不穏な陰
山を登っている。
「ミタマまだ着かないの~」
「後少しだ」
「なんだ?リリスはもうバテたのか?」
エノメが息切れせずに山を登っている。
「はぁはぁ、俺もへとへとだぞ」
「エノメがおかしいのよ!なんでもう三時間も山を登っているのに息切れもせずにぐんぐん進んでるじゃない!化け物だよ」
「誰が化け物だと!」
エノメがリリスに近づく。
「こら、ケンカするなよ」
「でも、ミタマ様、リリスがいじめてくるんですよ」
「本当の事言ってるだけだ」
エノメとリリスが睨み合う。こいつらな....仲良くしろよ。
(もうそろそろ、見えて来ますよ)
ユナは暴れずにいい子だな。
(私はミタマ様としか会話が出来ないし。体もないので遊ぶ事を出来ません....)
本当はエノメやリリス達と遊びたいのかもな、ユナに人間のような体があれば...。
(いえ、私はミタマ様と会話が出来るだけで結構です)
いい子すぎる...結婚しよう。
(.........)
冗談だって!無言やめて心にくるから!
(ミタマ様がそこまで言うんだったら...良いですけど)
ユナが小さい声で何かをいっている。
なんだって?
(もういいです)
あれ?なんか怒らせる事したっけ?どんだけ俺と結婚するのが嫌なんだよ、かなり傷ついたぞ...。
「ミタマ様あれ!」
エノメが指を指す方向を見る。三人は山の上に気づいたら着いていた。そして山を下った所にでかい町がある。遂に来たな...ここまでに随分と寄り道をしてしまったが。
「東の国、最大都市ルーカルに!」
「うわー!今まで以上にでかいですね。ミタマ様」
「私は三十年前にあの街に行く前に通ったが、ここまで進展しているとは」
今までの町や村には城なんて一個もなかったが、この町には城がある。あそこに王が居るのだろう。
村長、領主はいたが王が居る町はここが初めてだ。
「よし!行こう!」
「はい!」
俺とエノメはさっき急いで向かって行く。
「2人とも待ってよ~」
リリスはとても疲れていて2人について行けない。
「待ってよ」
リリスが急ごうとする。すると足を木に引っ掛ける。
「あっ!」
リリスが山をコロコロと転がって行く。
「うわー!助けて!止めて止めて!」
「どうした?」
リリスがこっちに向かって転がって来る。
とっさに右へ避ける。エノメもリリスを避ける。
「避けないで止めろよ~!目が回る~」
コロコロ転がりドーン!と木に体をぶつける。その音は山中に響き渡る。
「痛った~」
「大丈夫か?リリス」
「なんとか大丈夫だ!」
手をグッドポーズしながら、鼻血を垂らしている。
「全然大丈夫じゃないな。町に着いたら先に病院に行こう」
「分かった...」
とぼとぼと山を下って行く。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
その頃、山の奥で...
ドーン!
「何だ?この音は」
「分からないが三時間ほど前に冒険者が山に入ってきたと報告があったので多分その冒険者の仕業だと思います」
「そうなのか、最近は騒がしいな」
ゴブリン達が会話をしている。
ここは山の中にあるゴブリンのすみかである。
「そうだな。四年前のキングゴブリンが倒されてから、ゴブリンをまとめる事が出来ず。内輪もめ、などが起こり今となってはゴブリンは生きて行くだけで辛いからな」
「ああ、俺らゴブリンは一人一人の力が弱く、それを補う為に、キングゴブリンがゴブリンをまとめていたが今は勢力がバラけ、ゴブリンは冒険者の経験値稼ぎになったものな。時折俺達のように戦いを嫌い山の中でひっそりと生きる。食料を確保するのでも手一杯だ」
「ああ、早く新しいキングゴブリンが生まれて欲しいものだな」
「それは後何年後何だろうな」
そんな会話をゴブリン達がしていると、足音が聞こえてくる。
「おや、おや、これは久しぶりにゴブリンなんて見ましたよ」
ゴブリン達が振り返る。そこにいたのはスーツを着た男が歩いて来ている。
ゴブリン達にわざと魔力を全開にし、強さを知らしめている。
「だ、誰だ!冒険者か?」
「お、俺達には戦う意志なんてないだから殺さないでくれ!」
「殺す?そんな滅相なことしませんよ。安心してください。ただお伺いしたいことが御座いまして」
「な、なんだ?」
「ルーカル方面へと向かった情報があったのですが、子供の冒険者がこの山を通りませんでしたか?」
ゴブリン達が子供を見たか、確認し合う。1人のゴブリンが手を挙げて話し始める。
「俺が三時間ほど前に見た、冒険者が確か、男のガキと女2人を連れていたぜ」
「あのお方が言っていた通りですね。ご協力ありがとうございます」
男は不適な笑みを見せる。ゴブリン達はぞっとする。
「では、私も向かうとしましょう」
もう用事を済ませて、自分達のすみかから出て行ってくれると思いゴブリン達は安心した。
「ですが、これは良い生き物を見つけました。少し実験をしましょう」
1人のゴブリンを片手で掴む。
「おい!お前、殺さないんじゃ無かったのか!」
「ええ、言いましたよ。"殺しは゛しません、。殺しはね」
「騙したな!」
男はポケットから石のような物を出す。その石はブルードラゴンに入っていた物と同じマークがある。
「あのお方から貰ったこの石を使ってみましょう」
無理やりゴブリンに石を飲ませる。そしてゴブリンから手を離す。
「グッ!ガッ!」
「おい!大丈夫か?」
「おいお前!何をした!」
「キングゴブリンは百年に一度、異様な量の魔力を持つゴブリンが生まれ、モンスタースキル、統率が得られ、その力を使いゴブリンからゴブリンキングへと進化する」
ゴブリンがうめき声をあげる。もがき唸り続ける
「それを外部からの魔力で補うとどうなるかな?」
「大丈夫か?」
「う..う.....」
動きが止まる。男は笑う。
「成功だ!」
「何がだよ!こいつがなにしたって言うんだよ!」
「うるさいぞ」
「うがー!」
突然止まっていたゴブリンがもう一人のゴブリンを食らう。
「いだい、辞めろ、仲間だろ」
「うがー!」
グチャグチャと食い荒らす。他のゴブリン達が恐怖を覚える。
「成長に養分が欲しかったみたいですね」
「うがー!」
男に襲い掛かる。
「止まれ!」
ピタッとゴブリンの動きが止まる。
「さっきの石には魔力を与えるだけじゃなくてね、服従の魔法が一緒に付いていてね。私に逆らえないようになっているんだ」
「ひっ!化け物!」
「うがー!」
「さて、待っていてくださいね。神、ミタマ」




