20話 大層な名前
「ふぅー」
来叶は血まみれの闘技場を見て真顔で言う。
「これから俺たちは悪魔でも召喚するのかな」
「そんな物を信じてるやつがこの場にいるとでも?」
「お前は信じてないかもしれんが、瞬が信じているかもよ」
「いや、俺は信じてないよ義兄さん」
「・・・・・・智和、実はお前も信じ」
「俺も信じてない」
「・・・・お前らもっと夢を持てぇぇぇ!!!」
来叶は叫び肩を下げ落ち込む。
「いや、私は信じてるっす!!」
三人以外の声が後ろから聞こえたので三人は振り向く、三人は安堵する、全員知り合いだった。
振り向くと観客席の入口に信徒ではない女性が三人いた、
一人は元気いっぱい満点の笑顔をしている赤髪短髪の美女、声の主でもある分田水子。
もう一人は、愛想が微塵も感じない顔をしている青髪長髪のクール美女、続打ゆきよ。
もう一人は体のラインを完全に隠している服を着ているが、服の上からでもわかる豊満な体つきをしている大人の色気が漂わせている美女、医田香奈がいた。
「おぁ!! 水子、お前はわかってくれるかぁぁ!!」
来叶はさっきとは打って変わり、笑顔になり両腕を上げながら喜ぶ。
「はいっす、悪魔がいたら面白いじゃないっすか」
水子はそう言いながら二階から一階へと飛び降り来叶の近くまで駆け寄る。ゆきよと香奈も二階から一階へと飛び降り、水子から一歩離れた距離に立つ。
「うん、うん、いたら面白いもんなぁー」
「はいっす!!」
「うちの水子に変なこと教えないでください、来叶さん」
来叶と水子が話っているとゆきよが愛想ない顔で冷たい声で言う。
「ゆきよ、お前はやっぱり冷たい女だなー」
「むぅー、来叶さん、ゆきよ先輩にそんなことを言うのはやめてくださいっす、ゆきよ先輩は優しくて良い人っす、謝ってください」
「水子」
それを聞いたゆきよは口を手で抑えて感動した。
「・・・・そうだな水子、言い過ぎた、確かにゆきよは優しいやつだ」
「そうっす、だからあやま」
「だけど、女性を性的な目で見て、さらには相席になった美女をべろんべろんに酔わせ、自宅に連れ込むやつを俺は良い人だと思わない」
「!!!!」
来叶の言葉を聞いた水子は口を大きく開けながら固まる。
「来叶さん、この子は本当に信じるんだから、そんなくだらない嘘をつかないでくだ」
「これが証拠だ」
来叶はスマホを取り出し写真を全員に見せる。
写っている写真はゆきよが住んでいるアパートの部屋に酔い潰れた美女をゆきよが連れ込んでいた。
写真に写っているゆきよは獣の目をしている。
「・・・・・・・仕方ないでしょ、私、女以外無理だから」
ゆきよは少し間を開けると髪を靡かせ開き直った。
「来叶、あんまりうちの子達をいじめないでくれるかい」
香奈は少し口角を上げながら色っぽい声で言う。
「はい、はい、すみません」
「で、私を呼んだ理由は、死体処理なら私はいなくていいんじゃ・・・」
香奈は周りを見ると、大の字になって気絶している社員が目に留まる。
「なるほど、けが人がいるのね」
「あぁ、あと、観客席にいる信徒達の心のケアも頼む、俺は他に捕らえられているひとがいないか、瞬と探してくる」
「えぇ、わかったわ、治療費は200万よ」
「社長に頼め」
「最低だね、あんた」
「よし、瞬、行くぞ」
「はい」
来叶は瞬の返事を聞くと逃げるようにアスマが登場した奥へと進む。
二人が進んで行くと薄暗い牢があった。
中にいるのは、男4人全員生気を失っている顔をしているが息はある、その中には行方不明だった社員がいた。
「瞬、南京錠を破壊しろ」
「はい」
瞬は銃を取り出し南京錠を破壊する。銃音が響いたことで下を向いていた4人は来叶と瞬を見る。
「おーい、あんたたちを助けにきたぞ、アスマは殺したもう大丈夫だ」
来叶はそう言うと社員以外は別人のように生気の満ちた顔をし、牢を出て走る。
(本来なら、信じてくれないだろうけど、心身ともに憔悴したこいつらなら、信じるか、だから)
社員の人は心配そうに来叶を見る。
「あ、あの、本当に、大丈夫でしょうか?」
(警戒を怠らない、優秀だ)
「大丈夫だ、袴田さん、俺たちは社長から依頼を受けた便利屋有事だ」
来叶はそう言うと牢に入り社員の前に行き名刺を渡す。
社員は名刺を受け取り名刺を見る。
「便利屋有事、社長の護衛をしてた人ですか!!!」
「はい」
来叶がそう言うと社員は安堵の表情を浮かべ涙を浮かべる。
「ありがとう、ありがとう」
泣きながらお礼を言う社員の姿を見た来叶は優しい声で言う。
「お礼を言うなら社長にしてくれ、あの人が一番怒ってたから」
「っ!!はい」
社員は嚙み締め返事を立ち上がるがよろけてしまう来叶はすかさず肩を貸し、三人は闘技場に向かう。
三人が闘技場に着くと死体は無く、地面に血が染みこんでもいなかった。
代わりに水が染みこんでいた。
「さすが水子だ、仕事が早い」
来叶は周りを見ながら言うと闘技場の隅っこに目が留まる。隅っこにいたのは信徒達と牢にいた三人と智和達だった、もう一人の社員は横になって寝ている。
それを見た三人は隅っこ行き香奈に話しかける。
「医田さん、この人も頼む」
「・・・追加料金50万」
「それも社長で」
「はいはい、ゆきよシートを敷いて」
「はい」
ゆきよが香奈の横にシートを敷くと社員はゆっくり横になる。
香奈は社員を触る、すると、傷はどんどん塞がれ完治した。
それを見た社員は驚きを隠せないでいた、回復系スキルの最上位をみたのだから。
「あ、あなたは一体」
「なぁに、再生を速めただけだよ」
香奈は笑顔で言う、それに対し社員の人は苦笑いをしていた。
「さて、じゃあ、みなさん」
社員の怪我が完治したことを確認した来叶は縮こまっていた信徒と牢にいた三人を睨む。
「もし、このことを警察や能武にチクったら、殺すからな」
来叶は冷たい声で威圧する。
それを聞いた信徒達と牢にいた三人は何度も頷く。
「うん、これで大丈夫だな」
来叶はいつもの声で言い智和達の方を向く。
「よし、会社に行って、社長に焼肉奢ってもらうぞ」
「賛成っす」
「焼肉」
「治療費、もらわないとね」
「さぁ、袴田さんも社員は私がおぶります」
「は、はい」
全員が盛り上がり、来叶が社員をおぶり来叶達は闘技場を後にする。
22時
私はまだ瞬達を心配している、さすがにこの時間に家にいないのはまずいので私はアパートに帰っていた。
商田社長の言っていたことは本当なのだろう、だけど、やはり心配は完全に拭いきれなかった。
そう思うと私の持っているウサギの人形に顔をうずめてしまう。
そうしているとインターホンが鳴り響く。
私はパッと笑顔になりながら玄関に向かう。
私はドアの向こうにいる三人を想像しながらドアを開ける。
そこにいたのは便利屋の三人と美女三人だった。
「おぉ、新渚ちゃん、そんな笑顔でもしかして社長に聞いた?明日の19時に焼肉行くからよろしく」
お兄さんは満面の笑みで言う、私はこの状況に付いてこれず混乱した。
翌日、高級焼肉店に行った、めちゃくちゃうまかった。
「「「かんぱい!!!!」」」
三人はグラスに入っていた酒をすべて飲み干す。
焼肉を食べた後、来叶、香奈、商田社長は三人の行きつけのバーで飲んでいた。
「いや~、この店の酒はやっぱりうめぇなぁー」
「そうだねー、でも」
「アルコール度数96のスピリタスを一気飲みしてもシラフの時とほとんど変わらないあなたを見ると酒の味を忘れしまうよ」
「えー、普通に飲めるとおもうけどなぁ、二人とも強い方だし飲む」
「「いや、結構です」」
「即答かよ」
来叶は笑いながら言う。
「・・・来叶くん」
商田社長はばつが悪い顔で来叶の方を向き言う。
「ん?」
「君達のこと、新渚さんに話したよ」
「・・・・・そうですか、どこまで」
来叶は神妙な顔をして尋ねる。
「君達のやってきたことと三人の異名」
「え、じゃあ、俺の異名を知ったの、どっちの方」
「死神の方」
「そっちかぁ~、『時衛家の最高傑作』のほうがまだよかった」
「時衛家のことは教えてないからね」
「そっか」
「なぁに、恥ずかしいの」
来叶が神妙な顔で返事をすると香奈はニヤニヤしながら言う。
「いや、死神なんて大層な名前じゃくて、人殺しがお似合いだと、思って」
「・・・・そうだね」
香奈は少し悲しそうな顔をしながら言う。
「あ、そうだ、思い出した」
香奈は何かを思い出したような仕草を見せる。
「なんですか?」
「いや、あんたたちの事務所を襲ったやつ・・・・・・由安の奴じゃないぞ」
「はぁ!?」
来叶は香奈の話を聞いて驚きグラスを倒し、立ち上がる。
「そうか、まぁ、あるか」
「気を付けるんだよ、あんたらのは・・・・・多いよ」
「・・・・・あぁ」
来叶は倒れたグラスを悲しげに見ながら言った
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