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a  作者: いつか せな
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僕はその時初めて、人を殺した。

はぁーっと息を吐いた。吐くということは同時に吸うことでもある。

息は白く色づき、ひどく冷たい空気が喉を刺した。

雪、つらら、ツリー、 

冬が外観をおおよそきれいに彩る。

そんな冬の神秘が視界から少し消えたのは僕が真っ白の雪を紅く染めてしまったからだろう。


僕はその時初めて、人を殺した。


その紅はまるで薔薇から抽出した染料のようで、どこまでも深い色をしていた。

僕の手はその染料と目には見えない重くねっとりしたもので汚れてしまった。

不安、焦燥、絶望、興奮

いろんな感情がごっちゃになった。

息は荒かった。

息を整える為に溜息にも近い呼吸をして平然を装う。

必死で駆け込んだ電車のように乱れた息を何者にも悟られたくなかった。

しかしその場所にいるのは自分とこいつだけ。しかしこいつはもう「ここにいるよ」なんて主張することは叶わないただの肉なのだからこの場で欺くことができるのは自分自身だけだ。

パラパラと降る雪に雨が混じった。少し勢いを増して降ってくるみぞれで体温は一気に奪われた。

すると突然、活力が抜けて行ってしまった。

刃物を握り続けることはできなかった。指をすり抜けて落ちた刃物を拾うことはしなかった。やらかしてしまったのだから捕まっても仕方がないと思っていたし、何より手がかじかんでいた。

「もういいや、帰ろう」

誰に聞かせる言葉でもなかったが、途端に自分が他人のように感じてしまったから思ったことを口に出さずにはいられなかった。


その日、帰った僕は丸一日ぐっすりと眠った

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