16話
「あら、もう夕方だな」
お兄さんが体を伸ばし一息つくと窓を見ながら言った。
あれから履歴書を書いたり、私が料理を作ったりなどなど色々していたら、日が落ちていた。
「よし、幸田ちゃん、好物とかある?」
「え?」
お兄さんの突然の質問に私は戸惑い、それを見たお兄さんが申し訳なさそうに言う。
「適当でいいから、あ、今食べたい物でも良いよ」
「えっと・・・あ、ハンバーグですね」
「OK、突然聞いてごめんね」
お兄さんはそう言うとスマホを取り出し電話をかける。
「あ、もしもし、医田、出前を頼みたいだけどさ、え、やってない、そこを頼むよ、新たに入るうちの看板娘になる予定の子の歓迎会を盛り上げるためにはお前のうめぇー料理が必要なんだ、頼むよ、おぉ、分かってくれたか、サンキュー、あぁ、注文、、えぇ、デミグラスハンバーグ一皿、餃子20個、焼き鳥40本、具材はねぎま塩10本、ねぎまたれ10本、砂肝塩10本、鶏皮タレ10本でお願い、あとフライドポテト三皿で、注文は以上です、え、多い、食材がない、時間が掛かっても良いから、金は二倍・・・・三倍払うから・・・・・お!まじでありがと!」
お兄さんは言い終わると電話を切る。
「・・・・・」
私は口を開けた状態で驚いた。あまりにも、注文が多すぎる、何人前頼んだ?
「あ、あのそんなに食べれるんですか?」
「大丈夫だよ、幸田さん」
私が質問すると無寺さんが答え、無寺さんの視線が向いたので、私も向くとおなかをぐぅーーーーーーーーーーーーーーーーーと鳴らしていた空原とお兄さんがいた。
「うちには、来叶と瞬がいる」
「あぁー」
私は無寺さんの言葉に納得した。
二時間後
インターホンが鳴った、それを聞いた無寺さんが玄関に向かう、少し経つと無寺さんが物凄い量の料理が乗っている台車を運んでいた。
「台車は明日昼には返せって」
「了解、あ、そう言えば、智和、ビールいる?」
「1缶もらおうか」
「分かった」
「あ、冷蔵庫にあるなら、取りに行きますよ」
「あぁ、大丈夫、すぐ近くにあるから」
「え?」
私はどういうことと思っていた、冷蔵庫はキッチンにあって、キッチンは別の部屋で近くではないのに。
私がそう思っていると、お兄さんは四つん這いになりながら床をベタベタと触りながら移動し止まる、止まった所には取っ手のような物が床に付いていてお兄さんがそれを掴み上げる、すると、部屋の右隅からシュッコ、と何かが動いた音がする、私は右隅に視線を向ける、そこは穴が空いていて冷気が出ていた。
お兄さんが満面の笑みをし、右隅の前まで行きしゃがみながら穴に手を突っ込む。
お兄さんが立ち上がる、掴んでいた手を見るとビール1ケース(500ml×24缶)を持っていた。
「俺、酒が好きだから、瞬と智和の部屋以外の全ての部屋に、酒を貯蔵してるんだ〜」
お兄さんはビールケースに頬擦りする。
「・・・・・」
私は驚き、二人の方を向く。
「こいつ、かなりの酒好きで、給料の40%を酒とつまみに注ぎ込んでいる」
「しかもかなりの酒豪なんだ」
「は、はぁー」
私は少し理解が追いつかないが、二人の嘘偽りがない目を見て納得する。
「あ、幸田さん、冷蔵庫からジュースを取って来てくれないか?」
「あ、はい、わかりました」
私は言われたまま、一旦部屋を出て、キッチンに行き冷蔵庫からジュースを取り部屋に戻る。
「おぁ、ありがとうね」
「いえ、これくらい、おつぎします」
私が部屋に戻るとお兄さんが声をかけられた、机を見ると全ての料理が並べられていた。
私は机にあった、紙コップを取りジュースをつぎ、空原に渡す。
「はい」
「ありがとう」
空原は受け取り、自分の分もつぐ。それを見たお兄さんはニヤニヤしていたが、すぐに満面の笑みに戻り、開けている缶を持つ。
無寺さんも開けている缶をもち、それを見たお兄さんが言う。
「それじゃ、乾杯!!」
「「「乾杯」」」
一時間後
歓迎会が終わり、私は後片付けをしようとす立ち上がる。
「あ、いいよ幸田ちゃん、後片付けは、俺と智和でやるから」
「あぁ、瞬もやらなくていいぞ」
「は、はい」
瞬はそう言われると、足早に部屋を出る。
「瞬?」
それを見たお兄さんが不思議そうに呼び止める。
「少し、外に出て夜風に当たってくる」
瞬はそう告げそそくさと家を出る。
「・・・・・・私も夜風に当たってきます」
私はそれを見て部屋を出ながら言い、玄関に行き、靴を履き扉を開ける。
そこにいたのは新月の夜、空に光が無く街の街灯だけで照らされているフェンスに寄り掛かっている空原の後ろ姿だった。
「え、幸田!」
扉の音に気づいたのだろう、空原はこちらに向き声をかける。
「私も、夜風を浴びたくて」
私は空原の隣に行き空原同様フェンスに寄り掛かると弱い風が来た。夜風はとても心地良く、思わず少しニヤけてしまうほどだった。
「ありがとね、おじさんとおばさんを呼んでくれて、お陰でちゃんと謝れた」
「いいんだよ、それくらい、お前、謝りたそうだったから」
「そんなに?」
「あー、いや、違うな、謝らないと後悔すると思った」
「いや、今日じゃなくても、謝れるよ、明日でも、来週でも、来月でも」
「いや、早いに越したことはないだろう、遅くなって謝れなくなるよりは・・・いいだろう」
そう言う空原の表情はどこか、後悔してるような顔に見えた。まるで、自分がかつてそうだったように。
「ふーん」
私は空原の言い回しに引っかかりつつも話を続ける。
「お兄さんすごいね、30缶飲んで全然酔ってないもん」
「あれでも、少ないほうだぞ」
「え、本当に!!」
私の反応を見て、空原は笑うが、少しすると苦しい表情を変わる。
「どうしたの?」
「いや、斬島のことを思いだしてな」
「え?」
「俺はあいつのことを人殺しと言った、けど、俺にはそんなこと言える権利あるのかなーて・・・・俺もたくさんの人を殺したから」
「でもそれは」
「生きるためにやるしかなかった、でも、人を殺していい免罪符になるはずがない、殺した人達だって生きる為に頑張っているのだから・・・・由安にいたころには気にもしなかったけど、高校に通い始めてから・・・・俺は」
空原はうずくまり、顔を両手で覆い震えていた。
「・・・・」
私はそれを見てしゃがみ、優しく抱きつき、優しく頭を撫でる。
何でこうしたのかはわからない、けどこうするべきだと私は自身の直感を信じた。
「大丈夫、大丈夫だよ」
私はそう言いながら優しく撫でる、そうすると落ち着いたのか、震えが止まり、両手を下ろす。
空原は私を見ると赤面し、しゃがみながら一瞬で私から距離をとる。
「なーにー、恥ずかしいの」
「そ、そ、そ、そんなの、恥ずかしいに決まって」
「はぁー、ほら、片付けに行くよ」
「え?」
「やっぱり、お二人に後片付けを全て任せるわけにはいかないわ」
「あぁそうか、分かった」
空原は立ち上がり玄関のドアに近づく。
「ほら、行くよ、瞬」
「!!!・・・あぁ、新渚」
瞬は笑い、ドアを開け私達は家に入る。
その頃、とある路地裏では桜色の長髪で露出が多い服を着ている、妖艶な雰囲気を纏う美女がスマホを見ていた。
「斬島カンパニー倒産、ふふ、もしかして私に見つけてほしくこんな大事を起こしたのかしら、ふふ、待っててね三人とも」
そう怪しく笑う、足元にある死体を気にせず。
また、その頃便利屋の事務所の全体が見えるほど高いビルの屋上にエメラルド色の鳥の仮面をつけている青年がいた、青年は事務所を見て言う。
「始まる」
16話 始まる
完
プロローグ編 完
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