お隣のお家。
入園式の次の日は休みだった。
園児に疲れを残さないためらしい。
…俺もこれからの事の心労で死にそうだった。
まぁ、そんなことも今日は考えなくて済むと思れば、なんとかなりそうだ。
そうこうしていると、
「れいちゃーん、お隣さんとご飯に行くわよー。」
と、母さんが俺を呼びにきた。
そうして、俺の休みは消えた。
「玲司、どうした?そんな疲れた顔をして」
……あんたのせいだよ、
なんか身体も疲れてきた。
こんなに疲れてるのは
……昨日のキスもあんのかなぁ。
結局、あの後、お互い照れて何も話せないまま、終わった。
その後、両親からは、特に何も言われなかった。
…今、思ったけど、なんで、うちの両親は
『何も』言ってこなかったんだ?
普通なんか言ってこないか?
例えば、どんな感じだったか?とか、どんな気持ちか?とか色々。
……キモいな。
う〜ん、でも、両親が何を言ってくるのか、全く『予想』がつかないなぁ。
まぁ、いいや。
そうこうしていると、家の近くのレストラン
「ムーリド」に着いた。
ここには来た覚えがないが、なんだか懐かしく感じた。
店に入るとすぐに、店員さんが来て
「いらっしゃいませ、何名様ですか?」
と、訪ねてきた。
それに対して、父さんは
「福川さんと待ち合わせをしているんですが、」
福川というのは、お隣さんの名字だ。
「福川さんですね、少々お待ちくだ…」
言い終える前にレストランの奥から、
「ちょっと、ユキちゃーん、その人は私のお友達よ〜❤️」
という、男性の声が聞こえてきた。
この声の主は、中山剛志という、ゴツい名前の人で、この店の店主だ。
そんで、お隣の福川成幸さんと父さんは
昔からの、親友らしい。
席に案内されて、すぐに
「れいじくーん!!」
と、言いながら、よちよち歩きの女の子が俺の元にやって来た。
この子は福川成幸さんの娘さんで、福川杏奈ちゃん二歳だ。
「あんな〜、れいじ…く……んに、あえて
…うれしい……よ。」
どうしたんだ?いつもと様子が……
「れいじくん、なんで、ほかの女の子の
けはいがするの?」
そう言いながら、俺の胸元を他の人にバレないように掴み、詰め寄る杏奈。
この子は、愛の深い子だった。
この子の『印象』は薄くて、忘れていた。
俺の人生は波乱だらけだ……。