21話 偽物
焼肉を食べた翌日、私は学校に向かっていた。
昨日、焼肉を食べてる時に商田社長から『明日の10時、生徒会室に来てほしい、二人に話がある人がいるんだ』と伝えられたので私は学校に向かっていた。
そうして、てくてくと歩いていると校門の見えるところまで着くと、校門に見知った人物が立ちつくしていた、瞬だ、わざわざ私を待ってくれたのだろうか?
私はスマホを取り出し、電源を入れカメラを起動しインカメにし、スマホの画面を見ながら髪を整える。
「・・・・・」
何で、私は髪を整えているんだろう?
緊張もする。私は落ち着かせるために深呼吸して校門まで行き、瞬に声を掛ける。
「瞬、おはよう」
「お、おぉ、新渚、おはよう」
私に気づいた瞬は少し驚きながらこちらの方を向く。
「私が来るまで校門で待っていたの?」
「うん、まぁな」
「そう、なんだ」
「「・・・・・・」」
私と瞬はそう話すと沈黙の時間が流れる。
・・・・何で少し待ってくれたぐらいで嬉しいのだろう。
いや、わざわざ待ってくれたのだ、嬉しいに決まってる。
問題は・・・・私が予想していたよりも嬉しいってことが問題だ。
「じゃ、じゃあ、行くか」
私が考えていると瞬が喋り沈黙の時間が終わる。
「う、うん」
私は、小さく頷きながら返事をし、瞬と校門を通り生徒会室に向かう。
歩きながら私は瞬の隣にいたが、私達は目を合わせなかった。
そうしていると、私達はいつの間にか生徒会室に着いていた。
私はドアを開けようとしてドアノブに手を伸ばす、すると、同じくドアを開けようとドアノブに手を伸ばした瞬の手に触れてしまう。
「「!!!」」
私達は驚き、お互いドアから少し距離を取る。
胸の鼓動が早くなり、心臓の音がはっきりと聞こえる。
「わ、私が開けるね」
「お、おう。わかった」
私がそう言うと瞬は返事をし頷く。
私は落ち着くためにもう一度深呼吸をし、ドアに近づきさっきやるのを忘れていたノックを二回する
「どうぞ」
返事を聞いて私はドアノブを回しドアを開く。
ドアの向こう広がる光景にいたのは、威厳も筋肉もないだけど人気はある我が校の生徒会長気田貯丸と町田を含む生徒会メンバー三人が別々の椅子に座って仕事をしていた。
「君達は、空原君と幸田さんだね」
気田会長は弱々しい声でそう言うと立ち上がり私たちの前に立つ。
そして、気田会長は両膝を床に付け両手も床にバンッと付け、ものすごいいきおいで頭を床に叩きつける。
「本当にすまなかった!!!!」
さっきまで弱々しい声をだしていた人とは思えないほど叫んで謝罪する。
「「「すいませんでした!!」」」
それと同時にさっきまで座っていた生徒会メンバーが立ち上がり、姿勢を正し頭を下げる。
「斬島のいじめに気付けず、本当にすまない!!!」
「あ、あの」
私は会長の迫力に気後れしすぐにちゃんとした返事ができなかった。
「いえ、会長、あなたは悪くありません」
「そ、そうですよ、悪いのは斬島達です、そもそも、私と会長は接点がほとんどないのに気づけるわけありませんよ」
そんな私を見て、瞬は優しく気田会長に声を掛けた、私もそれに続く。
「いや、そんなの関係ないよ!!! 僕は生徒会長だ、生徒の代表で導くことが私のやることだ!!! そして、生徒を助けることも生徒の間違いを正すことだ、それなのにいじめに気付けず・・・・・本当にすまない!!!」
「「・・・・・」」
私はまた会長の迫力にやられた、今度は瞬もだ。
私は気田会長が人気の理由を改めて知った。
いつも弱々しいのに誰よりも真面目で、先生よりも生徒想い、誰よりも生徒のために行動する。
多分、私のいじめを知れば斬島の家のことを顧みず 私を助けたと思う
この人、絶対先生になるよ、実際将来の夢は先生って言ってたし、というか、もうこの人この学校にいる先生よりも先生してるよ!!!
「会長、ありがとうございます、そう思ってくれるだけでいいです、だから、頭を上げてください、生徒会メンバーのみなさんも」
私は優しく言った、多分この人はこう言えば必ず頭を上げてくれる、私の言ってる意味がきっとわかる。
「幸田さんがそう言ってくれるなら、ありがたいよ」
案の定、気田会長はそう言いながら頭を上げ立ち上がる、それと同時に後ろのにいた生徒会メンバーも頭を上げる。
「で、会長は謝るために俺達を呼んだんですか?」
瞬はズボンに付いていた埃を叩いる会長を見ながら含みのある言い方で質問する。
「あぁ、それもあるが、もう一つあるんだ、斬島達の処遇についてだ」
「!!!!」
「はぁー」
私は驚くが、瞬は冷静だ、多分わかっていたんだろう。
「では、報告する、保治まな、志透明、弁田身子、七風操美、斬島京子は退学となった」
「・・・そうですか」
「当然の結果だ」
「ただ、一つ問題があってな」
「「?」」
「斬島一家が行方不明になった」
「え!?」
「はぁ!?」
私は驚いた、さすがの瞬も驚きを隠せないでいた、まさか行方不明になるなんて・・・・・私があんな事、した、から。
冷や汗が、止まらない、体が小刻みに震える、息が荒くなる。
「はぁーっ! はぁーっ!! はぁーっ!!!」
私は崩れ落ち自分の両肩を両手で掴む。
「新渚、落ち着け!!」
「!?」
動揺している私を見た瞬は私と目線を合わせ、私の手を優しく触る。
「お前の所為じゃない、あいつらは自分の罪から逃れるために逃亡しただけだ、だから、お前はこれっぽっちも悪くない」
瞬は必死の顔で、だけど優しい声で言う。
「そうです、幸田さんは悪くないありません!! だから、自分を責めないでください」
会長も瞬に続く様にそう言うと生徒会メンバーは全員が何度も首を縦に振る。
そうだった、私がそれを否定したら、瞬達がやってくれたことも否定することになるし、何より私を救う依頼が失敗してしまう。
「ごめん、瞬、気田会長、動揺してしまって、ごめん」
私は落ち着きそう笑顔を見せながら言うと瞬と会長、生徒会メンバーが安心の表情を浮かべる。
「ふぅ、よかった・・・さて、これで僕達の用は済んだ、他に質問はあるかい?」
「はい!!」
会長が安心して私達に質問がないか問うと、瞬は元気よく手を上げて返事をする。
「お、おう、空原君、どうぞ」
「会長、これは質問ではなく、お願いなんですけど」
瞬はそう言うと、両膝を床に付け、両手を力強く床に叩きつける、そして、頭を床に叩きつけ叫ぶ。
「お願いいたします、次の期末テストの答案用紙をください!!!」
「「「「えぇぇぇ~~~~」」」」
この場にいた生徒会長以外全員が瞬に引いた。
「え、えっと、空原君、それはさすがに、というか、できないし」
会長は少し戸惑いながらも優しく言う。
「俺は、この学校のガンを取り除きました、その報酬として!!! どうか、どうか!!!」
瞬は頭を床に擦り付けながら言う。
「やめんか!!」
私は思わず瞬の頭を叩きながら言う。
「うぅ、お願いいたしますぅぅ」
「会長、この人の言うこと聞かないでいいですから」
「え、えっと、勉強を教えるくらいなら」
会長は瞬のお願いに優しく答える、本当に良い人だ。
「はぁ、瞬、もう帰るよ」
「やだ!! 答案をもらうまで帰らない」
私はそれを聞いて呆れたので、土下座している瞬の服の襟を引っ張って引きずろうとするが、身長170cm後半で細身だが筋肉質の男を引きずれなかったので離す。
「はぁー、もう私ひとりで帰るから、みなさん、ありがとうございました」
私は一礼をし、ドアの方に向き帰ろうとする。
「あぁ、待って幸田さん」
「うん? どうしたの町田君」
町田に声を掛けられ私は振り返る。
「校門まで、見送っていいかな、僕からもきちんと謝罪したいし、よろしいでしょうか、会長」
「あぁ、いいぞ、なんなら、町田は帰っていいぞ、ここは三年生に任せろ」
会長は手でok マークを作って言う。
「ありがとうございます、じゃあ、お言葉に甘えて、そういうことでいいかな?」
「うん、大丈夫だよ、一緒に帰るの」
私は笑顔で言う、町田には聞きたいこともあるし。
そうして、私は町田と帰った、土下座をしていた瞬は置いていった。
帰り道、私達は他愛のない話をした。
斬島達にいじめられてからバレないようにあまり話さなかったので、たくさん話した。
ただ、町田の謝罪はまだない。そう話していると、町田の家の前まで着く。
「お、家に着いたね、じゃあね、幸田さん」
町田は歩みを止めて言う。
「・・・町田君、聞きたいことがあるんだけど、いい?」
私は謝罪がないことが気になり、ずっと、気掛かりだったことを町田に聞く。
「・・・見てたよね、私がいじめられている所?」
「・・・・・・」
「いや、そこはあまり問題じゃない、一番の問題は私がいじめられている所を見た時の表情が」
「こんな感じ」
私の問いに、町田は笑みを浮かべる。その笑みは、口角を限界まで上げたことで、ひどく、ひどく、醜悪な笑みだった。
「ごめんね、新渚ちゃん」
町田は醜悪な笑みを浮かべながら、懐からスタンガンを取り出し電源をオン、私の首筋に近づける。
「うぅ・・・」
私は電気をもろに浴び、意識がもうろうとし、よろけて倒れる。
「あぁ、やっぱり、君は美しい」
町田のさらに醜悪な笑みと告げられた言葉を最後に、私の意識は途切れた。
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