41話 相棒2
検査の結果を知らされ、ここがどういう組織でどのような施設なのかを説明されてから訓練が始まり、俺が第70期訓練生になってから1ヶ月が経った。
一ヶ月も経てば訓練にも多少は慣れた。
まぁ、俺以外のやつはまだ訓練に慣れていなかったが。なんせ午前8時から20時まで訓練しつづけるからな、普通は慣れない。
まず、6時半に起床し、部屋の前に置かれている朝飯を部屋に持っていって食べる。朝飯はご飯とみそ汁が必ずあって、おかずは日によって変わるが、しゃけ、スクランブルエッグ、納豆、目玉焼きとウィンナー、など朝に丁度いいのがついてくる。
朝食を食べたら身支度を済まして、8時にグランドに集合し訓練が始まる。まずは最低限のストレッチをして、ランニングをする。この時、異能力を使用せず1時間以内に10kmは走らないといけない。
もし1時間以内に10km走らなければ、もう10km走る。これを1時間以内で10km走れるまで繰り返す。この時、止まることは許されない。
たとえ、息が切れようが、滝のように汗をかこうが、痙攣をおこそうが、胃液を吐こうが、3秒以上止まる又は5秒以上歩いたら、教官が近寄り休んだとみなして、腹を思い切り蹴られ無理やり立たせられる。気絶しようが関係ない後ろで様子を見ている在現団の団員数人が回復系異能力を使って、蹴られた傷を治し、もう一人が体力を回復させ、走らせられる。
一応、1時間ごとに水分が配られるし、12時半になったら弁当が配布され30分の休憩も挟むが、水分補給の時だって止まったら蹴られるし、水を落としたりしても再度配られることはない、弁当も食べたらすぐに走らされるから、毎日何人か吐いていた。もちろん、吐いて止まったら蹴られる。
最初の2週間は全員訓練が終わる午後8時まで走っていた。初日なんて酷いものだった。全員10発以上は蹴られ、1回は気絶していた。一番多い奴だと数えるのがめんどくさくなるほど蹴られ10回は気絶していた。
そいつは検査の結果を知らされた時に縮こまっていた少女で15分で息を切らして止まり、あの本郷に蹴られ泣き喚き、「パパ、ママ助けてぇ!!!」「嫌だ、嫌だよぉぉ!!!」とか叫んでいたが叫ぶたびに蹴られ、六発蹴られたところで血を吐いて気絶した。
その直後には在現団の団員数人に治療され、気絶してから2分も経たないうちに起こされ、それで喚いてもどうにもならないことをわかったんだろう。泣きながらも走り出した。
ほかの奴らも似たような感じでなかには逃げだそうとするやつらもいたが、もたろん出来るはずもなく、逃げ出そうとした奴らは罰として本郷と在現団の団員数人で10分間リンチし、治療した後両足に1kgの重りを訓練が終わるまでつけ、走らせられる。
この時、スタミナは回復させない、そのほうが止まり蹴る回数が増えるからだ。それも含めて罰なんだ。
そうして、1時間で10km走れた者だけが、次の訓練に移項出来る。
10分の休憩を挟み、道場でやる次の訓練は武器の扱い方だ。主にナイフと銃を教え込まれる。武器の訓練と言ってもナイフは竹で出来たもので、銃はエアガン。ナイフは構えと振り、受け方を教えられ、銃は構え方と弾の装填と、どれも基礎を教えられる。
この時、3人一組を作り、一組に指導者が一人付き丁寧に教え込まれ12時までやる。指導者は何人かいるが、全員老齢だった。それとこの訓練では、暴力を振るわれることはない。
武器の訓練を終え、30分の昼飯休憩を挟んで、次の訓練は格闘技。前の訓練と同じ三人一組、同じ指導者で行い、空手、柔道、合気、それぞれ一時間教え込まれる。
この時間も基礎を教わるが、メインは受け身と躱しの訓練で数十、数百回は打ちのめされる。それがとにかく痛い。
プロが全力でやっているんだ、骨が折れる、ひびが入るのは当たり前、当たり所が悪かったら脳震盪だって起きる。もちろん怪我をしたら、ランニング同様、後ろで在現団の団員数人が治療を施してくれる。
そして、この訓練を終えると、最後の訓練、異能力強化訓練が始まる。
この訓練も同じ三人組と指導者で行い、スキルを発動させ、アドバイスを受ける。何かを飛ばす異能力だったら、異能力を発動させひたすら的に向かって放つ。
肉体強化異能力は異能力を発動させながらひたすら正拳突きを行ったり、体の一部、または全体を変化させる異能力なら異能力を常時発動させ、指導者または非戦闘異能力、無能力者と実戦を行う。実戦とはその名の通りで実際に戦う。もちろん殺しは禁止で武器はなし。己の身一つでやる。
これを20時まで行い、一日の訓練は終了する。後々知るが、この訓練は言わば下準備。最低限の体力を付けさせるためにほとんどのものが最初のランニングだけで一日が終わることを想定していた。他の訓練は最低限の体力があるなら先に基礎だけでも教えようと入れたものだ。
訓練を終えたら、風呂に入り、部屋で待機し、置かれている弁当を食べ、21時には寝るこれが当時の一日の流れだ。
当時はつらかった。まず、ランニングだ。5、6歳の子供が一時間で10km走れるわけがない。俺はなんとか15、6日目で走ることが出来たが、一時間で10km走れたのは俺を合わせて3人だけだった。
武器の訓練は楽だった、本当に指導者が丁寧に教えてくれるだけで暴力が振るわれることはなかった。ただ、当時の俺は何か裏があるじゃないかと思って常に警戒していた。
次の格闘技は少しきつかった。とにかく殴られ、蹴られ、投げられるんだ。結構、痛かった。だけど、最初のほうは何も出来なかったが、慣れてくると受け身もちゃんと取れるように痛みを軽減することが出来る様になった。躱しは・・・・・あんまり出来なかった。子供同士で組み手をやる時はちゃんと躱せたが、指導者の蹴りや殴りは躱せなかった。
その次のスキルの訓練は意外と楽だった。俺は実戦をさせられたが、本郷の言ってた通り子供の異能力は大したことがなかったので学んだ格闘技で渡り合った。
そんな日々が続いて1ヶ月、その日はとてつもなく大きな黒い雲が辺りを覆っていた。
朝、いつもならグランドでランニングを始める時間だったが、その日は違った。本郷に「第一グランドの中心まで集まれ」と指示された。第一グランドはこの施設にある5つのグランドの内、一番でかいグランドで俺達がいつも使っている第二グランドの15倍はある。元々、検査の結果を知らせれた時に教えられた場所だったが、今日、初めて来た。
俺達は疑問に思いつつも指示に従った。第一グランドの中心に着くとそこには俺達と同い年ぐらいの子が18人いて、混乱しているようだった。俺達は訳が分からず、混乱するが本郷の指示には従わないとまた暴力を振るわれるかもしれない、とりあえず俺達も中央にいる子供達と合流した。
(これは、一体?)
「!・・・・おい、そこのお前」
俺はこの状況を確認するために俺達よりも前にいた男の子の肩を後ろから軽く掴み話しかける。
「な、何?」
その子はビクッと体を震わせ、怯えながら振り返る。
「お前ら、何でここにいるだ」
「あ、え、えっと、教官がここに集合しろって、言われて」
「教官、本郷のことか」
「ほんごう? 教官の名前は岡田だよ」
「岡田?」
(あの指導者達の中にそんな名前奴はいねぇ、本郷以外にも教官はいるのか)
「騒ぐな、ガキどもぉぉぉ!!!! 静かにしろぉぉぉ!!!」
思考を巡らせている時だった。混乱の中、本郷と四人の知らない男がこちらに来て、来て早々に本郷の怒号が上げる。その場にいた子供達は大人のドスの効いた叫び声にビビり、混乱が一変、静寂へと一瞬で変わり、全員が本郷へ視線を移す。
「チっ!!! 静かに遅せぇだよ、ゴミどもが、いいか!! これからお前達全員、本格的な訓練を始めてもらう、俺は本郷、お前達、70期生の教官長を務める」
そう軽く今後のことと最低限の自己紹介を済ませると、本郷はタバコを取り出す。
「今から名前が呼ばれた奴はオレの前に来て、横一列に並べ、岡田、名前を呼べ」
「はい」
そう告げると本郷はタバコを吹き、後ろにいた一人の女性、岡田がタブレットを見ながら名前を次々と呼び指示に従い呼ばれた者は並び、最後に俺の名前が呼ばれ並んだところで終了した。その頃には本郷もタバコを吸い終わっており、吸い終わったタバコをその場で捨て踏みつける。
「今呼ばれたこいつらはこの1ヶ月の間でランニング、武器、格闘技、スキルの訓練をすべて受けた者達だ」
そう言いながら本郷は新しいタバコを出し、火を付け一服する。
「特にこの、えっと、む、む、あ、無山、無山は無能力者でだが、現時点でもっとも優秀な者だ」
本郷は煙を吹いた直後、持っていたタバコを俺に向けながら告げる。おそらくさっきの話は俺のことを言っているんだろうが、名前が違う。さすがに少しイラっときた。いつもなら顔に出ないはずだったが、この時は顔にでてしまった。
「あぁ、何だその顔ぉお・・・」
それを見逃す本郷ではない、やつは気付きさっきの怒号よりも低い声で俺に迫る。
「いえ、特に、ただ、俺の名前は無寺・・・・・」
俺は即座に平静を装い、訂正をしようとした時、本郷はゆったりと俺との距離を詰め、俺の腹を右足で蹴る。
「うぅぅ・・・・!!!!」
幸い俺がガキだから舐めていたのだろうその蹴りは大振りだったので両腕をガード、腹に直撃は避けた。だけど大人の蹴りを5歳の子供が受けるんだ、ただで済むわけがなく、俺は腕が少し曲がり、そのまま1mほど吹き飛ぶ。
「う・・・・うぅ・・・うぅぅ・・・」
何とか受け身は取ったが、腹と腕にはとてつもない激痛が残り、その場で蹲ってしまう。
「このゴミが!!! 少し褒めてやろうと思ったのによぉぉ、生意気な顔をしやがって、調子に乗るなよゴミぃ!!!」
そう言い放つと本郷は俺の髪を掴んで無理やり顔を上げ、まだ火がついているタバコを俺の額に擦り付ける。
「うぅぅうぅぅ!!!」
ジューっと肉が焼ける音が静かに鳴り、俺はさらに声を漏らしてしまう。その直後、本郷はタバコを放り投げ、俺を持ち上げ地面に叩きつける。
「・・・・かはぁ!!!!」
俺は血反吐を吐き、脳震盪が起こり、意識が朦朧とする。
「おい、在現団を呼んで急いで治療しろ、15分までに訓練に戻れる状態までにしろ、サボりだけは絶対に許さん!!!」
(サボりって、この野郎ぉぉお!!! ぶん殴ってやるぅぅ)
俺は立ち上がろうとしたが、傷が深く、意識を保てなかった。
(ちく、しょ、う・・・・・・・」
俺は顔を上げたがそこが限界、意識を失ってしまった。
それから15分後に目覚め、俺はここの本当の訓練を知ることになった。
主な訓練の変化は9つ。
まず1つ目が人数だ、今まで9人だったの対し、これからは6歳から14歳の訓練生、約200人で訓練を行うことになる。
2つ目はランニングの変更、今まで通り1時間以内に10km走らないといけないのに変わりはないが、10km走られなかった場合、罰がまた走るのではなく教官の渾身の一撃をくらう。この時、ガードはOK、受け身も取ってよい、異能力を使ってガードをするのもありだ。
教官によって渾身の一撃は違い、本気のパンチ、本気の蹴り、背負い投げ、異能力などがあるが、武器の使用は禁止されている。どの教官の一撃も強烈で、中でも本郷はすごかった。俺の見てきたなかで5歳の訓練生が16人、6歳の訓練生が12人、7歳の訓練生が8人その一撃だけで殺している。在現団の治療が間に合わないほどでほぼ全員即死。
その惨劇を見た訓練生は全員恐怖した。以降それを見てから全員死ぬ気で走るようになり1ヶ月すれば全員1時間で10km走られるようになった。
3つ目は歴史と情報の授業、ランニング後に行われる。この時、年齢で分かれて受ける。歴史の授業はこの国は素晴らしい、お前たちはこの国の一部となる、これはとても素晴らしいことでお前達は幸せ者だ、と洗脳に近い授業を受ける。一応、この国の歴史や世界情勢なども学ぶがそれらが授業ででたのは9歳からで、それまで本当に洗脳に近い授業を受けさせられた。情報の授業は10歳から教わり、主に情報収集の技術を教わる。
もちろんこの時、眠ってしまったら教官の渾身の一撃を受けることになる。
4つ目は武器と格闘技の訓練の内容変更、武器は今までとは違い実物のナイフでやり合ったり、銃は本物を使って遠く離れた的を撃つ。他にも投擲ナイフやワイヤー、10歳からは毒や手榴弾、閃光弾、煙玉なんかも教わったり、自分の異能力にあった武器を教官が選別したし、それの使い方を教わったりする。
格闘技は今までの基礎と受け身、応用技なども習う。それに加え足音を出さない足さばき、気配の消し方などの暗殺技術も教わる。
5つ目は潜入スキル、この訓練の時は男女に分かれて行い、その時の潜入に合った服、表情、仕草などを学ぶ。さらに女性はハニートラップの技術も教わる。
最後の6つ目は異能力の訓練、この訓練は最後にやる。30分異能力を発動させて慣らし、その後はとにかく実戦。ひたすら1対1でやり合う。これが俺にとってはきつかった。使っていい武器はナイフかロングナイフ、異能力にあった武器しか許されない。
つまり俺は口から業火を吐く奴、バカみたいにパワーがある奴、足がアホみたいに速い奴、体の一部がライオンになる奴ら相手にたった一本のナイフで相手しなければならない。対戦相手はランダムで男女分かれてやる。一応、年齢差が2つ離れたやつとしかやらないが実力差なんて関係ない。毎日、200人以上が怪我をし、重傷者以外はその場で治療されず、治療されるのは訓練が終わった後、半年に1人死ぬのが当たり前の訓練だ。
俺は4日に1回は骨を折り、半年に1回死にかけた。
人というのは環境によっていくらでも残酷になれる生き物だ、子供も例外じゃない。日々の訓練のストレス、本気でやらなきゃ圧倒的暴力でボコボコにされる。残酷になるには理由が十分に揃っていた。
戦闘特化の異能力を持つやつらは俺のような無能力者や非戦闘異能力の者をいたぶりサンドバックにする。
奴らは愉悦に浸っており、まるで子供が蟻の列を踏みつけるように、無邪気に、楽しそうに笑って、残酷にいたぶってくる。その時の奴らの目は本郷と同じで濁りきっていた。
訓練を5分ごとに相手を変え20時までやり、一日の訓練が終わる。
訓練以外の変更点は朝飯、昼飯、夜飯は食堂で取る、個室が10人部屋に変わり、風呂は大浴場からもっと大きい大浴場になったくらいだ。
そんな地獄のような日々が3ヶ月過ぎた頃、地獄にも少し慣れた頃だった。その日の深夜、俺は部屋から抜け出していた。意外と部屋から出るのは簡単で部屋にある電話機で教官に部屋から出ることを伝えれば、わかったの一言で出ることが出来た。
もちろん敷地内から出ることは出来ない。敷地を囲うように高さ30m、厚さ20mのコンクリートの壁に囲まれていて、正面の門以外はこの壁を超えることは出来ない。正面の門と壁の上にはセンサーがくまなくあり、感知された瞬間、教官達に追われ殺されるだけ。今まで何人もがここから抜け出そうとしたが、抜け出した次の日には見せしめのために戦国時代のように教官が首を俺達に見せつけていた。
俺はそれをいいことに週4、部屋から抜け出しあちこちにある監視カメラの死角で教官からもらい受けた訓練で使われなくなった銃や手榴弾、閃光弾、壊れて使えなくった武器と部屋にあった工具箱を持って色々な武器や道具を作ったり、格闘技の練習をしていた。
当時から俺は自分の伸ばせる長所、他の誰かには出来ない自分にしか出来ないことは道具制作しかないっと理解していた。最低限の格闘技を学びつつ、少しでも他の人よりも優位に立てれる道具を制作していた。
生き残るために、そして暗殺者になって俺をボコボコしていたやつらを見返すために。そんな時だった。
一つのすすり泣く声が俺の耳に入った。その声を聞いた時、最初は無視していたが、5分、10分、15分、20分経っても泣き声が俺の耳に流れ込んできたので苛立ち、泣き声が聞こえる敷地を囲う壁の方に向かう。するとそこにいたのは自身の体を壁に任せて目を真っ赤にして泣いている少女だった。
「ん?」
その少女には見覚えがあった。
(あいつ、あの教官に懐いていた・・・)
そう、泣いていた少女は初日で気絶しまくっていた俺と同い年の子だった。
「おい、うるせぇぞ」
「ひゃいぃぃ!!!」
俺は苛立ちを隠さずに声を掛けると少女は驚き変な声を出す。
「あ、あなたは、無能力者の・・・」
「悪かったな、無能力者で」
俺は少女の言葉が少し気に障り、語気を強めて言う。
「ご、ごめんなさい、べ、別に馬鹿にしたいわけじゃなくて、その、えっと、う、うぅぅ・・・」
少女は謝り弁解しようとするが、我慢できず泣き出してしまう。
「あ、ちょっ、おい・・・」
「・・・・ぐす・・・・うぅ・・・・ひっく・・・・うぅぅ・・・」
「あぁ、もう!! もういいから、怒らないから、泣くな」
「うぅ・・・ぐす・・・・うぅぅ・・・・」
「あぁ、もう、落ち着け」
俺は更に苛立ちながらもめんどくさくなり少女に近寄り小さな背中を摩る。しばらくすると少女は落ち着き俺達はその場で座り少女の話を聞くことにした。
「あぁ、何でこんな所にいるんだ? 泣くなら自分の部屋で・・・」
「一緒にいる人がうるさいって言われて、それからはずっとここで泣いてる」
「あぁ、ここ人いないからな」
「無寺君は何でここに?」
「俺は・・・ってお前、俺の名前を知ってるのか」
「うん、無寺君は印象に残ってたから」
「なら、最初から名前で呼べよ」
「ご、ごめん、あの時は本当にびっくりしていて」
「そうか、じゃあ、今度からは名前で呼んでくれ」
「うん」
「話を戻すけど、俺がここにいるのは食堂と道場の間の所で武器を作ってたんだけど、お前の泣き声が気になってきた」
「え、無寺君、1人で武器を作っているの?
「あぁ」
「すごい!! どうやって作るの?」
少女は俺の言葉に目を輝かせる。その目はここでは珍しい子供らしい純粋な光だった。
(こいつ、さっきまで泣いてたの忘れてんのか?)
「何でお前に教えなきゃいけないんだわざわざ敵を強くしたくない」
まぁ当時の俺はひねくれていたのですっぱと拒絶したが。この時の俺は自分以外の人間を敵だと思っていて、人を信用することが出来なかった。
「・・・そっか、うん分かった、どうせ私が聞いても分かんないだろうしね」
だけど少女は俺の拒絶を嫌悪を示すどころか笑顔で返す。
「でも、何で食堂と道場の間でやってるの?」
「あそこ、監視カメラに映らないから」
「? 何で監視カメラに映らないようにしてるの?」
「教官、本郷にバレないためだ」
「何で本郷教官長にバレたくないの、別に武器を作ることは禁止されてないよ」
「あいつにバレたら、強い異能力の奴らに言って、そいつらに盗らせるように指示するかもしれないからな」
「盗られるって、いくら教官長でもそんなこと・・・」
「あいつは俺を苦しめられるなら何でもするし、さっき言った強い異能力の奴らもあいつと同じだ」
「・・・・そっか、強いね」
短い感想を述べると少女は少し涙を浮かべた。その涙はさっきまでのとは違い静かだったが、涙の一粒一粒がさっきよりも大きかった。
「は、ちょっ、何でここで泣くんだよ」
「いや、ごめんなさい、無寺君はこんなに強いのに、私は弱くて」
「・・・・」
「臆病で、泣き虫で、それが情けなくて・・・・」
「・・・・・」
「私もさ、異能力があんまり戦闘向きじゃなくてさ、いつもいじめられてて、毎日、いっぱい泣いてる
。でも無寺君は違う、私と同じで毎日いじめられているのに泣かずに、いつも全力で戦ってる」
「・・・・すごくなんかない、泣いて訓練が終わるわけじゃない、だったら俺はあいつらに一発かましてやりたいだけだ」
俺の心の底から言った言葉、だけど今思えばこの答えは少し違う気がする。確かに奴らに一発かましてやりたいのは本心だが、泣かなかったのはただ泣き方を忘れていたからだ。
「そう思っているだけでもすごいよ」
「・・・・・お前、それでいいのか」
「・・・え?」
ここまで言われたことを答えていたが、流れを変える。
「いつも、奴らに良いようにされてアホみたいにボコボコされて悔しくないのか」
「・・・・・・」
「俺は悔しい!!!! 腸が煮えたぎるぐらいに悔しいぃ!!! あいつらの顔が原型を残さないぐらいに顔面を殴りたい!!! でも、そんなをしても一時的にスッキリするだけだ、だから俺はいつかあいつらを見返すために強い武器を作って、死に物狂いで訓練をして強くなって、あいつらよりも上に立つ、そのほうがスッキリするからな」
「・・・・・・」
「お前も悔しくないのか」
「・・・・・しい」
「あぁ、もっとはっきり言え」
「・・・悔しい」
「もっと大きな声で」
「・・・・悔しいぃ!!!!!」
俺の言葉に少女は大きな声で返した。その目には涙はなく強い意思を感じた。
「悔しいよ・・・私も・・・悔しいぃ!!」
「じゃあ、努力しろ、俺達が周りよりも異能力が恵まれていないなら周りの奴らよりも1000倍努力すればいい、ただそれだけであいつらよりも上に立てるんだ」
「・・・・・」
「俺は助けないぞ」
「ううん、ありがとう、今ので十分だよ」
ついムキになって言った腹の底から出た本心、少女に腹が立って、怒りを乗せた言葉。別に励ますために言った言葉じゃない。けど少女の目はさっきまでより1000倍マシな目になっていたのを今でも鮮明に覚えている。
「・・・・お前そう言えば名前は?」
その目を見て俺は少し興味が湧き名前を尋ねる。何でだろか、当時の俺はこいつがすごい奴になるという確信があった。
「あぁ、ごめん、言ってなかったね、私は軟田桜」
「軟田、か」
「そういえばさ、無寺君名前は?」
「? 何言ってんださっきから呼んでじゃねぇか」
「そうじゃなくて、下の名前」
「あぁ、そっちか、智和だ」
「智和、無寺智和・・・」
「ん、どうした?」
「ううん、何でもないこれからよろしくね智和」
少女、当時の桜は満面の笑みで俺に言う。ここでは決して見れないと思っていた、無邪気で、きれいな、真っすぐな笑み。
「・・・・・お前、変わってるな」
「え、どこが」
「その笑顔」
「?」
今思えば、羨ましかったんだろう、俺は子供らしい笑い方も忘れていたからな。
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