30話 美魔処女
あの後、私達は警察に通報した。町田を逮捕してもらうために。もちろん、町田には釘を刺しておいた
瞬が「もし、俺の事を警察に言ったら、マジでぶっ殺すからな」と銃を側頭部に押し当てて優しく言うと、町田は「は、はぃいぃぃぃ!!!」と涙を流しながら絶叫し返事をした。
それからまもなくして、警察が駆けつけ町田を逮捕。私達は1時間ほど事情聴取を受け、諸々詳しいことは後日やることになり、私達は帰らされ、とぼとぼと歩いて事務所に向かっていた。
「いやー、大変だったな」
「えぇ、まさか、怒られるとは思ってなかったわ」
「少しやり過ぎたからな、まぁ、しかないねぇ」
「いや、私も一緒に怒られたんだけど、『明らかにやり過ぎているのに、何故、止めなかった!!』って警察のおじさんに怒られてとばっちり受けたんだけど」
「すまん」
私と瞬は談笑を交えつつ帰っていた。帰路を歩き始めた時に、お兄さん達が襲われている事についてどうするか、瞬に聞いてみたが「あの2人なら大丈夫だ、負けるわけがない」と確固たる信頼を感じるまっすぐな声でそう言った。
私は確かにと3人の信頼の強さを感じ共感しつつ返事をした。
そうして、のんびり歩きながら、話しているといつのまにか事務所の前まで来ていた。丁度、続打さんがお客さんの送迎をしており、深々と頭を下げて
「ありがとうございました」と無表情且つ感情が読み取りずらい声で挨拶をしていた。
「お、瞬、おかえり、新ちゃん、こんにちわ」
頭を上げお客さんを見送ると私達に気づいた続打さんは手を振りながら挨拶をし私達の目の前まで近づく。
「ただいま、続打さん」
「続打さん、こんにちわ」
私達も挨拶を返すが、私は少し引っかかる。そう、続打さんが私を呼ぶ時の愛称、呼び方が。
新ちゃんって、私、続打さんのお兄さんになった覚え、ないんだけど。そもそも、私、女なんだけど。
もちろん、続打さんにそんなつもりはないことぐらいわかってる。けど、やっぱり少し嫌ではある。
焼肉の時、続打さんが「新渚ちゃんか、じゃあ、新ちゃんって呼ぶね」っと適当に決めた愛称。あの日はまだ知り合ったばかりで強く言えなかったけど、今回こそ必ずやめてもらおう。
「あ、あの続打さん、やっぱり、新ちゃんは、やめてもらってもいいですか、少しややこしいですし」
私はやんわりとその呼び名が嫌な事を続打さんが傷つかないように伝える。
「え、だめかな、ほら、新ちゃん何か面倒見良さそうだし、お兄ちゃんみたいだなぁーって思ったから新ちゃん何だけど、だめ?」
「いや、そのお兄ちゃんっと、呼ばれているようでいや、なんですけど・・・」
「・・・そっか」
続打さんが愛称の理由を聞いて、私はなるべく否定しないように優しく諭す。すると、続打さんは俯く。無表情だが明らかに落ち込んでいる。
「・・・うぅ」
心が痛むぅぅ!! 私は罪悪感に包まれ申し訳なく思った。
「わかったよ、じゃあ、これからは新渚て呼ばせてもらうよ」
少しの静寂の時間が流れると続打さんは口を開け私の考えを理解し、新ちゃん呼びをやめる旨を伝える。
「あ、ありがとうございます、続打さん」
「よかったな、新渚」
「・・・え?」
私達が話し合って和解すると、黙って私達の様子を見ていた瞬は少し冷や汗かきつつ小さなため息をつき胸を撫で下ろす。
「瞬、そんなに愛称のこと心配してたの?」
私は瞬の行動に疑問を感じ、何となく考えた見解を言いつつ質問する。
「いや、そうじゃなくて、実は、その」
「何よ、ちゃんと答えて」
「あ、あぁ、わかった・・・」
瞬の端切れの悪い答えに対し私は少し圧を掛けて言うと瞬は少し躊躇しながらも言う。
「続打さんはちゃん付けで呼んでいる人はその人を食べたいって、意味だからさ」
「・・・・・え」
瞬の答えに私は思わず素っ頓狂な声を出し、即座に瞬の後ろに隠れる。
「ち、違うよ、新渚! た、確かに私は食べたいと思った人をちゃん付けすることが多い、けど、今回は本当に違うから!」
「いや、あんたこの前綺麗な女性とラブホ入ってたよね、しかも、清楚系の!!」
続打さんは弁明しようとするが瞬の鋭い指摘を受けると体をビクッ!と動揺する。それを見た私は身を屈める。
「ほ、本当に違う!!」
続打さんは無表情のまま少し声を荒げ私の目を凝視する。その目はとても潤っており、涙を流す数秒前といったところだった。
私はよく下心がある下卑た視線によく晒されているからわかる。この目は違う。
「わかりました。続打さんを信じます」
私は前に出て続打さんの目をまっすぐ見て告げる。
「あ、ありがとう新渚!」
そう言うと続打さんは私の両手を少し強めに握り、感謝を表すかのように両手を上下に振った。相変わらず無表情のままだったが、喜んでいることはわかった。
「・・・・」
その光景を目の当たりにした瞬は少し不服そうな顔をしていた。どこか、未来を憂いているように。
「あ、そうそう、あんた達にお客さんが来てるよ」
続打さんは話している途中に突然思い出したのか少し急いだ様子で言う。
「お客さん? 依頼がきたの? 義兄さんからは何も聞いてないけど」
「依頼じゃなくて、その人は瞬達に会いに来ただけだよ」
「え、誰なんですか?」
瞬が質問すると続打さんは、少し、本当にほんの少し口角を上げ、右手の人差し指を当てながら、
「秘密」
と、今まで見たこともない女の子らしい可愛い仕草をみせ、私達に告げる。
「そうですか、お客さんは?」
だけど、瞬は可愛い続打さんを見ても何も感じなかったのか、お客さんの行方を質問する。
「事務所の待合室で待ってるよ、さ、行った、行った」
続打さんは反応を求めていなかったのかいつもの無表情に戻し、事務所に行くように催促する。
「わかりました」
「あ、それじゃあ、また」
私達は一礼し、螺旋階段を登り始める。すると、私達が続打さんから視線を外すした時下卑た視線を感じた。
「!!」
私は登るのをやめ周りを見るが誰も続打さんも店に戻っているし。
気のせいかと私は思い、前を向き登りを再開し事務所の入り口の前まで行く。
「ま、可愛いから少しありだと思ってるよ」
私達が去った後、続打さんは自身の唇を舐め色気のある声でそう言った。
「あ、本当だ、開いてる」
瞬は引き戸のドアに手を掛け少しスライドさせ、開いていることを確認するとドアを完全に開け、事務所に入る。
私も続いて入りドアを締めるが、玄関をみると薄いピンク色のヒールが丁寧に並べられていた。私は少し気になりつつも置いてあるスリッパを履き、瞬と一緒に待合室兼リビングに入る。
そこには1人の女性がソファーに静かに座っていた。私は女性を見て見惚れてしまった。それほどまでに美しかった。
年齢はお兄さんや無寺さんと同じぐらいに見える。が、医田さんにも負けない妖艶な雰囲気を纏っている。
肩まで届く水のように滑らかな濃い桜色の髪。少し離れていても分かる透明感がある肌。
顔はとても整っており、正に黄金比と言えるほどバランスがいい。
瞳は髪と相まって桜の木を思わせてしまう樹木のような茶色。
体付きは引っ込むべきところはとことん引っ込み、出てる所はちゃんと出てる。特に胸はF。しかも体のラインを隠す服を着ているからもっとあるかも。
とにかく、綺麗な人で、まるで満開の夜桜のように美しく何処か怪しい、そんな、美しい女性だった。
そして私が見惚れていると瞬は女性を見て顎が外れそうなほど口を開け驚愕していた。
「な、な、な、な、な!!」
驚きすぎているのだろうか何故か、なを連呼する。
そうしていると女性は私達に気付き瞬と目が合う。すると女性はパァっと満面の笑みを浮かべ、勢いよく立ち上がり瞬の方を向き、瞬に飛びつきハグをする。
「瞬! 久しぶり! 会いたかったあぁ!!!」
女性は色気と安心感を感じるザお姉さんボイスを発しながら瞬の顔を自身の胸に押し付けハグをする力を強める
「う、うぅ!」
瞬は呼吸が浅いのか両腕を上下に振り息苦しそうにしているが、女性は気付いてないのかはたまた気付いていて続行しているのか、ハグをし続ける。
「・・・むぅ!」
何でだろう、すっっっごい腹が立つ!! 瞬は何してるの抵抗しなさいよ。そんな腕を振ってる暇があるなら突き放しなさいよ。
それとも、何? もしかして、興奮してるの!!
それはあんなでかい胸、柔らかいから触ってて気持ち良いだろうけど、ちゃんと抵抗しろよ!!!
私はそう思い腹を立てていると、女性は瞬を頭を優しく撫でる。
「一年も見ない間に大きくなちゃて、もう、お姉さんびっくり、あ!! それに制服着ちゃって、ちゃんと学校に行ってるのね、えらい、えらい」
「あ、あの、軟田さん」
瞬がそう言いかけた時、女性はふと私を見る。すると、女性はまあぁっと言いながら瞬を退かし私に抱きつく。
「・・・え?」
「何この子、めっちゃくちゃ可愛いじゃない♡」
「え、えっと?」
女性は私を見てめっちゃくちゃ褒める。私は急に褒められて混乱した。どうやらあの時、私に気付いていなく、今気づいたようだが。
「もしかして、瞬の彼女?」
「「違います!!!」」
私は瞬の彼女と問われた瞬間、顔を熱くさせ、ながらも即座に否定。瞬も顔を真っ赤にし否定する。そんな様子の私達を見て女性はニマニマと笑みを浮かべ、嬉しそうにしていた。
数分後
「初めまして、私は軟田桜です。一応、殺し屋兼情報屋です」
「は、初めまして幸田新渚です」
「新渚ちゃんね、よろしく♡」
私は女性・・・軟田さんの自己紹介を聞いて、緊張しながらも自己紹介をした。
あの後、瞬が「一旦、落ち着いて話そう」っと提案し、軟田さんは元いたソファーに座り、私達は別のソファーに一緒に座った。で、またをお互いを知らないのでとりあえず自己紹介することになった。
「新渚ちゃんは瞬のお友達?」
「は、はい、クラスメイトで瞬とは仲良くしていて、恩を返すために便利屋有事で働いています」
私は軟田さんの質問に緊張しているせいか、喋らなくていいことまで話してしまう。
「ふふふ、そんなに緊張しなくていいのよ」
私を気遣ったのだろう軟田さんは優しく微笑み、そう言ってくれた。
「す、すみません、軟田さん、綺麗だから緊張しちゃて」
「うふふ、あなたみたいな可愛い子に言われるとなんて。嬉しいし、自分の容姿に自信が着くわ♡」
軟田さんは右手に頬を当て少し照れながらも嬉しいそうに言う。その言葉には嫌味など一切なく、純粋に褒めらて嬉しいことが伝わった。
「い、いえ、そんな、私よりすっごく綺麗ですよ」
「ふふふ、ありがとう」
私は緊張がほぐれ落ち着いた声で軟田さんに言うと、軟田さんは素直に感謝の言葉を述べる。
「軟田さんは元来未団の隊長で主に重役の暗殺を担当してたんだ」
「ふふん、私の美しさで全員メロメロにしたのよ」
「へぇー」
瞬の軟田さんの説明を聞いて、私は納得した。こんなに綺麗なんだ。ハニートラップにはうってつけの人材だ。
「ま、瞬の方が出世したけどね」
「え?」
「ちょっと、軟田さん」
軟田さんの思いよらない発言に私は驚いた。でも、そうか、前にトップ3って言ってたしにそうなるか。
でも、瞬が来未団にいた時は当時15歳だったはず、よくよく考えたら瞬ってすごいのかも。
「瞬は実力があったから、みるみる成長して、あっという間に私を追い抜いちゃて、組織のNo.3になって、本当に凄い子なのよ」
「そうなんですね」
やっぱり、瞬は凄いんだ。私は嬉しそうに語る軟田さんをみて何だか自分のことのように嬉しかった。一方は瞬は顔を真っ赤にさせ縮こまっていた。
そんな時だった。玄関からガラガラっと引き戸が開く音が家中に響き渡る。
「おっと、誰か帰って来たみたい」
瞬が少し玄関の方を向きながら言うと、軟田さんは少し顔を引き締める。
「?」
私は少し不思議に思った。わざわざ知り合い、しかも長い付き合いの人にそんな引き締まらなくても、そんな性格には見えないし。
そう思考していると足音がどんどんこちらに近づき、リビングに姿を表す。足音の正体は無寺さんだった。
「あ、無寺さん、おかえり」
「こんにちわ、お邪魔してます」
「おう、ただい・・・」
無寺は私達の挨拶を返そうとしたが、軟田さんに気付き、少し固まってしまう。
「さ、桜」
「・・・智和」
2人は目を合わせお互いの名前を呼び、静寂な時間が流れる。
「・・・・・」
「・・・・・」
え、何この時間と私が思っていると軟田さんは立ち上がり、無寺さんの前に立ち、胸ポケットから折り畳まれた紙を出す。
「智和・・・」
名前をもう一度呼ぶと軟田さんは折り畳まれた紙を広げる
その紙は・・・・・婚姻届だった。
「結婚して」
軟田さんは婚姻届を無寺さんに見せつけるように広げ、真面目な声色で告白した。
それに対し無寺さんは・・・・・、
「断る」
と、即、ふった。
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みなさんが少しでも面白いと思えるように頑張ります。
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