平和な国のナイフ
きっと平和な国のナイフは
果物を切るためにあるのだろう
みんながナイフの使い方を知っている
正しい使い道を知っている
リンゴとかナシとか
そういう果物があって
お金を用いて購入する
お金の使い方も知っている
簡単な割り算も出来る
「あげる」
「半分こ」
平和な国ではよくある言葉
誰に言われたでもなく
自然と出てくる言葉
平和
なんて恵まれた国
そんな国に産まれたこと
愛することは
間違っちゃいない
私はこの国が好き
きっと平和な国のナイフは
嗜好品になって世界をはばたく
赤と言えばリンゴ
美味しい色の象徴
たとえ誰かを
言葉のナイフで傷付けても
「ごめんね」
みんな知っている
当たり前の言葉
ちょっぴり臆病なのは仕方ない
心の中ではヒーローだもんね
街のネオンが綺麗
人々のたゆまぬ努力のしょうめい
蛇口をひねれば美味しい水が
あるってこと
とってもありがたいこと
スーパーの棚に並ぶ菓子パンにジュース
食べたい物を食べられるという奇跡
平和
なんて素敵な国
私はこの国が大好き
でもさ
こんな平和な国にも涙はあって
そういうものは街中の灯りで
簡単に蒸発しちゃう
綺麗な物しか見えない
美しい物しか生き残れない
そう思っちゃうときもある
そんな時に心のナイフが胸を刺す
いたいよね
「大丈夫?」
なんて
そっと寄り添ってくれる人が居たら
なんて素敵なドラマなんだろう
拍手喝采
スタンディングオベーション
アンコール
あなたの人生は自由
私の人生も自由
美しさも
その奥にあるモノも
欲張りしたっていい
実り多きこの大地
仰ぎ見れば表情豊かな空
平和
あぁなんて素敵な国
私はこの国が大好きです
私はこの国が大好きです
いつか平和な国の
ふにゃふにゃなナイフが
世界の鋭利な武器たちを
無効化する日が来ると信じて
顎を撫でられた猫のように
ふやふやにとろけてしまえば良いと
そんなことを想う
まずは国を好きになること
私の見たこの国は素晴らしいと
信じることは
そんなに悪いことでしょうか?




