4月25日朝:否定
昨日は渋山と高寄の間の街、前向にストーカーが出たらしい。南下して来ている。冬将軍は本格的な冬の到来をもたらす訳だが、同様に変質者が出やすい春の訪れを告げに来ているのかもしれない。単純に春の訪れだけで良いし、その役割は春一番が担ってるのよ。
「いや、悪かったな。疑ってしまって」
朝会って早々中島が謝った。
「分かったんなら良いんだよ」
「だよな。地元でも通学先でも無い所に行ってまでそんなことしないよな」
「その通り。俺はそんなに暇じゃない」
「しかし相当だな。連日やるなんて」
「確かに。まあ? 魅力的だと思うのは同感するがな」
「……どこでも渋山と前向のストーカーが同一人物とは言われて無いぞ」
「それ、嵌めたなって言わせたい割には一般的な意見が同一だという考えに偏ってると思うけど、その辺どうかな?」
「昨日までの情報ならしょうがねぇ奴だなで済ませた。本当に遠征してまでだったら一生口利かないからな」
「それでも俺はやってない」
こんな中島の会話のように、疑いの目を向けてこない人もいれば明らかに避けている人もいた。まるで三寒四温を思わせる今は四月の終わり。
そんな中で例外が一人だけいた。
廊下を歩いていると、
向こうから小出先生が来た。
今日も小柄で良い。
「おはようございます」
近付いたところで挨拶すると、
「あ……おはよう」
伏し目がちに小声で返し、少し歩く速さが上がった。
昨日の今日だもんね……でも気にしないでください。俺は色々な面が見られてとても嬉しいですから。