23 話 口注意
「クソが!! 何でバレた!チッ!! チッ!!」
舌打ちしながら町田は何度も小刻みに床を踏み親指の爪を噛みながら苛立つ。
「まさか」
町田はさっきとは打って変わり笑顔でゆっっくりと私の前に立つ、すると一瞬で笑顔を消し真顔で目を見開いた状態でいきなり私の胸倉を掴む。
「空原に教えたのか」
「教えてないよ」
町田が更に目を見開きながら目と鼻の先の距離で私に問いかけるが、私は余裕ができたので薄ら笑いしながら答える。
本当に瞬には教えてない。多分、恐らくだけど、瞬がここに来れたのはお兄さんがくれたスイッチのおかげだろう、だってスイッチには・・・・・多分だけど・・・・発信機が付いているから。
うん、正直、付いてるかもって思った時はさすがに捨てようかどうか悩んだけど、一応、また襲われた時役立つかもしれないし、もし発信機が付いていたらいつでも助けに来てくれるかもしれないから、一応持ってはいる、実際役に立っているし。
「おーい、まっっっちだくぅぅん、あーけーて!!」
私がそう思っていると瞬が玄関のドアをバンバン叩きながら二階でも聞こえる大きな声で叫ぶ、それを聞いた町田は「クソが!!」と言いながら勉強机の下からそこそこでかい水鉄砲を取り出し、私に向かって水鉄砲を発射させ、私の髪や服、腕や足、足元など私を満遍なく濡らす。
「ちょ、何をして」
私は濡らされながら町田に問う、せっかくセットした髪が台無しだ。
「ちょっと凍ってもらうよ、あ、安心して、後で一緒にお風呂入るからね、大丈夫、替えの服も下着も家にあるからね」
町田は優しい笑顔を浮かべながら、気持ち悪い言葉を放った。本当に気持ち悪いなこいつ、そう思った次の瞬間、濡れていた足元が一気に凍る、次は濡れた私の足がじわじわ凍り始め、腕や服、髪も凍り始める。寒い、さっきまで36°まであった体温が32°になった様だ、周囲を見るぐらい動けてたのに寒くなり全く動けなくなり顔が下を向いたままの状態になる。
町田の異能力は『自身が触れた水を凍らせる能力』。一度触れた水が半径20Ⅿまでならどんなに量があっても凍らせることができる。
町田は私が凍ったことを確認すると、水鉄砲を一旦置き、ベットの下から水が5Lぐらいは入った学校の掃除で使うようなバケツを引きずって私が座っている椅子の隣に置き、置いてあった水鉄砲を拾おうとする。
その時、勉強机の方からガシャンっと窓ガラスの割れる音が部屋中に響く。
「「!!!」」
町田はやはりといった表情と冷や汗を浮かべながら割れた窓ガラスの方を向く、私も目線だけをそちらに向ける。すると、カーテンが開かれる。その先にいたのは割れた窓の枠に右足を乗せ、余裕を感じる中に怒りも少し感じられる表情をする瞬だった。
「町田、返事してくれよ、遅いから窓割って来ちゃったぜ」
瞬がいつもの口調で威圧しながら町田に言う。
「ごめんね、返事が遅れて、今から新渚ちゃんとヤろうと思っていたところなんだ、だから帰ってもらえないかな?」
町田は優しい口調で、気持ち悪いことを言いながら瞬に帰ってもらうよう促す。
「いやいや、そんなわけにはいかねぇ、新渚は返してもらうよ」
瞬はそう言いながら、部屋に入り、勉強机の上でヤンキー座りをする。
「は?」
それを聞いた町田はこれまでに見せたことがない憤怒の表情を浮かべる。
「返して、は、まるで新渚ちゃんが空原の物みたいじゃないか、ふざけるなよ、新渚ちゃんは僕の物なのに、というか、生徒会室の時から思ってたけど、何で二人は下の名前て呼び合っているの、まさか助けたお礼とかで呼び合っているのかな、おかしいよね、オレだって新渚ちゃんから『氷助』って呼ばれてないのに!!」
町田は下を向きながら早口で気持ち悪い言葉を吐くと、瞬を睨みつけながら叫ぶ。
「新渚ちゃんはオレの物だ!! オレの女だ!! このオセロ野郎が!! テメェを凍った後、ぶっ殺してやるよ!!!」
町田は水鉄砲を拾い構え、瞬に向かって水鉄砲を発射する。
「そんなのもろにくらうわけ、ケブッ!」
瞬は避けようとしゃがんでかわそうとしたのだろう、膝をぴくりっと動くが元々ヤンキー座りでしゃがんでいたので意味がなく、ずぶ濡れにされる。
「なに、やってのんのよ」
私はあまりのバカさに凍えながらも瞬にツッコミをいれる。
「だ、だから何だよ、凍る前にぶっとばせばいいだけのこと!!」
瞬はそう言うとヤンキー座りの体勢からジャンプし、着地し、立ち上がった、瞬間凍る。
「あ」
「よし!」
町田はいやらしい笑みを浮かべながらガッツポーズをする。
「だ、だったら、こんな氷を壊して!」
瞬はそう言いながら体を動かそうすると、瞬を覆っている氷にヒビが入る、が、一歩も前に進めていない。
「わかっているよ、だから」
町田は私が座っている椅子の隣に置いておいたバケツを両手で持つ。
「こうするだよ!!」
町田はバケツに入っていた水をぶっかける。水は氷にぶつかった瞬間、水が凍り瞬を覆っている氷が大きくなり、最初の氷と合体し氷の層ができ、ヒビがなくなる。
マズイ、あれじゃ、流石に氷を壊すことができない。そもそも、寒くてまともに動けるかどうかさえ。
私は不安がよぎるが、自分も凍らされて、何もできないので見守ることしか出来ない。
「くっ!!」
私は自身の無力さに自己嫌悪する。
「ち、ちくしょうが!」
瞬は氷を壊そうと必死に体を動かすが氷にはヒビ一つつかない。
「ははは!! 流石の君でもこれはどうにもならないでしょ」
町田は醜悪な笑みで懐からナイフを取り出し瞬の前に立つ。
「さぁて、念のために持っていたナイフだけど、まさか役に立つとは。刺殺は初めてだから、上手に出来ないと思うけど、我慢してね」
町田はそう言うとナイフを振りかざそうとした時、瞬はニヤりっと笑い、口からパチンコ玉をピュっと吹き矢をするよう口から発射する。
「いたっ!」
パチンコ玉は町田の額に当たり、宙を舞い、町田は半歩下がる。瞬はカンっと舌を鳴らし、パチンコ玉と位置を入れ替える。
「はぁ!?」
瞬のスキルを知らない町田は目玉が飛び出る程の驚きで一瞬放心状態になり動きが止まる。その隙に宙を舞う瞬は回転蹴りを町田の左頬にくらわし、クリーンヒット。
「ぶへっっ!!」
町田はベッドの方に吹っ飛び、気絶する。町田が気絶した瞬間、全ての氷が一瞬で溶ける。
「・・・・・新渚を襲おうとしたのと俺のことをオセロ野郎と言った罰だ、この変態ヤンストカー変態野郎が」
瞬は町田の前に立ち、唾を吐きながら、町田が言ったオセロ野郎よりも酷い言葉を浴びせ、右手の中指を立てる。
あと何で、変態二回言った?
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