小鬼襲撃編 その3 開幕
王城
「ゴブリン達の現状の報告を!」
「かしこまりました。直ちに偵察部隊に連絡を繋げます」
そう言うと、水晶を王の前に持ってくる。すると、画面にぼんやりと向こうの様子が浮かび上がってくる。そこには水晶いっぱいにゴブリン達が写し出される。
「現状報告を」
「ゴ、ゴブリンの群がルーカルに向かって進行中、この早さだと、後一時間程で着くと思われます」
皆、ゾッとする。見たことも無い異様な数のゴブリン達に言葉を失っている。
「ん?待て、ゴブリン達なにか装備していないか?」
「確かに何か装備していますね。あれは...」
突然、言葉が止まり何も喋らなくなる。急に黙るので少し不吉に皆思う。
「あれは?何なのだ?」
「.......」
何を聞かれても無音で何もしゃべらない。やはり何か様子がおかしいと思った瞬間に画面の中に何か丸い物がコトンっと落ちてくる。次の瞬間、皆の思考が一瞬止まる。画面の中に入ってきた丸いものをよく見るとそこには人の生首が転がっていた。
「!?」
王城の中が叫び声や混乱の渦が起こる。そして水晶の中が黒くなり、偵察部隊との連絡が途絶える。皆、未だ混乱しているなか、王が冷静さを取り戻し皆に命令する。
「もう一度偵察部隊との連絡を心見てくれ、そして兵士を町の門に集めろ、ゴブリン達がルーカルにくる前に応戦しろ!絶対に町にゴブリンを入れるな!」
王の言葉で皆、冷静さを取り戻し、言われたとおりに準備進める。
ーーーーーーーーーー
「それにしてもまさか、偵察部隊がいるとは、少し早い所で襲撃がバレてしまいましたね」
スーツを着た男が偵察部隊の首を手に持っている。そしてそれをゴブリン達の群れの中に落とす。するとゴブリン達は頭を取り合い、頭に食らいつく。
「お腹が空いていたみたいですね。フッフッフ」
小鬼襲撃まで残り1時間。
ーーーーーーーーーー
ギルド
あの慌てた表情どうかしたのかな?冒険者も集めて...ドラゴン討伐を思い出す。
冒険者達は少し不安な表情をしている。人数は東の国最大都市だけあってとても多い、だが装備がどれも初心者が着るような者ばかり。上級者ぽい冒険者もいるが数少ない。
「何があったのかな?」
エノメが話しかけてくる。
「多分、何か緊急事態なんだよ」
エノメが少し緊張した顔をする。ミタマが居なくて不安なんだろう。私も怖い!絶対死んじゃうよ!私まともに戦ったことないし。
「リリス、大丈夫かな?」
「...大丈夫だ!私は最強なんだぞ!」
あぁまたやってしまった。癖でまた見栄を張ってしまった。私が一番弱いのに...うぅ、もう帰りたい。早く帰って来いよミタマ。
「皆さん、集まって下さり、ありがとうございます」
ギルドの姉さんが話始める。今、町にゴブリンが攻めてこようとしていること、王からギルドに応援要請が出たことを。
「な、なんだそれ。頭の悪いゴブリンにそんな事出来る筈がないだろ!」
1人の冒険者がその話を聞き、否定をする。ギルドの姉さんが少し暗い声で話す。
「キングゴブリンが復活したとの報告よ...」
「!?」
キングゴブリン!?キングゴブリンって、ミタマが倒したんじゃなかったの?
「嘘だ!ミタ...光の民ロゴスが倒した筈だ!」
他の冒険者もエノメに続いて、そうだ、と続いて言う。
「...ですが、こんな事が出来るのはキングゴブリンしか考えられない」
「そうだ!」
ギルドの奥から声が聞こえる。そこから髪やひげが白くなっているががっしりとした体系をした男が出てくる。
「ギルドマスター!」
「あぁ、皆も薄々分かっておろう。こんな事が出来るのはキングゴブリンだけだ」
「......」
「まさか、ギルドマスター自ら、出るのですか?」
「そうだ」
みんな分かっている。ギルドマスターが出るくらい本当にやばいのだ。
「光の民ロゴス、天より舞い降りし、東の脅威を討ち滅ぼすだろう。初代王、ヒナタ・スズキの予言の一つだ。この予言が叶えられたのは数年前、そんな奇跡二度は起こらんよ。命が惜しくない奴は付いて来い」
ギルドマスターが外に出る。
「.......」
怖い...恐怖で足が動かない。他の冒険者も一緒だろう。動き出すものが居ない...『命が惜しくない奴は付いて来い』あれは逃げ道だ。全員分かっている。生きて帰れるものじゃない、あの人はあんな事を言って参加しなくてもいいと言う逃げ道を作ってくれたのだ。
「お...俺はこの町を出る!」
1人がそんな事を言い、荷物を詰める為に部屋に向かう。その事を聞いた他の冒険者も同じように逃げて行く。
「命が大事よ!」
「俺達が参加してもどうにもなんないしな」
するとギルドのお姉さん達がそれを引き止める。
「まって、そしたらこの町が...」
そんな言葉に聞く耳を持たずに皆、ギルドから出て行く。数人はゴブリンに戦いに行くか自分と葛藤している。私達も逃げた方がいい?こういう時、ミタマならどうしている?私も迷っている。でも...私が行っても、何も出来ない。
「皆、待ってよ!!!」
エノメが大声で呼びかける。皆、顔をエノメに向ける。
「皆、行かないの?」
「...」
「皆は冒険者なんだよ!町の皆を守るんじゃないの?」
「...」
皆、下を向いて、無言でエノメの話を聞いていると1人からボソッと声が聞こえる。
「俺達が行っても意味ねえだろ」
「そんなことな」
「あるんだよ!俺達が言っても無理なものは無理なんだ」
1人が大声を上げる。エノメが何も返さずに無言になってしまう。
「....皆、この町が大切なんじゃないの?」
「......」
「私は1人でも行くから!」
エノメが外に出て、走り出す。
「まって!エノメ」
走って行ってしまった。ギルドマスターを追っていったんだ。...他の冒険者達はエノメが言っても、無言で下を向いたまま。悩んでいるんだろう...。
『皆、この町が大切なんじゃないの?』
.............
ーーーーーーーーーーー
鎧の音が音を鳴らして歩いている。兵士がゴブリンに向かっているのだ。雨の中、進んでいく。
すると、向こう側からずらずらとゴブリン達が歩いて進んでくる。その量は兵士の量を遥かに上回る。圧倒される。
「グアー!」
ゴブリン達は動きを止めてうめきを上げる。威圧だろう。兵士たちの先頭に立つ騎士団長が剣を上げる。
「我らは、誇り高き騎士だ!ゴブリンなど我らの敵ではない」
「「「オオオオオ!!!!!!」」」
仲間を鼓舞する。兵士達は不安でいっぱいな心を胸に覚悟を決める。
「かかれ!!!」
声を上げて、一気に攻め始める。するとゴブリン達も負けじと声を上げ一斉に動き出す。
「うおおお!!!」
戦いの火蓋が切られた。




