反撃
前が短かったのでながいです。
スーツの男とミタマが見つめ合う。
「私に何故気付いたんですか?」
「答える訳ないだろ」
「フッフッフ、そうですか」
俺がこいつが隠れていると気付いたのはユナのおかげだ。キングゴブリンを倒し、山から降りるときに後ろに人の魔力を感じると、その時にあのキングゴブリンがいた場所に隠れているなんておかしいと感じた俺は一つ罠を仕掛けておいた。
「では、あの大蛇、あれは私が使役し、洞窟に置いていた筈ですが...」
「だから、答える訳ないだろ」
大蛇、あの能力は拡張スキル...杖の力だ。盾は防具として使うだけではなく吸収した、魔物、素材のスキルを魔力消費量なしで盾に移す力、アイアンネイルの盾やロックシールドのようにその魔物のスキルを盾に具現化し使える。盾だけの能力がある。
杖にも杖だけが使える能力、吸収した、魔物を一時的に使役し、力を借りられる能力。さっきのように一度、吸収した大蛇を一時的に使える。この能力も魔力消費がない。この武器特有の能力だからなのか?
「そして、何故、地面から大蛇が私に向かって来たのか」
「......」
それは俺が罠を仕掛けたからだ。俺がまず大蛇を出す場所を決める、この男以外に被害が出ないように、冒険者や兵士たちの注目を集める必要があった、それで光の民、ロゴスを演じた。
そして、男が決めていた場所に来たら、ユナが知らせ、その地面に大蛇を出し、男に不意打ちを与えた。この男、かなり強い、雰囲気だけで分かる。多分、不意打ちでなければ避けられていただろう。
「...まあ、多分、その力は全てその杖の力なのでしょう」
「!?」
何で気付かれた?
「その杖は盾にも姿が変わり、盾には盾だけの能力、何でしたか...ロックシールドと言いましたかね?杖は倒した魔物を使役する能力ですかね?私のペットが消えるように魔力を消したのはそれが理由ですかね」
「!?」
ロックシールドの事を知っている...キングゴブリンの戦いの所から見ていたのか。それに盾と杖の能力の核心を突いてきている。こいつ、なんて鋭いんだ......
「その様子、図星ですかね。ですが、そんな特殊な力見たことがない...それも、光の民、ロゴスの力なのですかね?」
「さっきからよくしゃべるな」
流石にこれ以上、バレるのはまずい気がする。
「ええ、気になるので。予言通りなら、その盾や、杖は神器と呼ばれる物ですかね。だから見たことも無い力を使えるのかな?」
「じんぎ?」
俺が聞いたこともない言葉が出てくる。
「ええ、神器です。初代王、ヒナタ・スズキの予言に記されている、光の民、ロゴスの予言の一つです。一番有名なのは光の民ロゴス、天より舞い降りし、東の脅威を討ち滅ぼすだろう。ですかね」
またまた俺の聞いたことのない話が出てくる。それに初代王、ヒナタ・スズキ.....明らかに日本人の名前だ。昔に俺の他のに転生させられた者がいるのか?
「そして、神器に関する予言、アイギス、ケリュケイオン、フェイルノート、ケラウノス、.............、五つの神器を使い闇を払うだろう」
神器か....この木の杖、盾が?そんな事あるのか?
「後一つ、神器が在るはずなのだが、どの予言の書にも最後の神器の名前が記されていないのだよ」
こいつはこんな事を喋って何がしたいんだ?こっちの手の内を探っているのか?だが、こっちとしてはその方が都合が良い。
「そんな事、今はどうでもいいでしょ」
そんな会話をしているとエノメが横から口を挟む、男は少し嫌な顔をする。
「本当だよ。ミタマ、こいつがブルードラゴン、キングゴブリンの黒幕だと思ったの?」
リリスも俺達の会話に追いつけず質問をして来る。周りの冒険者、兵士もなにがなんだか分かっていない。
「ああ、そうだな、まず最初にこれを見て欲しい」
ミタマが服の懐から石のような物を出す、それには不気味なマーク、変な魔力が込められていた。
「それは?」
「これはブルードラゴンの腹の中に入っていた石です。そしてこちらも」
もう片方の手にはさっきキングゴブリンを倒したときに出てきた、真っ二つに割れているが、同じ石がある。
「これはゴブリンキングから出てきた石です」
「その石に何かあるのですか?」
ギルドマスターが質問を続ける中、みんながこちらの様子を見ている。スーツの男はその様子見てニヤニヤと笑っている。
「この石には魔力の供給を促すと考えられます」
「魔力の供給?」
「ええ、魔法石の一種で魔力を貯めておくことが出来る物があると思います。多分その原理を利用した魔法石なのではないかと思います」
「そうなんですか...でもそれが何か?」
ギルドマスターの質問が続く。
「何故、魔法石などの高価な物をドラゴン、ゴブリンの中にあったのかそれも同じマークの石」
「!?」
「まさか、誰かが魔物に手を貸した?」
エノメが驚きの声を上げる。男はますます喜んでいる。当たっているようだな。
「そう、しかも同一人物」
「でも、それだけじゃ、この男の人が犯人か分からないじゃないか」
「だから、ゴブリン達の様子を見ると分かる。なぜゴブリンが人が作ったような精密な鎧、剣を持っていたか」
皆、ミタマの話を聞くと、確かにあの防具の技術がゴブリンにあるのか?と思う。
「騎士団長、ここ最近、大量の武器が絡んだ事件がありませんでしたか?」
「...まさか、盗賊達が売っていた武器たちのことか?」
「はい、それです。その武器から手に入れていたのでしょう、その手伝いをしたのも同一人物だと考えられます。ゴブリンに防具を買うお金なんてないでしょうし、ゴブリンに物を売る事なんて普通しないでしょう」
そう、つまり必ず人の手が必要なのだ。
「そして、僕が離れて調査に出ていた洞窟で大蛇、中に人、そして何かが入っていた木箱がありました。木箱の中身は防具達、つまりゴブリン達の住みか。そしてそれを守る大蛇、それを使役するその男」
最後まで言わずとも皆、理解したように男の方に顔が行く。男は下を向いている。
「...フッフッフッ、正解ですよ。私がやりました」
男はそう言ってもなお、にやにやしている。ミタマが手を男に構える。
「お前のせいで多くの人が危険にさらされ、命を落とした人だっている。なのに反省もせずに」
「反省?私がしたのは主に従いこの東の国を変えようとしただけですよ」
変える?こいつは何を言っているんだ。
「あなた達に今、姿を見られたのは誤算でしたが」
「もういい」
ミタマが男の前に手を構える。
「サンダーボルト!」
至近距離でサンダーボルトを打ち込む。煙が立ち込みあたりが見えない。煙が引くと男の姿が無くなっていた。
「どこに行った?」
「ここですよ」
男が冒険者と冒険者の間に立っていた。ギルドマスターが剣を持ち、男に向かっていき、剣を振り下ろす。だが何かに剣が弾かれ、所々の防具が剥がれ血が流れる。なんだ?今なにが起こったんだ?
(糸状の魔力の塊を高速で振り回したんです)
なら、防御しながらだ!盾を構え、男に突っ込む。
(ミタマ様駄目です!)
「え?」
盾が壊れ、ミタマの体が糸のような攻撃で切られ体中から血を出す。
「ミタマ様!」
ミタマが倒れ地面に血が流れる、口から吐血し苦しむ。エノメが走ってミタマのそばに近付く。
「魔力が殆ど無いのに無理をするからですよ。今のあなたでは私に傷の一つも付けられない」
男は少しがっかりしたような顔をする。エノメが男を睨みつける。動きたいが、ゴブリンとの戦いの疲労でまともに動けない。
「それはどうかな?はぁはぁ」
ミタマが息を荒げながらニヤリと笑い男の方を見る。
「何を言って...ガッ!」
スーツの男も口から血を出す、そしてそれを見て驚く。
「な、なんだこれ、血か?それに手や足、体中が痺れる」
「やっと効いてきたか」
男は不思議に思う、効く?何がだ...まさか毒?だとしてもいつ?
「足を見てみろよ」
男は大蛇に噛まれた足を見る。そこから足が紫色になっている、あの蛇に毒が仕込まれてあったのか。
「クッフッフッフッ、あなたはやっぱりおもしろいですね」
男はニヤつきながらそう言う。ミタマも笑い返す。
「そんな事、いってる場合か?」
ギルドマスターが男に剣をふる、男はぐらつきながら避ける、右腕が少し斬れる。
「今日はこれ以上、戦えないみたいです。退かせて頂きます」
男がふらつきながら森の方を向く。逃げるつもりのようだ。ギルドマスターは男が移動する前に攻撃しようとするが、また糸のような魔力の固まりに邪魔される。
「逃がすか!エノメ」
「はい!」
エノメがミタマが持っていた木刀を掴む。木刀にはミタマが込めていた魔力とユナが貯めてあった魔力が全て残っている、エノメは自分の残っている魔力を腕に込める。
「いけー!」
エノメが思いっきり投げる、魔力で強化された木刀が男の背中を斬る。
「グッ!」
だが、次の瞬間男はとてつもないスピードで消える。
「逃げられたか...」
男が居なくなり、皆無言で立ち尽くす。ミタマは地面に血を流し続ける、エノメ、リリスがミタマに近寄る。
「ミタマ様!」
「ミタマ!大丈夫か?」
あれ?声が出ない。視界も少しぼやけているような気がする。エノメがミタマを揺する。
「ミ..様、起き...」
なんて言ったんだ?目の前が暗くなり始めたぞ...なぜだかエノメが暖かい。
「死ん....嫌!」
目が閉じ始める。あぁなんだか、とても眠い...
目を完全に閉じる。
「ミタマ様!」
「ミタマ!」
2人の声が響き渡る...




