは依頼を受けてよ。その後は斬島達がいじめをやっていた場所を聞いたよ。場所が何個もあったから義兄さんともう1人の従業員にも頼んで何個かにあたりをつけてはりこんでみたら、今日やっと現場を突き止めることができた」
「・・・・・そう」
全てを聞いた私は覇気がない声で言った。そうか、石田さん達、伝えるの怖かっただろうに。
「・・・・大丈夫か?」
空原は私の疲れ切っている姿を見てなのか優しく声をかける。
「うん・・・大丈夫、ありがとう」
私は覇気のない声で笑って言った。
「・・・・で、あの強さは?」
「・・・すまんその質問には答えられない」
私が思い出したかのように質問すると空原は頭を下げて教えられないことを謝罪する。
「そう・・・・いいわ無理して答えなくて、質問に答えてくれてありが・・・・と・・・・う」
私は空原にお礼を言う途中に自分が泣いていることに気づく。
「幸田・・・」
「ご・・・ごめんなさい、は・・ははなんで泣いてるんだろう」
空原が心配しているので、私は笑ってごまかす。
すると、空原は何かを察したよう表情を見せ先輩は私の前に来て少し屈んで優しく微笑んで言う。
「幸田・・・我慢しなくてもいいぞ・・・・お前は頑張ったんだ。弱音の一つや二つ吐いてもいいぞ・・・・・・・・本当によく耐えた」
空原はそう言うと躊躇いながら私の頭を撫でた。あぁ、そうか、もう、大丈夫なんだ、思いっきり泣いても、斬島達はいない。斬られて殴られることも、罵声を浴びさせられることもない。
もう、大丈夫なんだ。安心してもいいんだ。
私は空原に撫でられて・・・・・・・今まで我慢していたものが大粒の涙と一緒に流れ出した。
「うぅぅぅあああぁぁ」
私は空原に抱き着き彼の胸で泣いた。
「わたし、わたし、本当は斬島達から逃げたかったけど、けど、けどー、」
辛かった。
「・・うん」
「三人がいじめられるのもいやだからぁぁ・・・本当は弱音を言いたかったけどー」
苦しかった。
「うん」
「叔父さん叔母さんと他のみんなにも心配かけたくないしー」
痛かった。
「うん」
「うああぁぁぁあ!!!」
ひとりぼっちで寂しかった。
「・・・・本当によく頑張った」
でも、もう大丈夫。私は1人じゃない。
私はそう思い安心して弱音を吐き続けた。それに対し空原は優しく背中を摩りながら真剣に聞いてくれた。
その後私は涙が枯れるまで空原に弱音を吐き続けた。
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